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CHIAKIZZCLUB (藤田 千秋)インタビュー

現在、原宿Kit Galleryにて9/16(日)まで絶賛個展を開催中、ライブイベント9/21(金)に控える、絵描きでありデザイナー、CHIAKIZZ CLUB。ここでは彼の手がけるアートワークについてや彼自身のバンドマンとしてではない作家としての一面について、この機会に記録を残そうと思う。思いのほかテキストが盛りだくさんになってしまったこともあり、まず第1回目の更新では彼が手がけた作品をリリースしているバンドのみんなに藤田千秋という人物に対して思うこと、そして作品に対しての気持ちを寄せてもらった。

続いての今回の更新では彼と縁の深いOSAWA17(THE SENSATIONS/GIRL FRIEND/I HATE SMOKE RECORDS)とスガナミユウ(GORO GOLO/下北沢THREE)を招いて、これまでの作品が収められたファイルを眺めながら彼の拠点fAQにて談話させてもらった。いつもの通りリラックスした感じで、長くはなりますが是非。

【CHIAKIZZCLUB】

1988年9月21日ジャマイカ生まれXIO育ち。作家活動のため上京中。
剣も盾も持たず、時より筆をマイクに持ち替えている。
<DEV CORNELIUS EX / JAPONICA SONG SUN BUNCH / A PAGE OF PUNK / チーターズマニア>


まえがき

かっこよく書き始めるなら「筆とペンを武器にして」とかそんな表現で、書きがちなのかもしれないんですが、自分はあんまりそういう言葉がしっくり来なくて。普段アペイジではあまりMCをしない千秋が、いつかの9partyで、「音楽を武器にしてとか、なんでもかんでも武器にするなよな〜」って、いつものおちゃらけた笑顔でまじめに話してた言葉を思い出す。ハっとしたのを覚えている。そう、「武器」にする必要なんてないんだ。なんとなくそういうところがボクが彼を好きなところ。

彼の拠点であり遊び場でもある下北沢は家から全然近くないし、夜な夜な遊び歩く仲間ではないけど、2014年あたりからの数年間はアペイジとは毎週のように会っていた。たまにやってるでぶコーの企画にもなんやかんや顔を出し、ロフト飲み会に当たり前のように通いジャポニカソングサンバンチで踊り明かすのを眺めている。チーターズマニアが動き出した瞬間ももちろん。

そうやって近くにいた自分としては彼がバンドだけではなく、彼の頭の中と心で感じ考えていることを絵で吐き出していることはもっとたくさんの人に知ってもらいたい。アウトサイドではなく、本質だと思っているから。

個展にも初日に顔を出して作品の数々を実際に目にしたが、その遊び心と発想に刺激を受けたし、なによりもこれからも彼の描くものを見ていたいと思った。彼が吐き出した具現化された作品やデザイン・アートワークの数々はよく考えると気持ち悪いなってくらい我が家にあって自分の暮らしの中に馴染んでいるからね。

どうか彼のクリエティブがいろんな人をおもしろい方向へ導きますように。そしてまた自宅で流しそうめんする際は是非呼んでください。おそくなってゴメンね、みなさん&千秋。

それではどうぞ。


落書きから始まって、バンドをやりながらもHPやフライヤーでやたらと絵で主張していた

OSAWA(以下O):こうして見るとおれ、でぶコーネリアス企画おれほとんど毎回出演してるね。最初はUNITED SKATESの時だし。

CHIAKIZZ(以下C):ほぼレギュラーですね。だっておれ大澤さんの電話番号メモったのいまだに持ってますもん!ほら!

O:あーwattsかなんかでそんなことあったね。うわ、こんなのに書いてたの?

大澤さんは自分でイラストを描いたものとかってレーベル内のアートワークとかでもなにもないんでしたっけ?

O:おれ?いやないよないよ。

I HATE SMOKE関連だとヤブさん(SEVENTEEN AGAiN)の手がけたもの多いですけど、レーベルロゴは?

O:最初のやつ?あれはサトルさん(ex-A PAGE OF PUNK)にやってもらった。

C:へぇーそうなんですね!

千秋は絵描きとかデザインをする時は最初からCHIAKIZZ CLUB名義?

O:最初はただCHIAKIって書いてあったよね、確か。

C:そうですね。なんとなく途中から名乗り変えました。

スガナミ(以下S):なんでCHIAKIZZ CLUBって名前にしたの?

C:ひとりでやってるけど、集団っぽく見せようかなと思って。多重感というか。CLAMP(「カードキャプターさくら」 などが代表作の、女性のマンガ家集団)の逆のイメージですかね。

なるほどね!それに名前からのイメージ通りっていうか、少年とか子供の遊び感はあるよね。

S:千秋の絵の特徴って音とかテーマとかを投げかけて、それに対してどう返してくれるだろうっていう大喜利的な部分がある。決まった画風に発注するんじゃなくてね。それがおもしろい。

O:絶対こっちの思惑とかけ算になっていいものが返ってくるのわかってますからね。信頼できる。

絵を描き始めたのはいくつぐらいからなの?

C:ほんと生まれてすぐくらいから描いてた感じはありますね。

幼い頃でも絵が好きなんだなって思った記憶とか、人のために描いた経験とかってあるのかな。

C:えっと、鬼太郎が好きだったなー。戸田恵子版の。妖怪が好きだったんで。再放送が始まるまでは鬼太郎っておれの周りでは誰も知らないしめちゃくちゃマイナーなものだったから人に描いてあげることはなかったけど。そのあとはポケモンが流行りました。まぁ最初嫌いだったんですけどね(笑)

うそ?めちゃくちゃ好きなイメージあるけどね(笑)

C:小学校の時、周りにもうひとり絵がうまいやつがいて、ポケモン描くのがうまくてみんなに描いて描いてってねだられてたんで、おれはそれが嫌でポケモンは描かなかったんですよ。あ、ピカチュウだけ描いてましたけど。そうそう、この前実家に帰ったら当時の文集を見つけて、表紙に80年代の鬼太郎と95年のピカチュウが同居してる絵があった。小学1年生。この頃にはもう絵を描くのが好きだったんだろうな。そして、そこからは小4で版画をクリアして...。ジャカルタパンクみたいなの。

一同:(笑)

確かに版画は高学年くらいでみんなやるけどさ、これはうますぎるな!その頃音楽に対してはもう目覚めてたの?

C:いや、ビーマニくらいですよ。音ゲー世代なんで。あとはL'Arc〜en〜Cielとジャクソン5を聴いてたくらいですね。

なんかひたすら教科書に落書きしてそうだよね。

C:あ、めっちゃしてましたね!今でもとってあったりするし。

O:なんかさ、アメリカンコミック調の作風のもの作品の中にはあるじゃん?そういうのも子供の頃から好きだったの?

C:海外のパッケージとか、辞書に載ってるイラストとかあるじゃないですか。ああいうの描きたいなって気持ちは一時期あって、チャレンジしたけどはじめは全然描けなかった。それで高校生の時とかはFRUITYとかバンドのアートワークのかっこよさに憧れて、そういうのを自分で描きたいなって落書きしながらに気持ちが芽生えてましたね。

O:ところどころにさ、イラストの他にバンド名が書いてあるのよ。ピーズとかスプロケとか。こっちにはHow Boringって書いてあるし(笑)。

C:聴いてたんでしょうね、高校生の時(笑)

O:高校生になったらもうライブに行き始めてた頃でしょ?なんならバンドで銀杏BOYZの世界ツアーの前座やってたもんね。あれ、中3?

C:そうですね、その時には自分たちのライブのフライヤーとかは既にデザインしてました。中3ってのはなんかその方がおもしろいってなったからそう書かれてたりもしてましたけど、実際もう高1になってましたね(笑)

じゃあはじめて自分の描いたアートワークが世の中に出たのは当時発売したでぶコーネリアスのDEMO TAPEになるのかな。

C:そうですね。あのジャケが最初かも。

当時ユニオンの通販ページで見てたの覚えてるな〜大人気だった。

O:おれは下北沢店にいた時だ。ちょうど店に入るか入らないかの時期くらいに発売したのを覚えてる。謎に赤石(toosmell records)と一緒に働いてた時代(笑)

C:その時は自分たちのものに絵をつけてただけだったから、ほんとにはじめての外注って考えると大澤さんのイベントのポスターですね。(レーベル企画"CHANGE YOUR CIRCLE")

O:ほんと?なんかアペイジのとか色々とやってたような気がするけど。

C:その前にフジロック(仮)のTシャツはお願いされてデザインやりましたけどね。

Tシャツのデザインをしたのはいつくらい?wattsに通ってた時かな?

C:そうですね、高校生くらいの時。フージー(フジロック(仮))から「自分じゃ描けないからよかったら描いてくんない?」って言われてやりましたね。だからなんていうかお金をもらって依頼されてって考えるとたぶんI HATE企画のデザインが初めてですよ。テーマを与えられるとかではなく任せてもらえたのも。これはタイニートゥーン的なデザインですよね。CHANGE YOUR CIRCLEのシリーズもそうなんですけど、この時期の作品は人物が対になっていて双子感があるものが多いんですよね。


おぉーそう言われればほんとだね!

C:あとは、でぶコーネリアスのHPを更新する度に、TOP画を毎回新しいものを描いて載せていたんで、それを見た人が「こいつらやたら絵で主張してくるな」と思ってたんじゃないかな(笑)。当時のバンドHPって更新頻度が半端なくて、今で言うとインスタみたいな感覚だったから。

大澤さんはその時期になんで千秋に依頼したか覚えはありますか?

O:一番はじめはでぶコーネリアスのびっくり箱みたいなイラストを見て、「あれってだれが書いてるの?」って聞いたら千秋だったから、最初に出会った時からめちゃくちゃ絵がうまいし面白いなっては思ってたね。そこから実際に仕事をお願いするまではタイムラグがあったんだけど、ずっといつかお願いしたいなっては考えてて、初めてレーベルの企画を行うタイミングで満を持して、っていう感じかな。

そこからI HATE SMOKE RECORDSのリリース物やグッズに関わっていくことが増えたよね。

C:SHORT STORYとかKINGONSのTシャツデザインを手がけたり。並行してアペイジのフライヤーなんかもずっと描いてたんですけど、WiennersのCDジャケットの話ももらったりしました。(2012~「UTOPIA」「蒼天ディライト」)。

ユウさんが絵描きとしての千秋を気にし始めたのはいつくらいからですか?

S:本人とは、GORO GOLOが活動を休んでいた時期に武蔵境STATTOでROBの企画にお願いされてちょっとだけ出演した時に出会ってるんだけど、改めて絡んだのはでぶコーネリアスの早稲田ZONE-Bでの解散ライブに出た頃かな。9年前くらい。その頃に発売した3rdアルバム「SUPER PLAY」のジャケットを手描きで1000枚描いたって聞いて、びっくりしたよね。当時はでぶコーの感じしか俺は知らなかったからだけど、なんていうのかなBOREDOMSにも近いようなイメージで。少しぶっ飛んでて未来感もありつつ、80'sの要素も見え隠れするような作風でおもしろいなーって印象を持った。

O:あー担当してたなー当時。ユニオン時代。「竹内さん(DASHBOARD/元ユニオン)...これどうしたらいいんすか!(泣)」って言いながら、全店に「全部ジャケが違うんでお客様に売る時に確認とるように!」って促してたよ。それにものによってはファミレスに置いてあるペーパーみたいな紙にくしゃくしゃって描いてあるやつとかもあったしね(笑)。

C:あの精子みたいなアルバムを(笑)!

O:でもあれ、2ndよりもめちゃくちゃ洗練されてて、内容すごくよかったよね。おれ、感想をメールした覚えがあるもん。ただのファストコアみたいなものではなくて、色んな要素がブレンドされててダンシングハードコアみたいな感じもあって最高。

S:シュガー・ベイヴみたいな感じもあったりね。

C:嬉しいなー!当時2009年だったけど、シティポップをやりたかったんですよ。でもあんなにきれいなシティポップをめちゃくちゃにしてやろうって感じに結局なりましたね。

S:早すぎたのかな~、気づけた人が少なかったのかもしれない。もったいないな。

ちょっとだけ、でぶコーの思い出話と再評価みたいになっちゃいましたが(笑)、どちらもその時代に千秋の作品やスタンスみたいなものに漠然と触れていて、その後に携わってもらう関係に続いていくんですね。

絵を描くことが自分が一番やりたいことだから

千秋はそれまで自分のバンド活動に関わるようなアートワークが中心で、ただ単に好きで絵を描いてたっていう意識が強かったと思うんだけど、段々と周りのリリース物やイベントに報酬をもらって自分の作品を提供することが増えていって、仕事としての側面も持つようになった。それをどんな風にとらえてたのか気になるね。ずっとこれでやっていきたいとかさ。いつだか千秋と話してて覚えてるのは、絵を描く時間が全然取れてないから仕事を変えるか考えないとな~て言ってたよね。

C:うん。まぁでも絵を描くことが一番やりたいことだから。覚えているのが中学校の総合学習で将来就きたい仕事について調査して来いって言われた時も、他にやりたいことがなさすぎてデザイナーについて調べましたもん(笑)。2002、3年当時のデザイナーって「こうすればデザイナーになれるよ」っていう具体的なことを誰ひとり言ってなくて困りましたね。漠然としすぎてた。「代官山に住んでます」みたいな、いかにも広そうな家に住んでる写真を見た印象しかない(笑)。まぁ誰しもがそうではないとは思うんですけど。デザイナーみたいなことしたいなっていうのは昔からずっとありましたね。

音楽で食べていこうとは思ってないと思うのね。だけど、絵で食べていけたらってことは思っているのかなって感じる。

C:そうですね。絵描きっていうよりは自分はデザイナー脳なのかなって思うことはあります。イメージをもらってそれを自分なりに形にしたいっていう。

うんうん、依頼されたものをより良い形で期待に応えたいというか。

S:絵描きとデザイナーと両方の側面持ってるのかなって勝手に思ってたけどまさしくそうなんだね。きっとガチガチに固められた発注は千秋的にはおもしろくないんだろうなーって思ってるよ。

C:そうっすね。自分の描きたいものと照らし合わせて、作品を作っていけたらいいなっては思ってます。自分の中で新しい発見もあるし、「あ、ちょうどそういうの描きたかったんですよね」ってこともあるし。

S:デザイナーにしては絵描きのスピード感があるし、図面通りに描いてってお願いしてもどこかしら自分の色出してくるっていうね。お金も稼ぎきれてなかったり(笑)。

O:「ここはこうやった方がおもしろくないっすか?」ってプラスワンしてきちゃう感じ。もちろん図面通りやれる技術はあるんだろうけど。

C:絵描きとデザイナーのオカマです(笑)

もらったテーマによって自分の中で新しい感じを見つけられたなってものとかある?

C:あーどうだろう。そもそも今までやってきたものってだいたいテーマがあって、ただの丸投げの依頼で終わるんじゃなくて、やりとりして一緒にやってる感じがあって自分的にはそれが楽しいし、刺激になっているのかもしれないですね。バンドと何かを作ることがやっぱり多いんで、そこには音はもちろん言葉もあるし、それを含めてお互いなにかを感じ取ってひとつのものを作っていく作業は好きなので、知らぬ間に色々新しい感触はもっているのかもしれないですね。

全部同じタッチで描けないのは、どのバンドも全部同じタッチでバンドをやってないからこそ


みなさんなにかこれまでの作品を眺めてて気になったものとかあります?

O:いやー、おれすげーお願いしちゃってたなーとか今更思ってるよね(笑い)。LIFE BALLのトリビュートのアートワークを今見ててさ、そういえばこんな風に描いてもらってたなーとか思い出してたところ。オリジナルのジャケと比べるとみんな年老いてるんだよね、これ。あとカエルがすごくジャンプしちゃってるの。

C:なんならもう一匹新しいカエルが産まれちゃってるっていう!

O:こっちの要望プラスここまでやってくれると嬉しいよね。あとさ、WiennersのSCUM PARADEのTシャツのカラフルなイラスト。これ全部自分で色付けしたの?

C:あ、はい。そうですね。いろんなを画材使って。鉛筆、マーカー、その他それぞれ全部むちゃくちゃにやってます。全部自分の手でやりました。

O:ヤバイね。この時Illustrator持ってなかったからか(笑)。

一同:(笑)

Illustrator導入したのいつよ(笑)?

C:ほんの最近じゃないですか(笑)? 3ヶ月前ってことにしといてください。

O:もうとっくに21世紀だぜ(笑)。ほんとすごいな。ここまで描き込んだ作品って他にないような気がする。

自分から名乗り出て描かせてよーってお願いして作った作品とかってあるの?

C:いやーたぶんまだないっすね。逆に自分のバンドでもアートワークをやらせてってお願いしたことないくらいだから。

O:アペイジでもそうか。千秋の作品でもさ、自分の中でも流行り廃りというか◯◯期みたいなのあるよね。

C:あーありますね。最初はアメコミ期って言えるのかな~。それかペティボン期。好きだったので。(Raymond Pettibon-主にBlack FlagやSonic Youth、BREAKfASTのアートワークで知られる) 少女とか日本のマンガを汚く、ペティボンっぽく描いてたりしましたね。あとは鉛筆でばっか描いてたり、劇画チックなものが続いた時期とか、色々あるなーこうやって振り返ると。

2012年の(I HATEの)レーベルショーケースのフライヤーはどうやって作ったの?

C:これはたぶん無料のフリーソフトでやった覚えがありますね(笑)。ローリング・ストーンズを元ネタにしたんだと思う。

フライヤーとかジャケットもそうだけど、最近だと長くずっと使われるようなロゴデザインを手がけるようなことも増えたよね。ロゴって看板でもあり目につくものだから制作するときの気持ちもまた少し違うのかなって思って。

C:Vienda!、DANCE MY DUNCE、Block Party、9Party、TYO Locarhythm0とか・・・増えましたね。みんなパソコンで便利に作ってしまうことが多い気が個人的にはしてるけど、自分は手描きでやることが多くて。それはやっぱり残ったほうがいいなってことと、簡単にコピーできないものだし、一番難しいかなっていうことも思うからですかね。

O:確かに、ロゴをこう、丸をどんどんパソコンで加工してデザインしていって・・・みたいなものはありふれてるかもね。

C:そういうデザインのかっこよさももちろんあるんですけどね。でも日本酒のラベルってかっこいいじゃないですか。その感覚に近いかもしれない。基本はなんでも手描きしてスキャンして、ゴミを除去するくらいしか加工しないんで。

S:Block Partyのロゴは漢字の「区」になってるんだよね。元々はブロンクスのストリートで行われているパーティーだから。住所を示す◯◯区の「区」。

O:へぇーおもしろいっすね!知らなかったわ。

周りのアーティスト・作家さんでおもしろいことやってるなーって思う人とかいる?

C:えー、あんまりわかんないなー(笑)。パッと思いつくのはオートモアイくらいかな。あとはやっぱり箕浦建太郎とか。

そういえばこないだオートモアイ、SupremeのTシャツになってたね。

C:うそ!?すげーな!やったな~。

他に身近じゃなくてもこれまで影響受けたり好きで気にしてた人とかいる?なんか勝手なイメージだとかっこつけてる人とかあんまり好きじゃないって思ってるんだけど。

C:うーん、かっこつけてる人って正体が見えちゃうと幻滅するじゃないですか。だから正体を明かさない人が一番好きかなとは思うけど。

O:画風は違うけどユアソンのモーリスさんとかは学生時代好きだった?

C:あ、好きでしたね。何て言えばいいのかな、いかにも「描きました」って感じの質感じゃないじゃないですか。印刷物まで想定して仕上げているような描き方はすごい技術だと思うし、純粋にかっこいいなと思いますね。

C:あー、あと思いつくのだと、ここ最近これ買いました。「大河原邦男展 展覧会図録」。こういうの好きなんですよね~。(大河原邦男-ガンダムやヤッターマンなどのメカニックデザイナー)

O:これすごいな(笑)。実は緻密なの好きなんだねー!

C:こういうの大好きなんですけど、それを崩したい...犯したいというか(笑)。四角いものを丸くしたい気持ちですね。

大澤さんは好きなデザインとかアートワークの人いますか?

O:好きな味わいで言うと千秋と通ずるところもあるとは思うんだけど、Operation Ivyのボーカルのジェシー・マイケルズかな。CDのジャケもツアーのフライヤーも彼がやってる。まぁ相当なドラッガーらしいけど(笑)。線もまっすぐ書けなさそうなあのタッチが好き。いわゆるアメリカのパンクのフライヤーの殴り書きしてるような感じがやっぱり好きなんだよね~。千秋のその「崩したい・犯したい」っていうのはそういう味わいも含んでる気がするけどね。

C:自分もトレースしきれてないのは好きですけどね。どうしても薄ーく自分が出ちゃってるのとか。あとは ヘンリー・ダーガーとかも好きですね。vivian girls!の。あれは少しマンガっぽいけど。

普段自覚的じゃないかもしれないけど、自分で感じたこととか思ったことを落とし込みたい時ってどんな時なのかも気になるね。自分で曲を書いたりもすると思うから、曲に落とし込む時、絵に落とし込む時って違いってあるのかなって。

C:風刺画とかはそこまで描いてないし、絵に関しては描くタイミングと頼まれるタイミングが一緒なので、自分ひとりでただ単に描くってことはできてないですね。たまたま今、写真にハマってるってこともあるかもしれないんですけど(笑)。インスタにupしてるんですけど、写真を無理やり動かして色々と遊んでる。

O:あれもすごいいいよね。映像も今後やろうって思ってるの?

C:今、考えてる最中です。8mmフィルムのビデオを持ってないから35mmの写真を全部コマ撮りで撮ってスキャンして、iPhoneに送って...

Macじゃなくて?

C:そう、iPhone(笑)。そしてフリーのアプリで編集して、GIF化して映像にする感じですかね。そこまでの経緯で自分のエナジー伝わるかなって(笑)。インスタにあげてるのもいいねの数とか欲しいんじゃなくて、「こういうの見たことないでしょ?」って披露する場と言うか。スクロール系のものって何にも残らないから。数とかもその人が有名かどうかとかそれくらいの尺度としか自分は思わないからあんまり気にしてなくて、躊躇せず作品をあげてる感じです。

O:インパクトあるよね。一撃の。

それに独学でなんでも始めちゃうのがおもしろい。

S:最近は立体での作品もやり始めてるからね。誰か活動を追いかけてチェックしてる作家とか他にはいないの?

C:この人!っていうのはそんなにいないんですよね。インスタとかで細々と発表しているのは色んな人のを見ますけど。海外とかおもしろいもの作ってるやつがゴロゴロいるんですよ。しかも海外は絵がでけぇ(笑)。この部屋じゃ収まらないくらいのサイズとか。いつか自分も描きたい。

千秋の作品って消費されてる感はないよね。その時その時にこういうことしたかったのかなって思うことしかない。

C:今の流行りとかで作ったこととかなくて、どれが新しいとか古いとかも全然ない。お互い常に真新しいものを作ってる感覚でいる。だから...流行らない(笑)

O:言い方を変えると、時代の流れには沿っていかないよってことだよね。沿っていかないだけでぶつかる瞬間って必ずあると思うし。どの作品にも一本筋が通ってると思うし、ちゃんとどれも独特の千秋臭がする。

C:まぁタイムトラベラーなんで、自分は(笑)。

一同:(笑)

音楽関係以外でなにか描いたりデザインしたいなって気持ちはあるの?さっき話してたら普段働いてる職場でもちょこちょこイラスト描いたりしてるって言ってたじゃん?

C:それはすごく楽しいんですよ。描けることに制約も超あるし(笑)。今じゃ描かなくなった消えていった自分の作風が実はそこで生きてたりもしますしね。そういう観点で言うと「いらすとや」はめちゃくちゃすごいですね。あの、フリー素材でどこでも見かけるやつ。本人が描きたかったものなのかどうかは知らないですけど。日本で今いちばん有名なのかもしれない。だって「メンヘラ少女」とかで検索してもそのシチュエーションのイラストが用意されてるんですよ?いやーあれがマジでSupremeかもしれない(笑)。Supremeも使ってくれないかな~。もうちょっとタイミング遅いけど。

今まで1番お気に入りだったり渾身の作品だなーって手応えがあったのってある?

C:んー、その時その時で満足はしていて、それをずっと更新してる感覚ですね。

O:まぁどれが1番とかってなかなか決められないし簡単には振り返れないよね。バンドごとにテーマとか作風とかって自分の中である程度見えてたり決まってたりするの?

C:それは一応ありますね。

O:それもおもしろいよね。V/ACATIONは手描き感の強い80’sハードコア~90'sのPUNK感を感じるし、ジャポニカはいつもなんかエロいし(笑)。質感もそうだけどモチーフもバナナとか使ってたよね。DANCE MY DUNCEなんかも世界観が統一されてて。

C:全部同じタッチで描けないのは、どのバンドも全部同じタッチでバンドをやってないからこそだと思うんですけどね。

S:おれが千秋を面白いなって思うところはその多様性みたいなところはあるよ。近いところで言えばKONCOSのTA-1くんなんかは、独自のフォントというか魅力的な色があるじゃん。永井博さんにしてもみんなが連想するあの素晴らしいイメージがある。それに比べると、千秋ってなんなのかって掴みきれない部分というかまだわからない部分もある。個人的にはここ最近はアペイジで描いているものが本人の基本線なのかなって思ってるんだけど。どう?

C:そうですね。アペイジで描くことは習慣化している部分があるから。アルバムを出しますってなったら...そりゃもう

大量の絵を一つ一つの曲に対して描いてるからね。

O:この日までに(CDのアートワークも含めて素材が)出揃わなかったらCD発売延期だよーってかなり言いましたからね(笑)。自分たちで言い出しながらも大変だったとは思う。

C:ひとうひとつが大事な作品なんで緊張しながら描いてるし、中心になってる部分はあると思いますね、今は。

O:THE SENSATIONSでも、つい最近とあるイラストをお願いしたばっかりなんだよね。今度フロリダにツアーに行くんだけど、それ用のアイテムに使うつもり。実は納期が数日しかない中でお願いしちゃったんだけど、見事に完成させてくれて。Descendentsの「Milo Goes to College」とかCrimpshrineの「Sleep, What's That?」みたいにイラストがドーンとあって、バンド名とタイトルが入るイメージを伝えたんだけど、そのテーマを千秋に伝えて、描きあげてくれたものをおれが配置とか調整してみたんだけど、なんかしっくりこないなーって思ってたら、千秋の方から「最初はこういうイメージじゃなかったでしたっけ?」って提案してくれて、修正を重ねたらグッと良くなって無事完成できたんだよ。それについての詳細ももうすぐ発表できると思う!

C:出先で急遽だったから、BBQの合間に「やべー画材がない!」って旅館で借りたりしながらスケジュール帳に描きました(笑)。これ、ちゃんと見ると完全に人間としてありえない体の構造ですけどね。でも、人の形をしていなくても人間だって伝えることができるっておもしろいですよね。

個展とこれからに対して思うこと

個展で直接本人に話を聞いてもらえるのが1番いいよね。これってどういう構図なんですか?とか、なんでこのテーマなのにこうなってるのかとか。身近な人はもちろん、まだまだ千秋がこれだけたくさんのアートワークを手がけてきていることに気づいていない人もいると思うし、グッズやジャケットを描いたバンドのファンの人にもどんな風に音楽や企画にリンクしているのかも知ってほしい。なにより作品に直接触れる機会が今回の見所だと思うしね。バンドと同じくらいかそれより前から、どんなに忙しくても絵を描き続けてるんだから。

C:バンドをやってると絵だけ単体で見てもらう機会ってこれまでなかなかなかったから。去年、同じkit galleryでアペイジの展示をやらせてもらったこともあって、絵を描き始めて10年?8年?それくらい分の自己紹介を作品を通してしたいと思ったのがきっかけですかね。これまでの総括もしつつ、お別れもしつつ(笑)。これから描くものも変わっていくだろうし。人から「何やってる人なんだろう?」って思われたとしたら、自分はこれを軸にして生活してるし、これしかやってないし、これしかできないから。それを見せたいなって思ったんです。

S:クライアントがいなくて、千秋自身だけの作品ってこれまで出してないよね。もちろん細かなものはあると思うんだけどさ、もっと大々的に描いた個人の作品も見てみたい気持ちはずっとあるよ。

C:今回の個展をやり終えて、次回をやるならそういうものになるかなって思ってはいるんですけどね。自分から出てきたものを描いたものに。

S:クリエイティブとして千秋の作品がちゃんと評価されていくといいなと本気で思うよ。

C:この感覚でこのままやっていきたいっていうのはあるんですよね。依頼してくれるアーティストが友達であれ、そうじゃない人であれ、外注であれ。「関係ねぇ」って気持ちとスタンスでやりたいです。今は下手も何も超越している時だと思ってるんで。


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