■2014年J2第39節~関塚千葉の磐田攻略

●磐田のバイタルエリア~ペナルティBOX守備の問題点

・相手のSHかSBがサイドに侵入

・SBが縱を切る、SHはプレスバックする

・DMFもこの選手を見て、ボールホルダーをこのトライアングル内で閉じる。

・相手は磐田のDMFを引き付けて、このトライアングルをサイド深くに動かす

・(磐田としては)このケースではボールサイドのCBはBOX内に留まってゴールに向かうパスラインやシュートコース、ゴールマウス幅のスペースを守れるようポジショニングすることになっている。

・SBはサイドに引き出され、DMFもボールに食いつくので、CB~SB間に空いたスペース(図のスクエア)を見る選手がいなくなる

・ボールサイドのCBがなにも仕事をしていない状態に追い込むことができる

↓千葉戦で意図的に作為されていた基本的な様相

・このスペースにSHなりSBなりDMFなりがフリーで侵入し、ボールサイドのCBを引き付け(スライドさせ)、アウトサイドのCBを孤立させる、もしくはゴールマウス前にスペースを得てシュートのためのポイントを得るのが最終的な目的。

*このスペースにボールを持ち込まれたら、ボールサイドのCBがアタックに行かなければならなくなるので、それを見越してレシーバーを走り込ませておけば今度はCBとCBの間にできるスペースを利用できる。クリーンにポイントを得られれば、もうあとはGKしかいない。

 関塚監督は、サイドに人を送り、ペナルティBOXの角にボールを打ち込む意識を強めることによって、磐田がこのスペースを恒常的に明け渡し千葉側にシュートエリア、シュートポイントを明け渡すようコントロールすることが可能と見たと思われます。

★サイドの深い位置、とくにペナ角周辺のエリアにボールを打ち込まれた場合、2CBのシステムではCB~SB間にできるスペースをどう守るかが難題となります。ブラジルワールドカップでチリなどは意図的にこの状態を作り、ボールサイドのCBが仕事をできない(そこに居ても意味がない=無駄遣いになる)ように追い込み、さらにここで2対1を作ってフリーになった選手を斜めに選手を走り込ませる仕組みを用意していました。ゴールへのラインを気にするなら、そのライン外に人を入れることで別の角度やラインを創出しよう、ということです。

 監督交代後の千葉の試合をいくつか観ましたが、関塚監督はワールドカップを視察し、そこで見られた戦術やヒントを積極的に導入しているとみられます。この脈絡もまたそうかも。この前節、磐田京都戦で磐田がこの問題点……ペナルティエリア角にボールを打ち込まれた場合、ボールサイドのDMFがSBと連携してこれを閉塞しにいくことになっていて、ボールサイドのCBはBOX内にステイするが、そのことでSB~CB間、ペナ角前のスペースを大きく開けてしまう……を露呈していたことも大きかったでしょう。

 京都はこの状況をあまり意図的に作為してきませんでしたが、千葉は前半の中盤以降、磐田の攻勢を凌いでボールを持てるようになってからは幾度も狙っていました。千葉の2得点はいずれもこの問題点を突くこと、この問題点に対して磐田が動いてきたために生じた状況を利用したものでした。得点になったシーン以外でも何度も決定機、チャンスを作られています。

 磐田は前半で千葉の狙いに気づき、後半は千葉が狙っているポイントにボールサイドのCBを思い切って寄せる、CBを前に出して早めに潰しに行くといった修正をしていましたが、逆にそのことで生まれたスペースを使われ、得点機をあたえ、失点しました。後半早々の勇人の決定機、森本の突破からの幸野の得点を観直してみれば、磐田の修正はむしろ千葉のもくろみに自らハマりにいくような行為だったといえます。

 二点目となった大岩の得点も、この狙いで作為された状況から大外の中村にドフリーでボールを出されたところからうまれました。録画を観直せば、自分たちの意図ではなく相手に動かされるかたちで順々にボールサイドにズラされているので、サイドチェンジされたときに背後の敵選手(元のサイドにいる敵選手)を簡単に離してしまい、ノミネートしなおすこともできず、大岩だけでなくBOX内に侵入した千葉の選手達を全員フリーにしていたことがわかると思います。

 磐田が今やっている守備の仕方では、関塚千葉がこの試合でみせた狙いを防げません。2CBシステムのチームがこの攻め筋を効果的に防ぐには、CB~SB間とその前にできるスペースをデッドにする(相手が侵入しづらいようにCB~SB~DMFでポジショニングする)しかないです。ゾーンセットで基本のセッティングから、MFのラインをボールサイドにズラす対応がいちばん安全ですが、そのためにはベーシックなゾーンDFに守備のやり方を切り替えないと行けないので、PO含めた残り試合には間に合わないでしょう。

 一番手っ取り早いのは、自陣にボールを持ち込まれたらDMFを簡単に動かさずにCB~SB間、ペナ角周辺のスペースの前にポジショニングさせてとりあえずこのスペースの入り口だけは閉じること、ここへ入ろうとする選手にはついていってフリーにさせないことです。ここをとりあえず使わせないことによって、そのあと連鎖的に生じてしまうであろう事態の多くを未然に防ぐことができます。ちなみに関塚監督はそのようにこのスペースを締めています。

 PO含めた残り試合、ここは狙われるだろうと思いますが、名波監督の修正に期待します。

                                (了)



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