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長男と取っ組み合いのケンカをしたお話

つい先日のこと。中学一年生になった長男と取っ組み合いのケンカをした。
いや、長男と次男のケンカに私が参戦した、が正確な表現か。

我が家の息子たちは小競り合いはしょっちゅうするが、殴り合いのケンカなどに至ることはなく、その日も長男と次男のいつものヤツが始まったな。という感じであった。

きっかけはとても些細なことだったと思う。鞄を自分の部屋に持って上がっていなかったことを長男に指摘され、イラっとした次男が長男を蹴った、とかそんな感じだった。
そこから組んずほぐれつの寝技大会が開催され、私は食器を拭きながらちょこちょこその様子を伺っていた。

いつもと違ったのは次男も長男も動物のように唸っていたこと。特に次男に至っては体格差のある長男に完全に抑え込まれながらガルガル唸っていた。

平和主義でちょっと抜けてて親にもよく注意される長男。そして要領が良く先生にもよく褒められている次男。普段は次男が長男をイジっているような構図である。なので次男にしてみれば長男に抑え込まれるということは相当屈辱的なことだったのではないだろうか。

私よりも身長も体重も大きくなった長男に完全に抑え込まれ、明らかに不利な次男は一撃必殺を目論み、長男の急所ばかりを狙っていた。

珍しいことではあるが、二人ともお年頃と言えばお年頃。まぁ気が済むまでやればいいさ。とキッチンに戻り食器を拭いていると「ギャーーーッ!!!」と次男の悲鳴が聞こえた。「ああ、病院か…」と思いながら二人の様子を見に行くと次男を抑え込んだ状態で長男が次男に噛みついていた。

いつも息子たちに言っている兄弟喧嘩の時の禁止ルール。「首を絞める」「足払い」「武器を使う」この3つは反則である。
私にとって噛みつき行為は歯という武器を使う行為に相当する。
しかも、ひっくり返すことのできない抑え込んだ状態での噛みつき行為は明らかに反則だ。

そう思った時にはもう飛び込んでいた。
長男vs.オカン、第2ラウンド開始である。
エプロンをしたまま髪を振り乱し、「やるんやったら正々堂々とやらんかーーー!!!噛んだる!!!言うてもわからん奴は噛んだる!!!」と叫びながら鬼の形相で馬乗りになってくるオカンを長男は必死でかわそうとしていた。

私が長男に勝てないのは体格を見ても明らかなこと。それでもしばらくの間、長男とオカンは組んずほぐれつ格闘していた。長男は抑え込んでいれば私が途中で諦めるだろうと思っていたのだろうか、そんな彼の油断した一瞬の隙を狙って私はついに長男にガブリと噛みついた。

終わってみると、なんとも言えず清々しい気持ちになっていた。死闘を繰り広げた後のスポーツ選手はこんな気持ちなのかもしれない。そう思っていたのは私だけだろうか。
あんなにやりあったのにもう何もなかったように長男はテレビを見、私は残った食器を拭き、次男は塾へ出かけて行ったことを思うと参加者全員がスッキリした気持だったのではないだろうか。
ただ、次男にはアザと長男の歯型が、長男にはオカンの歯型が、そして私は口を少し切った傷がそれぞれ残った。私は翌日全身筋肉痛にもなった。

大きくなったなぁとは思っていたが、こんな形で痛感するとは思ってもいなかった。息子の成長はそれはそれで嬉しかったが、私は「もう二度と参戦するまい」と心に誓った。

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