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fallsインタビュー前編

思えば2014年の秋頃。PASTA FASTAの将さんが別に動いているバンドがどうやらdemoを完成させたらしいという噂を聞く。関係者に配られたあいさつ代わりのその数曲。友人になんとなく聞かせてもらったところ、イントロが鳴り出した瞬間それはもう度肝を抜かれるほどかっこよくてしばらくそれを聴き狂いながら正式な音源を心待ちにして年を越したのを覚えている。自分が今求めていたのはこれだと確信した。

その後ライブ活動を本格的に開始、toosmell限定音源として盟友でありこちらも期待の若手SUMMERMANとのソノシートスプリットを発売。そしてWATERSLIDEから待望の単独作がこの度届けられた。国外で言えばpolyvinyl records、jade tree records soft speaker records辺りのバンドと共鳴するかのようなサウンドで、日本ではmalegoatやDEBAUCH MOODからのリリースバンドが好きな方なんかは間違いない、自分たちが好きで好きでたまらない音楽を改めてやり始めたら近年のエモリバイバルの波にぶつかったとも言える金字塔にもなりうる1枚が。

昔からの吉祥寺・toosmell界隈のPUNKリスナーだけに留まらず、SNS上ではポップスやロックリスナーまで幅広く反応があり、ライブに出れば共演者から必ずと言っていいほど賞賛の声があがる。GEZANなんかも彼らの大ファンのひとつであろう。(先日fallsのTシャツを着てインディーファンクラブを満喫していたところ、多くの人に声をかけられたし、たまたま通りかかったマヒトくんには「fallsは最高だから」となぜか見かける度に3回も言われた)

これを読んでいる人の中には僕自身より彼らと親交が深かったり、すでにライブや音源をチェック済の方も多いでしょう。ただ彼らはいかんせん口数が少なく、たいして発信もされていない。これじゃあいかん!と顔見知りだけれどさほどゆっくり話したこともない彼らにその口を割ってもらい、改めて彼らのいつもより少しだけパーソナルなところをお伝えできればと意を決して今回インタビューをさせて頂きました。個人的にはせっかくの機会だからこのバンドのキーパーソン、ドラムの前くんを暴きたいなと。

それではまずレーベルINFO等からの抜粋で彼らの紹介を。

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久々の久々にですよ全くもって無名の国内バンドの第一発目のデビュー音源を産み落とすのは!それくらい衝撃を受けたバンドです。もう1曲目の”dead”のブリブリなベースのイントロを聴いた時点で俺が出さないで誰が出すんだって勝手に思ったくらいの天命を感じたのです。吉祥寺周辺で活動している「falls」。メールオーダーを定期的にしてくれていたMae少年から自分のバンドを聴いてもらえないかと録音した音源を送ってくれた「dead」のベースラインで即時に惚れ込みリリースしたいことを伝え会う約束をし、その場所に出向いたところにやってきたのがボーカル・ベースでこのバンドの中心人物PASTA FASTAのsho yamamotoでした。俺の知ってるsho君はPASTA FASTAのイメージしかなくこんな繊細なメロディック・パンクをやる想像なんてなかったので驚いた!CAP'N JAZZ、ALGERNON CADWALLDER、SNOWING、malegoat、90'sエモ、現行エモリバイバル、メロディックパンクな要素も組み込んだ極上のエモーショナルサウンドと言えるだろう彼らの初音源。1曲目の”dead”はオープニングトラックとしては完璧な疾走感をもつキラートラック!縦横無尽に奏でるギターフレーズが曲中左右で鳴りまくり、フック聴きまくりの主旋律メロディーとライブじゃ全員合唱必須のコーラスにテンション上がらずにいられない。続く”In The Way Back”はイントロのキラキラギターから前編を通し流れるサウンドに合唱メロディーが現在進行形エモファンの心も捉えるだろう。”Imagination Ghost”は「falls」がメロディーを書けるバンドを象徴する1曲。”Summer Summarysong”は彼らが敬愛するmalegoatからの影響も昇華したエモ/インディーロックチューン。そしてタイトルトラックの”Wednesday”。全ての曲がシングルカットしてもいいんじゃないかと思える濃厚な5曲。sho yamamotoのギターを思わせるベースフレーズ、GMOの自由でオリジナリティーのあるギターワーク(こいつのギターワークはくそセンスあり!)、初期衝動の爆発したMaeのドラム。WATERSLIDEがこれまでに提示してきたメロディックサウンドの全て兼ね備えた嫉妬せずにはいられないセンスの固まり。それがこのfallsだ。

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【インタビュー2015年7月。彼らのHOMEであるスタジオスタジオ壱之助 にて山本将(ベース・ボーカル)、GMO(ギター・コーラス)、Mae(ドラム・着替え)の3人に話を聞いた】

待望の音源”Wednesday”が発売されたのが6月中旬くらいですが、まず周囲の反応はどうですか?

将:いいようなものを感じるよね。もっとシュッとした反応しかこないと思ってたから。こうやってたくさん反応もらえるなんて思ってなかった。ほんとみなさんありがとうございますっていう感じです。

まぁまさにそのひとつの反応がこのインタビューしたいなってことなんですけどね。いやでもSNSでエゴサとかしてたんですけど全く知らない人が「fallsをまだチェックしてないなんて甘いな」みたいな発言していてなんだこれすげーな!って思いましたよ(笑)。

M:単純にレーベル(waterslideからのリリース)が同じshipyardsとかが好きな人だけじゃなく、黒猫チェルシーとか好きな人も僕らのこと聴いてくれてるって話を聞きましたよ。

将:Maeくんのサーチ力すげぇな。

結成に至るまでにもそれぞれいろんなバンドを経験していると思うんですが、GMOさんと将さんはもともと一緒にバンドやってましたよね。Phonoport。音源聴いてました。

将:そうそう。そうなんだけどもっと昔から一緒にやってたんだよね。sharppeii(シャーペイ)っていうバンドなんだけど・・・。あぁーおれのバイオグラフィーみたいな話が世に出るの初じゃない?やだなぁーまじで黒歴史もあるからなぁ(笑)。

この際出しちゃいましょうか!

将:えっと、THE ART OF SELFっていうバンドをむかーしやってて、19歳くらいの頃。コックローチとSYSTEM OF A DOWNが好きで、そこに後からenvyが好きになって要素を足しっていったような(笑)。

一同:(笑)

※なお、toosmell赤石氏による記録では「THE ART OF SELFは悲壮的劣等感を爆発させたようなバンド」というものがありました

将:そのバンドはおれとワクダってやつと今は芸人やってる阿部剛犬の3人でやってたんだけどすぐ解散して。その時にレオナさん(吉祥寺WARP店長)に誘われてsharppeiiを組んだんだよね。レオナさんとthe north endの孔子Lowくんがボーカルで、既にSUNNYDAY HIT SINGERSをやってたGMOも誘って。だからおれとGMOはTHE ART OF SELFとSUNNYDAY HIT SINGERSの人として20歳くらいに出会ってるわけだね。

※こちらもtoosmell赤石氏による記録では、「sharppeiiはビヨンビヨンなシンセや電子音を随所に盛り込み、複雑怪奇な曲展開に妖しげなツインギターの絡みを駆使しダンサブルに仕上げる頭のネジなくなった的ぶっ飛びカオティックハードコア!」とのこと。

将:そのバンドも音源は出したけど1年くらいで解散して、おれもPASTAFASTAとPhonoport始め出してた頃だね。それでPhonoportがギター抜けるタイミングで サニーデイ辞めたGMOをメンバーに誘ったんだよね。その辺の時期におれらのバンドを観てくれていたお客さんがMaeくん。Phonoportのメンバーの大学の後輩なんだよね。

Maeくんがいくつ位の時?

M:上京して割とすぐだったんで僕が19、20歳くらいの頃ですね。

将:そうやってバンドやっていくなかでここの壱之助っていうスタジオで働いてて、新人を探さなくちゃってことでMaeくんときちんと出会った。話すようになったのはそこから。

M:大学2、3年の頃ですね。

Maeくんはそれまでバンドってやってなかったって聞いたけど。

M:そうですそうです。大学に入ってドラム始めたんですよ。大学で音楽団体みたいなのに入って、当時の4年生がよくWARPでライブしていたので、観に行っているうちにPASTAFASTAとかその周りのバンドを知っていくようになりました。

そっか。じゃあ 将さんとGMOさんと出会ったのはほぼ同じその頃っていうことだね。

M:そうですね。ただGMOさんとはこの職場で働いてからもまともに話したことはなくてずっと一方的に知っている感じでした。地元が同じなんですけどそんなことくらいしか話せず基本的には相容れない存在でした。

その後、GMOさんはPhonoportからSumoi!っていうバンド遍歴ですかね。

ここでタイミングよくGMOが遅れて到着。

将:そうそう。あ!ちょうど今お前のバイオグラフィー話してたとこだよ。

G:あ、そうなの?

ちょうどよかった。サニーデイ辞めたのってだいたいいつ頃ですか?

G:2007年の10月っすね。

将:すげぇな、そんなレベルでスラスラ出てくるんだ。よく覚えてるね。

G:しかも電話一本で辞めたからね(笑)。

あれ?「enoshima」リリースしたのっていつでしたっけ?

G:んーあれは2006年の夏かな。

あーじゃあおれもギリギリ観れてるかなぁ。どうだろう?

G:まじで?その頃ってそうとう昔だよ?

東京来てそれくらいなんで。地元で音源通販してたり、その前後で東京にライブ観に来てたりしたことはあったんですよ。

将:そっかぁ。なんかもうそこらへんの記憶が曖昧になってきたな。とりあえず20歳くらいの頃はGMOの家に泊まりに行ったときにこいつがシケモク吸い狂ってたのは覚えてるわ。

G:なんだよそれ(笑)。

GMOさんははじめて組んだバンドってなんなんですか?

G:サニーデイが最初だよ。

将:ははは!ウソつけ!ちなみにおれはアートオブセルフの話もしてるからな。

G:ははは!えーっとほんとは界王拳っていうバンドを高校生の時にやってました。すいません(笑)。ゴイステとかの影響が凄かったからもろに青春パンクを秩父の高校で・・・。ほんとは個人的にはハイスタとかメロコアの方が好きだったんだけど、ほかのメンバーがね・・・。

将:お前の純粋さが伝わるからこれは載せといたほうがいいよ!界王拳って名前すごいぜ。

ところでMaeくんやっぱり全然話してないけど大丈夫(笑)?じゃぁ最初に好きになった音楽でも聞いていこうか。

M:はい。答えはひとつですね。ずばり高速メロコアです。とにかくコンプがかかっていればかかっているほどかっこいいと思っていてでBPMも早ければ早いほうが好きでした。ブラストではなくてメロコアで。具体的に言うとEpitaph周りのメロディック、FAT WRECKを聴き始めて、「PUNK SAVE THE EARTH」や「ショボい、ダサいは褒め言葉」を読んでは気になるものをamazonかdisk union通販で買いあさってましたね。

将:おれとGMOはそう考えるとだいたい同じだよね。エモとかに関してはおれの方が遅いけど。

G:音楽の目覚めで言うならおれは完全にルナシーだね。こないだもLUNATIC FEST.に行ってきましたよ。いやぁ最高でした。

2人(GMOと将)は同い年ですよね?自分もひとつ違いなんで完全にその世代です。

将:めちゃくちゃヴィジュアル系流行ったもんね。

G:中学生の時はルナシー・ラルク・・・

将:あとGLAYだろ。

G:GLAYはおれあんまり好きじゃなかったんだよ。

将:なんでだよ!お前邪道だな。GLAYはめちゃくちゃ仲いいんだぜ。dir en grey、Raphael・・・あとなんだっけなあの絶妙なバンド・・・Pierrotでもない、ROUAGEでもない・・・

ROUAGEまでいくと正直聴いてなかったですけどね(笑)。

G:わかるわかる(笑)。

将:絶妙なポップスみたいな感じの・・・あ!La'cryma Christiだ!めっちゃ聴いてた~。当時はおれ以外みんな絶対聴いてないだろうなと勝手に思ってた。

みんな聴いてましたわ(笑)!じゃあルーツはそういう感じでいいですかね。

将:いやいやいやちょっと待って。おれスピッツめっちゃ好きだったから。今でもよく聴くし大好き。今でも見たいバンドのひとつだよ。

かろうじてfallsの歌心というか音楽性に繋がりそうなところに持っていきましたね(笑)。じゃあさっきも少し話に出ましたけどエモについても聞いていきます。ここ数年、一部でエモリバイバルが盛り上がりを見せていますが、将さんはエモに触れたのは少し遅かったんですかね?

将:うーん、年齢的に言えばMaeくんと同じくらいの時期なんだろうけど、所謂90年代のUS EMOシーンは体感してないからね。

本格的に追いかけていた人以外はみんなそうだったと思いますけどね。世代的にも。

将:そうだね。エモリバイバルって呼ばれてる人たちもきっと同じだと思う。当時はCHRISTIE FRONT DRIVEなんて知る由もなかったし、Braidすら知らなかったよおれ。THE GET UP KIDSもそこまで聴いてたわけじゃないし。あ、当時Bluebeardはもう廃盤だったのは覚えてるよ。当時DOLCHEのTシャツとか着てたGMOの家でこいつに「ブルビやばいよ」って言われたわ(笑)。

Maeくんは高速メロコア時代から音源を掘っていっていろいろエモにも出会っていたんだと思うけど、自分の中で決定的だったのって何?

M:自分はSNOWINGですね。

はいはい。MaeくんはいつもTシャツがSNOWINGのイメージ。

M:ちょっとPUNKっぽいものも求めながら、Algernon Cadwalladerが作った流れのなかだとGROWN UPSっていう2ビートのバンドとか好きですね。きっかけ。あぁでもいまだに覚えているのは、なんかこれからはアナログプレーヤーを持ってなきゃダメだっていう流れになってtoosmellで赤石さんに「なんで持ってないの?買えよ。」って言われて、プレーヤーも持ってないのにTHE GLORIA RECORD(MINERALのメンバーが始めたバンド)のSTART HEREっていうアルバムを買ったことですね。後で聴いてみたら「あれ?おれエモ好きかもしれないな」ってぼんやり思いました、そこからですかね、たぶん。

なるほど。しかし好きな音楽のこととなるとめっちゃしっかり喋るね、Maeくん(笑)。

将:考えてたんだと思うよ、たぶん。Maeくんのことだから。あのね、ここ(壱之助)ってその日のBGMを決められる持ち場っていうか担当があるのね。偉い人がいる間はなんかジャジーな音楽とかそれらしい曲を流しておくんだけど、その人が帰ったら自由に好きな曲流せる時間になるんだよ。担当がMaeくんの時はいっつも突然お得意の高速メロコアが爆音でかかりまくってたんだけど、ある時から突然それがエモくなってたんだよね。今考えるときっとそれがグロリアレコードを買ったタイミングだね。

M:20歳くらいからずっとここで働いてるので、僕が働き始めた頃から将さんがここで流している音楽とかtoosmellで気になったものとかを自分の中で消化していった感はありますね。そのあとに決定的にハマったのは2012年のFEST11(フロリダで数日感行われる大規模なパンクフェス)にSUMMERMANのタケシコ(彼も壱之助スタッフ)に誘われて行ったことが大きいです。

おぉーFESTいいなぁ。一度は行ってみたい。その時は誰観たの?

M:LATTERMANがREUNIONだったんですよ、その時。IRON CHIC、LEMURIA・・・とにかくたくさん好きなバンドが出てて刺激的でした。

そうやってPUNKやEMOへの愛を深めて行ったんだね。そうなってくるといよいよfalls結成もそろそろですかね?聞くところによると結成もMaeくんがキーパーソンになってるみたいですけど。

将:そうなんだよ。これが自分で言うのもなんだけど良い話でさ・・・


昔話に花が咲き、思いのほか長くなってしまったので続きは後編として近日公開します!果たして後編でMae少年のライブ中の着替えの謎は暴かれるのか!?


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