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AFTER SCHOOL 2017.4.23 report


8月に公開を控えたLess Than TVの人々をめぐる記録映画「MOTHER FUCKER」も楽しみなチーターズマニア。

彼らは2015年年末に動き出し、自分で考えジャポニカ学習帳に書きなぐった歌詞をステージで歌う小学生HCボーカリスト谷口共鳴が率いるバンドだ。2016年高円寺DOMスタジオでの初ライブ以降、全感覚祭、下北沢THREEでの谷口夫妻10周年アニバーサリーライブと、大人たちをまんまと魅了し、活動について聞かれても「ふつうにコツコツやっていきたい。はりきっていきたい。ここでやめるのはちがう。やめない。」と答えるなど、その自ら考え動く姿に感化され、今回アフタースクールのトップを飾ることに。

「マーニーアー!マーニーアー!」という不穏な声援がメンバーや客席からこだまする中、マントヒヒ(from MANGA SHOCK)は某レコ屋の勤務休憩中らしく、息を切らしてパスを首から下げたままギターをかき鳴らしている。オオカミ(from V/ACATION)は後ろからチーターが怖気付いていないか目を光らせている
、クロヒョウ(from A PAGE OF PUNK)は自由気ままに我が道を進みながらもしっかりと低音を鳴らして大将のお供を。

自宅にて小学校へ登校前にボーカルの朝練をしていたことから今日の準備もばっちりかと思いきや、いつもの気取らない大物感からするとわからないが、照れや緊張なのか以前よりどこか心細い様子の共鳴。

それを目線を交わすことと大声のコーラスボーカルで違いに必死に盛り立てるメンバー。そのメンバーの士気を上げる姿がなんともバンドっぽくてグッときた。

思わず聴き入ってしまうようなダブのようなゆったりしたリズムをバックに共鳴が朗読?するナンバーも終わると、終盤聞き馴染みのある高速で軽快なギターフレーズが飛び出す。BAD BRAINSのダリル本人も笑いながら公認したカバー、「ペイテュウカム」で「楽しい!ことだけ!」と歌われると、シェルターのフロアでは思わず大人が笑顔のままはしゃぎだし、楽しげなサークルが巻き起こる。パンクと自転車好きにはおなじみのSHOP、CUP AND CONEの依田さんもその中で無邪気に飛び跳ねていたのを見逃さなかった。

転換時のDJを務めるのはI HATE SMOKE RECORDSのOSAWA17。

TA-1が信頼を置く、アンダーグラウンドのパンクシーンをずっと現場で自ら楽しみ盛り上げてきた存在。いつまでもDIG精神を忘れず、芯のぶれないバンドをリリースし続けるレーベルオーナーであり、自身のバンドも止まることなく平日から週末まで音楽の根底にある楽しさを追い求めている。POP PUNKを中心にメロウなものから安心・高揚の選曲でフロアを飽きさせない。

そんなフロアの人も段々賑やかになってきた頃、暗転し聴こえてきたのは本日の出演者でもあるYOUR SONG IS GOODのごきげんなナンバー。OSAWA17の後方に構えたDJブース内のJxJxもこのライブSEに思わずニヤリとしていた。

心地よい鍵盤の音色とダンスミュージックが流れる中、アンプからハウリングの音がツンと鳴ると共にtoiletのライブが始まった。

音が鳴ると共に、瞬発力ある跳躍で軽々と柵前方の客の頭を乗り越え、ジャンプでフロアへ、入り口からトイレ前までコードをひきずり駆け回り、ぽっかり空いたスペースで奇天烈なダンスとステップを踏むvo.のハガ。時にはマイクを置き去りに手ぶらでシェルター入り口を駆け上り外に出て裏口からステージにもどってきたりもした。

「ありがとうございます。北海道からきましたtoiletです。」曲間にギターのkimがボソッとそう添えながら、これがナチュラルなのかノーマルなのかマジカルなのかもわからないような脈動するリズムと、反芻するフレーズのループの中から、猪突猛進にストレンジなハードコアの波が押し寄せてくる。それはバラエティ番組の⚪︎×クイズを全速力で走り出して飛び込んで、ドボドボと画用紙を勢いよく破り、泥んこになるような痛快さとポップさを兼ね備えているような気さえした。

「リラックス-リラックス-リラックス-リラックス---」と真顔でまばたきもせず柵に腰掛け紳士的に手をさしのべ語りかけたり、笑ったり、叫び散らかしたり。緩急と変拍子の効いた楽曲の中にも「どのバンドよりもいいライブをして帰る」というような一本筋の通った気迫を感じる
「自分の気持ちでかかってこいよー!」とオフマイクでメンバーが煽るとそれに呼応する観客。

「KONCOSのSEの曲のカバーやりまーす」とMCでそっけなく言うと、思わず会場も笑いに包まれた。その場のどれだけの人が知っていたかはわからないが、toiletの音源をKONCOSが全国でDISTROしながら「サヨナラ」という曲をSEとして使い、ツアーを回っていたのだ。彼らなりの感謝を込めた皮肉。

「音楽なんて住んでる場所関係ないですから。同じ人間だし」と、これまたボソッと秘めたる想いで語るkim。地方や都心でバンド活動の仕方や知られ方・こじらせ方などそれぞれ違いはあるけど、それでひとまとめにしてばかりだとつまらないし、純粋におもしろいものとそうでないものの判断は自分の目と耳で確かめて勝手にすればいい。そしてもしそれを共有できたなら素晴らしいことだと自分も思ってる。

本日2バンド目にして「もっとやれー!」とアンコールがかかり、足早に一曲披露してステージを去ったtoilet。

その結果、前の10人も満たない人たちが激アガりになった様子も微笑ましい。これはDisではなくそういうのが素直で正しいのだと思っている。正直に感情を解放してライブを観れている人がどれだけいるだろうか。

3番手はCowbells。

愛媛を拠点とする彼らはdrum2台を組み合わせたシンプルな構成に、トリガー、シンセ、サンプラーで音に幅を持たせた演奏スタイルで、ライブハウス以外にもクラブ、野外イベントにてライブを行なっている。四国でKONCOSとの共演を経て今回東京で再会を果たす。KONCOSか呼ぶバンドは単に友達だからとかではなく、それもあったりなかったりする上で音楽愛と熱量と曲の良さ、その活動に感化されているかどうかで決まっていると思う。彼らもまた地元に数々のバンドやアーティストを招致している。

ちなみに今回のAFTER SCHOOLは関係者・知人関係なく全員一律の前売り料金。それは遠くから来てくれたバンドに少しでも交通費を還元したいからという思い故。粋であるし、彼らの友人知人たちバンドマンの先輩までSNSなどを介して前売り予約をしている様子は自分にとってとても新鮮だった。

音を聴いてまず、超絶変態技巧インストバンドのsajjanuに近い感覚を覚えた。音に乗って回遊しながら深い森へ、時には地下に地下に揺らめきながら潜るような感覚。

シンセとドラムを兼任するツインドラムスタイルで向かいあって、バッキバキのマスロックまで幅の広いサウンドで飽きさせないどころか、「次はどんな曲が来るんだ?どんな展開が来るんだ?」とみんな薄暗い照明の中で目を輝かせ、体が自然に動いている。

圧巻のステージングは2人の肌を濡らす汗と、会場の熱気をさらに増すことになり、心地よい高揚感と共に幕を閉じた。



続いてはA PAGE OF PUNK。KONCOSとは路上で座り込んでスタジオ終わりに缶ビールを互いに交わして出逢った。彼ららしい。

ちなみに筆者もTA-1とはそこで出逢ったのであった。そこから路上のリアルというありがたい異名をいただき、喜んで勘違いして使わせてもらっている。

先日の某レコ屋でのインストア?イベントにて機材にぶら下がり、平謝りするハメになったこともあり、「今日はぶらさがりません」と言う宣言を冒頭で久保勉が笑い話としてしていたが、vo.の千秋は、気づいたらすぐに器用に天井のポールに足をかけぶら下がり、ポケットの中から取り出したチョークでなにやらそこに書き出していた。

”It name is revolution. It seems in the mind exit in you.”
”ヤツの名は革命、君の中にいる” 

彼らの新作”Punk Day-美しい日-”の中でMV公開されている曲「イタルトコロ」の歌詞だ。正確に言うと歌詞カードの英訳とも別のモノ。

路上でのKONCOSとの出会いについてもMCで触れて、その後、久保勉が自分の目でKONCOSのライブを観た時にそこでゾンビーズのカバーを1曲目にしていてそれがとても素晴らしかったという話を。全然違う歌に聞こえたんだと言いながら、歌詞を読み上げる。

君の愛は太陽のようだ 今年は僕らの年になるよ 

手を離さないで 暗闇は去った 長い時間がかかったけれど 

忘れない 君が支えてくれた 忘れない 君が愛してると言ってくれた 

今ぼくたちは 前に歩き始めた 

今年は僕らの年になるよ 

「僕たちはいつでもそんな風には思えなくて。だけど彼らがそう歌い出すととってもきれいな風景が見えるんだ。そこに対抗するために僕らは今日やります。ーーー彼らが世界の中心で愛を叫ぶなら、僕らは世界の片隅においてでかい声を出そうと思います-おれたちのやることはいつでも反対方向だけど・・・(それでも)反対方向に向かっていこうと思うぜ!」

前アルバムのタイトルにもなっている「反対方向」をはじまりの合図として、1分にも満たない曲を連続でけたたましく鳴らす。MCを挟むまで。「1.2.3.4 ワンツースリーフォー」を合図に12曲もやってるの、ふつーの人なら気づかないだろう。「武器・権力・嫌いだ 軍隊は必要ない ないと困るやつらの ポケットの中見せてみろ 」と足をふみ鳴らす。

今日はvo.千秋の声もひとつひとつの言葉がスコーンと抜けて聴こえてくる。寝そべり、這いずり回り、背中を汚し、生傷を作りながらも生命力を燃やすその歌い様は胸を打つし、他のメンバーも含めてそれぞれが「おれたちがアペイジオブパンクだ」と目をギラつかせているのは、バンドとしての強度なんだと思う。

「ここにいる人たちはわかってくれていると思うけど、僕らが言っているのは政治的な話なんかじゃないです。もっと当たり前の感情的な話です。
KONCOSが創っている美しい世界と僕らが創っているクソみたいな毎日が、共に立っている今日みたいな日を作ってくれて、KONCOSどうもありがとうございます。」久保勉は言う。

最後まで渾身の熱量とがむしゃらな動きでそれを体現し、「それでも」夜は明ける、と大きな声をあげ、「クソみたいな毎日から抜け出すんだ」と、しっかりと意思と決断を表明。楽曲はもちろん、ひとつひとつの曲に挿絵がついた詩集とも呼べる冊子が一緒になったアルバムをリリースをしてからライブもグッと純度を上げて好調だが、今日は特に最初のMCから繋がる数々の言葉を彼らの歌詞からも拾うことができた。今日のライブは素晴らしかった。

「自分たちのレコ発も、今日よりも素晴らしい日にしようと思います!TA-1くん見てろよー!ハハハ、愛してます。」と最後に告げ、あっという間のパンクショーが幕を閉じ、拍手と賞賛の声の中、Dr.のユウゾウが地声で「おれたちがアペイジオブパンクだ!」と叫び、ステージを後にした。

場を繋ぐのはこの日2人目のDJ TOMMY。

渋谷にてファッションと音楽のセレクトショップBOYを営む。インディーのミュージックシーンにも造詣が深く、恵比寿リキッドルームのサイトにて音楽レビューも担当している。

そんなTOMMYが流す、渡る世間は鬼ばかりのテーマをバックにセッティングをしていたYOUR SONG IS GOOD。

再入場自由という主催者の粋な計らいもある中、会場内は彼らを待ちわびたお客さんでパンパンに。

彼らにとっても今日は大バイ調大会として普段ならなかなか巡り合わせのないバンドたちと共演する楽しみにしていた日のようだ。

※バイ調とは...「バイブス調整の略で対象の誰かやなにかとテンション高めに調子を合わせる」の意。主にサイトウ”JxJx”ジュンの周りで使われることが多い。

音合わせから「じゃあ始めますか」と、歓声がこだまする中さらっとライブをスタートさせるパイセン枠。


ライブ全体を通しての流れのようなものがとにかく素晴らしくて、朝のような穏やかで気持ちのいい時間から始まり、パーカッションが小気味よく鳴り出すと次第に熱を帯びるフロア。そのままライティングと共にオレンジに彩られた夕方へ向かって行く。

腰にズシンとくるリズム隊と、ホーンや上物のキラーなフレーズや音色が重なり続け、僕らの気持ち良いツボをグイグイと押すエッセンスが散りばめられている。西荻発〜南国カリプソ経由〜バレアリック行き、時々僕らを溶かすようなチルに寄り道。40分のセットを感じさせないあっちゅーまのDJのように圧巻の時間とグルーヴを完全にフロアに作り上げたのは流石でしかない。

「最初からライブを観ててもどれも素晴らしいし、今日はずっといい空気が流れてるんじゃないでしょうか?」とMCでJxJx本人も語る。

個人的に少し久しぶりに観るユアソンだったのだけれど、こういう距離の近いハコでたっぷり集中して観たらやっぱり仕上がりとサービス精神の格が違う、極上の気持ち良さの格が違う、と実感しまくり。周りを見渡すと同様に目を輝かせて夢中になる観客の顔がすべて物語っていた。

演奏を終え、「あ、そうそう、トイレットのSEは使用禁止命令さっき出ました!ウソウソ(笑)、勝手にどんどん使ってください」と言い残したのも粋である。

「ユアソンでチルった後になんかごめんなさいね、おれらなりにおとなしいセットでやってるんで。」 と語る上半身裸の男。本日もう1組の北海道からの刺客、the hatchの出番である。

サッポロシティハードガッツとしてその音楽性とアグレッシブなライブパフォーマンスで話題の、tbパートもあるバンド。中華一番やヘヤアズなどメンバーが数多くのバンドを兼任していることも注目してほしい。

ハードコアパンクのスリリングさと、トロンボーンの甘美な音をシャウトで吐きちらすような音楽。

元気の出る曲やりますと言いながら続ける、みんな大好きな「リアルゴールド」、「踊れ踊れ!」というには無理があるような、「騒げ騒げ!」な曲など次々と披露。巻き起こるモッシュはメロディックパンクのそれではなく、ぐっちゃぐちゃの汚いやつで愛おしい。

vo.のミドリはイギーのような肉付きの余計なものを削ぎ落としたなめらかなボディーから前足のように腕の関節をくねらせ、

音楽とコンコスへの感謝は真摯にMCで伝えつつ、メンバーそれぞれ完全にアクセルを踏み間違えたようなテンションと表情で演奏を続ける姿には、思わずフロアから眺めていたカジヒデキも笑っていた。

恐竜で言えば肉食系なのだろうか、ベースはタンバリン芸人ゴンゾーのような愛されボディをしており、ライブの白熱具合と共に、タンクトップ腹部の汗染みがきれいにハートになっていてピュアさ丸出しなのも最高だった。

アンコールはテキサスジェノサイド(40秒×2)で好き勝手にやり散らして本日の主役へ繋ぐ。

フルートもサックスもバックコーラスも加えた本日の豪華仕様なKONCOSが自らのパーティーを今日受けた抜群のバイブスそのままに最後に取り仕切る。

アンセム「月待つ島まで」で会場全体のシンガロングから幕を開けたと思いきや、「Flower」~「Citrus」とパーティーチューンを続けて、フロアは興奮と優しさと音楽への愛情が溢れたいつものKONCOSが作る空間へとあっという間に変貌。

「アフタースクール!クラップユアハンズエブリバディ!ワンツー!ワンツー!」なんてアグレッシブにTA-1が声を上げ、せわしなくステージ前方や時には人の頭上を動き回りながらも、


どうもKONCOSと言います〜。すでに汗だくで息を切らしてシェルターのステージから体を前のめりに出してTA-1が伝える。

「今日は新しい試みでゲストなし全員前売り2500円っていうことにしました!賛同してくれたみなさんどうもありがとう最高です!今日は全員が関係者だぜってつもり!

平等にした方がやっぱり楽しいじゃないですか、男も女も関係なく、全てがそうって言うわけじゃないのはわかっているけど、できるところはね。

帯広も東京も、かっこいいものはかっこいいし、そんなんはどこであっても変わらない。

結局は自分で決めろって話ですよ。そんな僕らが決めたかっこいいものを集めたパーティーに集まってくれてほんとありがとうございました!へへ、そんな感じです。」

鍵盤の音色がゆっくりとやさしく聴こえてきて、先ほど紹介したゾンビーズのカバーが鳴り始める。「今日からスタート」だ。

「フロア降りちゃおうか?もう生音でよくねぇ?」

なんて、ラフな感じで僕らと同じ目線の高さから美しい歌が聴こえてくる。vo.ヒロシを囲い酔いしれる観客たち。いや今日の関係者たち。

最後はまだリリースはされていない新曲「The Starry Night」が披露され、今日来場者に配られたそのZINE同様美しく彩られ、放課後は今日も終わりを告げた。

おもしろいことはいつも現場で起こっているし、そこには必ず熱量と音楽愛に溢れた人が集う。こんなレポートやネットで見る記事に想いを馳せるより、そこにいる誰かと話してた方が100倍温度と音楽が伝わる。
そうしてまた僕らの世界が色づいていく。少しずつ。

さぁTHREEから出張してきたスタンドかげんの料理の良い香りがシェルターの中にも立ち込めてきた。そろそろまたお酒に呑まれて取り留めのない話をして、朝を迎えたら楽しさの余韻と疲労感にまみれて生活に戻る時間だ。そうやって毎日を続けていこう。

(クソみたいなtext:路上のリアル_4x5chin)

(素晴らしいphoto:世界のヤマテツさん)


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