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消費者だったわたしへ【創作メルティングポット #5】

文学フリマをご存知だろうか。
割合的に、知らない人のほうが多いのではないだろうか。

小説版のコミックマーケットのようなもので、一次創作の書籍が数多く頒布される同人イベントである。(正確にいうとコミティアだ。)

半年前の私は、文学フリマなんて知るはずもなく。日々数10本と投稿される新作や100話以上続く長編などの、玉石混交web小説を夜な夜な読みふけっているだけの1消費者だった。

くいしんBBSというオンラインコミュニティの雑談チャンネルでこの話が提案されたのは、今年の春。「文学フリマというイベントに、創作物を頒布したい仲間を募集!」と。

その提案内容を読みながら、私の脳裏に蘇る2つの苦い記憶。

1つめは、小学4年時に友人とマンガを作ろうとして、うまくいかなかったこと。

彼女はあかほりさとるが好きで、3歳上のお姉さんの影響でよくマンガを書いていた娘だった。いまだに読むCLAMPも彼女に教わった。

そんな彼女とコピー誌の真似事を始めたのだった。執筆は彼女、企画は私。ノートに手書きでコマ割りを描き、交換日記のように回してお話を作っていく。

彼女はとても絵のデフォルメが上手で描くのも速く、小学生レベルではなかった。対する私は青い鳥文庫や絵本、なかよしなどの女児向けマンガを沢山読んでいただけの10歳。クリエイターではなく消費者だったのだ。

最初から実力に差のあったこのプロジェクトは、今でいう頓挫するクリエイティブプロジェクトと同じように、プランナーとクリエイターの意思疏通がうまくいかなくなって、頓挫した。
それをきっかけに彼女とも縁遠くなってしまったし、勘違いした当時の担任から彼女の親御さんへ「鈴木とは娘さんを遊ばせないほうが良いですよ」と忠告があったとかなかったとか…。顔がくしゃおじさんになるぜ。


2つめは、中学に入学した直後の部活紹介ウィークだ。

私の母校は、中高1貫で部活動も6学年一緒に活動するような文化があった。部活紹介ウィークで、どんな部活があるか友人たちと校内を見て回る中、高校棟1階の人通りが少ない隅に、暗めの部屋を見つけた。それが母校の文学部とイラスト同好会の部室だった。

中に入ると、レザー調の押しがついた紙の安っぽい冊子が数種類。中学2年の書きなれない感じの短編から、高校3年のファンタジー中編やイラスト作品までたくさんの創作物が綴られていた。

そんな冊子の、緑の表紙に印刷された手書きイラストを見て友人が放った一言。

「え、キモっ。」

私は今でこそ「作りだす人こそ素晴らしい」と大声で言えるが、その時の私はその安っぽい冊子に込められた「作る人」の凄さを、友人に説明する言葉を持っていなかった。自分の好きな世界を表現することを、他人が「キモイ」という一言で片付けることはできないんだよって、言えなかった。

あいまいな顔をした私を横に、早々に文学部への興味を失った友人は、次の部室に足を向ける。後ろ髪を引かれながら、友人を追って足早にその場を後にした。後日どうしても気になって、こっそり冊子だけ貰いに行った。

部長が小説だけでなく、詩とか多数の表現方法で、いくつも作品を掲載していたことに感嘆したのを覚えている。

たぶん実家の倉庫を探せばその冊子があるだろう。だけど中高の6年間「キモい」の言葉に負けて、ついに文学部の門は叩けなかったのである。

書きたい気持ちはあったのに、人からの目を気にして書こうとしなかった自分。

そんな20年の埃にまみれた記憶から浮上した私は、食い気味にSlackのチャンネルに「参加したい!」と書き込んだ。当時サークルメンバーと面識なかったのに…。(私はいつだって軽率だ。)


だから幼い頃の自分を慰めながら、今このサークルに参加している。


思っていてやらないのは、思わないのと同じ。
書きたいと言っていて書かないのは…。

私が、この創作チーム「創作メルティングポット」に出会わなかったら、ずっとただの消費者だったろうと思う。

まずは作って世に出すこと。消費者からの脱却はそれしかない。

そんな私の拙い創作欲を、大人なサークルメンバーはあたたかく見守ってくれている。


(このレイヤーの人間も受け入れてくれる文学フリマの懐深さ、そして運営の人々には頭が上がらない。)


結論。最高に愉快な仲間たちと各自の作品を褒め合いながらおこなう大人のサークル活動は楽しい。少しでも「書きたい」という気持ちがあるのなら、消費者から脱却するべく貴方もぜひやってみるべきだ。

かくいう私は、入稿〆切まで2週間を切り、自分の妄想を文字にして、脳内物質をあふれさせている。焦りながら。

どんな妄想を書いているのかって?

チラ見していく?そんな時間はない、そうですよね。

魚河岸でバイトする男の子と北欧から来た女の子の
美味しいボーイ・ミーツ・ガール。
ノリはライトノベルを想定してほしい。

もし興味を持ったら、2018年11月25日、文学フリマへどうぞ。
私が入稿を乗り切れたら、現地でお会いしよう。

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