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「HUNTER×HUNTER」キメラアント編ラストにみる『生きる意味』

どーも。。。柳田です。

いや〜。見事ですね〜。(イキナリ…)

漫画読みを初めて30年・・・、あまりの見事さに読んでいて腰が抜けるような虚脱感に見舞われる漫画に出会ったことが何度かあります。

『HUNTER×HUNTER』キメラアント編ラストの”くだり”はその筆頭と呼べるほど素晴らしいものでした。

・主人公のゴンとラスボスのメルエムが一度も会うことなく物語が終わる
・散々引っ張った後、割とあっさりとメルエムが死んでしまう
・最終話が全編黒塗り

など、多くの話題を振りまいたキメラアント編ですが、センチな僕としてはやはりこのシリーズに込められたメッセージ性が胸キュンなんですねー。(アラフォー・・・)

絶対的な強者 生き方に迷う

ラスボスのメルエムは絶対的な強者です。

生まれながらの王。強力な家臣に囲まれ、一族を率いることが予め決められている。純粋な力でも敵なしの強さ。

知性もずば抜けており、退屈しのぎと称して、国中の盤上競技の名人を集めて勝負していくのですが、その対戦にもことごとく勝利します。作中、メルエムは「力」と名のつくものすべてに秀でた完全無欠の生命体として描かれています。

そんなメルエムが、たった一人だけどうしても勝てない存在。それがコムギという少女でした。軍儀というマイナーゲームの世界王者だったのですが、彼女は生まれつき目が見えません。

ぼさぼさの髪に、鼻水を垂らした姿、舌っ足らずな話し方、常に萎縮し、何かに怯え、周囲に低姿勢を貫く姿が特徴的な少女です。一人では何もできず、小動物から自分の身を守ることもおぼつきません。彼女の存在は完全無欠の存在であるメルエムとは対象的に、生きている価値のないこの世で最も弱いの生き物の象徴として描かれています。

殺そうと思えばすぐに殺せるような小さな存在、ただ軍儀だけはどうしても勝てない。”強さ”とは”力”とは。コムギとの対話を通して、メルエムは変わっていきます。

多くの葛藤や迷い、苛立ちを経て、やがてメルエムは自分の生まれてきた意味について考えるようになっていきます。


絶対的な強者が圧倒的な弱者に存在を承認してもらうことで生きる意味を知る


ここから先は完全なるネタバレですが、まあ10年以上も前の作品なので良いでしょう(笑)。

さまざまな葛藤を経て、王として成長したメルエムは主人公サイドの攻撃により致死毒を盛られ、死が避けれれない状態になります。(圧倒的な強さを発揮したチートキャラだったのに毒ごときで死ぬんか−いというツッコミ多数w)

自身の死を目前に控え、メルエムが下した選択。それは死ぬ瞬間までコムギと一緒に軍儀を打って過ごすこと。

ここから先はマジで涙腺崩壊ものなので、読んでいない人はぜひ読んでほしいです(笑)(僕の漫画歴30年の歴史の中でも完全にベストです)

が、ネタバレは続きます(笑)。

メルエムの受けた毒は伝染するタイプのもの。このまま軍儀を打ち続ければやがてコムギも死んでしまいます。やがてメルエムは自分の側に長くいればコムギも死んでしまうことを打ち明けます。

一緒にいれば死ぬ。そのことを打ち明けられてもコムギはメルエムと軍儀を打ち続けることを選択します。そして、その瞬間、メルエムは自分が生まれてきた意味を知るのでした。

作者の富樫義博は日本漫画史上でも確実に3指に入る天才だと僕は思っているのですが、ハンターハンターキメラアント編は彼の持つ構成力や表現力が余すことなく出たストーリーだったと思います。

作中の至る所に散りばめられた伏線が最後に一つの結論に集約していく様は見事としかいいようがない。

物語の下地にあるのは、人は他者から必要とされて初めて幸せになれるという教訓。そのことを、完全無欠の象徴であるメルエムが何もできないコムギから存在を肯定され、自身の生まれてきた意味を知るというエピソードで見事に表現した作品です。

今でも覚えていますが、キメラアント編のラストは、おそらく少年ジャンプ史上初となる全ページ黒塗り。メルエムとコムギのセリフだけで物語が進んでいきます(こんなこと考えられるw)。読み終えて茫然自失とした記憶は今でも鮮明ののこっている笑。

さて、今回の漫画紹介。少し長くなりましたが、ラストはその前編黒塗りだった少年ジャンプで繰り広げられたメルエムとコムギの会話で締めたいと思います。それではサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ

「4-4-1兵」
「6-5-1騎馬」
「2-7-2忍新」
「…………」
「コムギ…いるか…?」
『はいな、いますとも
どこにもいきません』
「4-5-1中将」
「…………」
「詰みだな…コムギ…いるか…?」
『はいはいいますともさぁもう一局負けた方からですよ!』 
「コムギ…」
『はいはい何ですか?』
「結局…余は…お前に一度も勝てなかったな…」
『何をおっしゃいますやら!勝負はこれからですよ!』
「そうだな…」
「1-5-1帥」
「9-5-1帥」
「…………」
「コムギ…いるか…?」
『はいな、もちろんメルエム様の番ですよ』
「少しだけ……疲れた…ほんの少し…眠る…からこのまま…手を…握っていてくれるか…?」
「…………」
「コムギ…?コムギ…?いるか?」
『聞いていますともわかりますた、こうですね?』「すぐ…起きる…からそれまで……そばにいて…くれる…か?」
『はなれた事ありませんよずっといっしょです!』「コムギ…」
『はいはい何ですか?』
「ありがとう」
『こちらこそ』
「最後に……」
『はい…?』
「名前を…呼んでくれないか…?」
『おやすみなさい…メルエム…』
『ワダすもすぐ、いきますから…』






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