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【オッペンハイマー】

人間の愚かさが無念で涙が止まらなかった。

人間の性悪説を肯定する正直過ぎる最悪の映画だった。
と同時に、これまで観た映画の中でも最上位といえる傑作。
「日本に原爆を落としたことで戦争終結が早まり、多くのアメリカ合衆国の兵士が死なずに済んだ」
戦争を終わらすための最終兵器は、人が人を殺さないために殺すという大義で、この矛盾がつきまとう中、アメリカでも日本でもドイツでもなく人間は人間を殺戮するという事実を肯定した物語だったように感じた。
最後のシーンで核ミサイルが地球を覆うとき非人道的かつ非倫理的な人間性を、真っ向から肯定してみせた。

技術の進歩は人間を幸せにするのか?
その回答はおそらくNOです。
インターネットが発達したことで、だれでも地球の裏側で起きている事を時差なく知ることができ、かつて戦時中のラジオの様な中央集権的な情報による統率や洗脳ではなく、個人が世界に発信することができ、その映像に数十万人が「いいね」をする程、情報が並列化し、共有され戦争の首謀者を毎日のようにリアルタイムで見ることができるのにもかかわらず、戦争は一向に終わる気配もない。

暴力や権力を批判する、あるいは諦めてしまう前に人間の本質を肯定した上で、正義と悪、支配と従属といったトレードオフではないオルタナティブな社会があるのではないか。。。社会思想化でも哲学者でもありませんが、そういった可能性を模索することは続けていこうと思います。

”人類は38億年の進化系統の末に生存競争の頂点に君臨し、その立場を保持するための本能と機能を内在している。この進化の結果、人類は他の動植物や生物を捕食する権利を生まれながらにして有しており、この行為は生存本能に基づく正当な行動とされている。また、この捕食本能は同種である他の人間にも向けられる可能性があり、戦争や大量虐殺といった行為が生じる原因の一つとなっている。倫理観や道徳感はこの本能を完全に抑制することはできない。
さらに、人類はその立場を維持するために他者を搾取する傾向がある。これは経済と支配という形で現れ、労働は作業と報酬により思考を停止させることで労働者を従属させ、支配は強制的に服従を要求する関係を形成する。
そして、それを支えていると信じられている民主主義の機能は思考停止した大衆の多数派に支えられており、様々な側面から人類を考察する1%の研究者や思想家の意見は圧倒的な少数であり、民主主義において効力はない。”

佐々木健蔵  「自書」


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