さむねこども

小学生に「デザイナー」を体験してもらうワークショップのデザイン / 準備編

前々回の「セオリー(理論)だけでないデザインをみんなでどう学ぶか?」の続き。大学や会社ではなく、もっと若い時期、例えば義務教育のなかでデザインの体験を学ぶことってできないのか?というテーマにチャレンジした2017年の夏のお話。小学生にデザイナーという職業を体験してもらうワークショップを企画して実施した。その時のことをまとめてみようと思う。

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「芸術って仕事にならないんでしょ?」→「NO」

はじまりは、多摩美の彫刻科出身で、コネルテのワークショップデザイナーで造形作家のレイさんに声をかけられたこと。彼女は小学生向けの連続アートワークショップを企画していた。下記の文章が書かれた企画書を私に見せてくれた。

テーマはアート。 「芸術って仕事にならないんでしょ?」「アートって才能がある人しかできないんだよね?」学習指導要領から美術の時間が減り続けいている今、そんな声をよく耳にします。 しかし、デザイナー、造形師、ディレクター、音楽家、先生、写真家 ... アートにまつわるお仕事は、実はたくさんあるんです。 思っていたより身近なアートの世界を、いろんなゲストに案内してもらいましょう! /  レイさんのワークショップの企画文章より

私は、このシリーズの中の「デザイナー」をワークショップで体験してもらう回の企画と実施の依頼を受けた。まず率直に「すごく楽しそうな企画!」と思った。また「私自身、もっと早い時期でデザインに出会っていたらどうなってたのか?極端な話、義務教育のなかでしっかりとデザインの体験があったらどうなるのか?」という興味があったので、企画を断る理由はない。すぐにOKを返した。

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デザイナーを2時間で体験するWSのデザインプロセス

引き受けた時は、どんな風な時間にしようか、わくわくして楽しみだったのを覚えている。しかし、実際にワークショップの設計をしてみると、なかなか難しい。全然簡単にはいかなかったのであった (泣) ワークショップ当日までの紆余曲折の思考のプロセスをざっくり書いてみる。

ワークショップ条件
・目的 / デザイナーの仕事を体験してみて楽しいと感じてもらう。
・時間 / 2時間
・参加者 / 2年生(2人)、3年生(1人)、4年生(2人)、5年生(5人)、6年生(1人)
・場所 / 教室
・道具 / 文房具と紙、必要あればなんでも

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👇 STEP1・そもそもデザインとは何かを考えてみる。

まずぶつかった壁。「そういえば、デザインってなんだろう...?」そう、小学生にデザイナーっていう職業を体験してもらうには、まずワークショップの設計者である私がデザインの定義をしっかりしなくてはいけない。だって小学生のみんなは、「デザイナー」というお仕事が一体どんなものだろう?と期待してワークショップにやってくる。何年かけても理解するのは難しい「デザイナー」という職業のコアな部分を2時間でどうやったら体験してもらえるのだろう? いろいろとぐるぐると考えてみた結果、自分の体と心で、物事を、感じて、観察してみることを起点にしてみた。

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👇STEP2・清水と小学生の興味の接点を考えてみる。

次に、清水が最近関心のあるデザイナーとしてのキーワードと、小学生が興味持ちそうなキーワードを並べて考えてみた。「どこをデザインの対象領域にすると良いのか?どんな手法を試してみるといいのか...?」パズルのようにいろいろと考えてみた。

小学生ウケがいいだろうな〜と思ったのは、「ゲームをつくってみよう!」とかだろうな、と思った。しかし、なんだろう。とても具体的すぎる気がした。それに「デザイナー=ゲームデザイナー」と考えが固まってしまうかもしれない。もっと幅広い領域でデザインは存在していて、自由であることを伝えたい。

そこで学校のデザインはどうかと考えた。普段自分たちがいる場所のリデザインをする。でも学校だと広すぎるので、黒板のデザイン、体育館のデザイン、校庭のデザイン、そういった特定の領域をテーマにしたら楽しいかもしてないと思い、レイさんに相談したところ、「身近すぎて、発想がジャンプできないかもしれない...」とフィードバック。悩んだ挙句、「図書館」を今回のデザイン対象に設定した。

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👇STEP3・図工と理科との違いを考えてみる。

図書館をテーマに決めて、自分の体と心で、物事を、感じて、観察してみることを起点にすることは決まった。しかし、私は、いつもの授業の図工や理科との違いを出したかった。正直「自分の体と心で、物事を、感じて、観察」これは図工や理科でもやってる。デザインならではの、要素とはなにか?

自分の仕事を思い出してみると、デザインには必ずクライアントとユーザーと課題がある。その3者をつなげることはデザイナーの仕事の基本単位となる。そこで私は「困ってる誰かや何かへの感情移入、共感。」この感覚も疑似体験できないかと考え、図書館の館長さんと街の人々をストーリーの中に用意することにした。

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できたもの!

ぐるぐると色々と考えた結果、こんな流れのワークショップシナリオのスライドが完成した。

小学生向け / デザイナーの仕事をみんなで体験してみよう!ワークショップ資料👉 https://www.slideshare.net/4mimimizu/2017summerdesignworkshop

さて、試行錯誤の準備を終えて、いよいよ小学生にデザイナーを体験してもらうワークショップ当日を迎える。でも少し、長くなってきたので一旦終わりにして、実施編は次回お伝えすることにします:D


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