2014ワールドカップGLコートジボワール戦の私的雑感まとめ

*Twitter用にメモったものをまとめました。文章として未整理な部分はご容赦下さい。また、試合を再確認していくうちに見解が少し修正されていっています。

■前半

開始2分頃までの展開。キックオフからのボールを奪ってからは、いわゆるこの代表らしいプレーを展開できています。日本はコートジのWG(SH)が守備にあまり積極的でない(自分たちのSBが出づらい状況でもこちらのSHについてこない)ことを利用しようとしていて、狙いがあるプレーをできています。

コートジはSHの裏、SHが関与できないスペースにボールを出させた場合、DMFユニットがサイドラインまでスライドして閉塞しようとします。この時日本のボールサイドのDMFにはヤヤがついていて、縦を切っています。この場合、香川が内側に入ってくると彼を見る選手がいなくなってしまいます(SBは裏を警戒しているし、香川のサイドのSHは香川を見に降りてこないので)。大迫が左へ流れ気味にプレーしていたのもCBとSBを釘付けにして香川をフリーにする効果がありました。

(1:20~)上記の次第でコートジのDMFユニットが二枚ともサイドへスライドしているため、その背中側に大きなスペースができます。ここに香川がフリーでいますが、CBとSBを釘付けにしていた大迫がその前(同じスペース)に出ていきます。日本は森重がフリーでボール持っているので、大迫にクサビを受けさすまいとCBが一緒に出てきます。森重は大迫にはつけず、もう一枚フリーになっている香川にパス。大迫は香川が受けると同時に反転して、CBが釣り出されたスペースに走り、香川はそこへすかさずスルーパス。若干強すぎて失敗しましたが、コートジのバイタルにスペースができるしくみを狙った良い攻撃で、一点モノの崩しでした。

ここからのゴールキックを外へ出させて得たスローインから大迫がポストプレーを成功させ、コートジSBの裏へ長友を走らせますが精度を欠き成らず。

ここからの切り返しでコートジのワイド展開パターンが初出します。

SBのオーリエがカットしたボールをすかさずヤヤへ。ヤヤから右ワイド(日本左)展開でカルーを走らす。しかしここでは長谷部と蛍がしっかり寄せて角度を制限(カルーにしか出せないようにする)し、かつ麻也がカルーをしっかり見ておりボールカット。

これは、日本が試合を通じて継続すべき形でした。

前で角度と精度を規制する。これと連動した後ろのラインでしっかりと受け手を潰す。そのためのコンパクトネス。素早いネガティブトランジション。できればボールを奪ってそこから攻撃へ移る。入りの数分間はその意思統一で動けていたと言えます。しかしこの直後、その後の推移を方向付けてしまう…コートジには自分たちのやり方でいけると自信を持たせ、日本にとっては守備の歯車を狂わせて後ろを重くさせてしまう伏線となる事態が起きます。(2:20~)

麻也がカットしたボールを外に出したので、コートジのスローインからのポゼッション。コートジはDMFをワイドとバックに入れる形でボールを大きく動かすパターンを持っています。日本はこれにも準備していて、CF、本田岡崎をコートジのバックにつけ、内田を連動して高く上げた形で出所、受け手を潰しにいきます。

ここで重要になるのが、一人余ることになる逆サイド(SBの位置)に開いたDMF(このシーンではティオテ)のプレーをどう規制するか、ということ。日本の追い込み方では、ここはプレス網からの逃がせ場所(あえて逃がす場所)として折り込んでいるはずで、ここにボールが戻されるところで潰すか、寄せてプレーを限定させることになっていたはずです。しかし前方のチェイスに対しMFラインとDFラインの押し上げが積極的で無く、ティオテに大きなスペース(つまり時間)を与えてしまいました。

おそらくこのケースではSBの位置に開いたティオテを長谷部と香川で規制することになっていたのでしょう。ティオテにボールが入る時、香川が「ムリムリ(行けない?)」というようなジェスチャーをしているのが映像から分かります。長谷部も大きく後退しているので、有効な形で詰められません。

それでも長谷部が行ってしまいます。そのため、ヤヤに背中を取られ、ティオテにも良い形でボールを離されてしまいます。良い形で、というのは長谷部がティオテを規制することも、ターンしてヤヤのプレーを阻害することもできない位置に出てきたところで、という意味です(このシーンと良く似た長谷部の判断ミスから、日本は後の時間帯でもピンチを招きます)。

ここからサイドへ良い形で出され、ファー狙いのクロスを上げられました。ここは成りませんでしたが、ここでクロスをカットしたのが内田ではなく岡崎である事も注意。はじめの段階で前線のチェイスにしっかり合わせた押し上げをしなかったために、コートジのワイド展開一発でそこまで押し込まれてしまいました。

これこそコートジのワイド展開のしくみであり、またそれによって作為しようとしている狙いでした。このシーンでこの手筋をクリーンに許したことで、おそらくコートジ側はこのやり方でいけるという意識を強く持ったはずですし、日本にとってよくないのは、まずこのやり方に対してしっかり準備してきたはずなのに、後ろが大事に構えすぎたことにより生命線のプレッシング網に大きな穴をあけてしまったことでした。試合の中で修正できている時間帯も多かったのですが、開始わずか5分で起きたこのシークエンスがやはり試合の機微(日本がコンパクトネスを失う時間帯が多くなった)を決定づける起点になったのではないかという思いが……。ここできちんと押し上げ、きちんとアプローチできていれば相手の骨格を試合の入りの段階で破壊でき、主導権を明確に握れたかもしれません。

*このやり方を抑えるために考慮すべき点のひとつが、中央で作られる縦の二択をどう阻止するかという命題です。中央で作られる縦の二択とは、DMF落しのバックラインポゼで余って中央に戻ってくるもう一枚のDMF(ティオテが多い)と、その前に出ているヤヤ。このどちらかにボールをつけ、ワイドに出すコースを二つ得られるよう、コートジのポゼッションパターンは作られています。

(前半5:00~)真ん中の経由地にかけるはずのプレッシャーをかけられず、コートジ定石のワイド攻撃→ファーを狙ったクロス(代表の守り方のセオリー+SBの上背を狙った物)をスムーズに成功させてしまったあとのボール回復→切り返しからの展開。日本はこのあとなかなかボールを回復できなず、二度サイドにボールを入れられ、そのうち一度ファーへのクロスを許します。けれども、ここでは前線がHLを越え、さらに後ろの2ラインもついていっていたので、スピードとスペースを与えていない状態だったので危なげなく対応できました。

(前半5:14~)そのコートジクロス失敗からボールを回復し、深い位置からの日本の切り返し。コートジは前線に4人いて日本の守備陣と数的に同数でもまったくプレッシングをしないので、日本は余裕をもってHL付近まで持ち上がることができます。コートジは、HLライン付近に中央方向に横圧縮されたMFラインを敷きDFラインが控える(442)形で守っています。MFのラインが日本のパサー(長谷部)に中途半端に寄せて動くのですが、その動きに対してDFラインが連動しないので、DFラインとMFラインの間が空きます。

そこへ香川と大迫に入り込まれ、長谷部にいいタイミングでティオテとジェルビーニョの間に簡単にパスを出される。香川はジェルビーニョの背中を取っていて、ワントラップで前を向いて受けました(コートジのSHの守備力不足が出たシーン)。

香川と大迫は縦関係を保ったまま内側に絞りながら走るので、DFラインはアプローチに出られず(出たら最初のピンチのシーンのように大迫に裏をつかれる)MFラインはプレスバック間に合わない。ボールサイドのジェルビーニョは途中でラインに残るのをやめボッ立ちになるので、長友もフリーになります。

このシーンでより重要なのは逆サイドに行っているSHカルーも全く戻ってきていないということです。このため、バイタルに入り込んでいる香川を消すのに逆サイドのDMF(ディエ)を動員しますが、そうすると本田をみる選手がいなくなる。CBが出られない状態なので、ディエとティオテが共同で香川を挟みにいかざるをえない状況。香川はそれ(SHが戻ってこないのでDMFを引きつければ大外がフリーになる)がわかっており、ディエを引きつけてから本田にパスします。しかしこれがミスパスとなり、本田の裏に出てしまってカルーへのスルーパスになってしまいます。香川とは思えない凡ミスです。本田に繋がっていれば大きなチャンスになっていたでしょうが、このようなミスをしてしまったために逆に大ピンチになります。カルーとジェルビーニョは共に守備を止めて攻め残りしているので、カルーはそのまま逆ワイドに残っているジェルへ。日本は好機と見て人数を上げているのでジェルとボニとの二対二に。

森重がボニに前に入られるもうまい切り方をしてシュートをしくじらせ事なきを得ましたが、このわずか開始数分間にこの試合を実質的に形成する状況、要素がすでに出そろっていることに気づきます。

日本とコートジは良く似たチームです。この2チームは、それぞれ攻撃において強力な「できること」をもっていますが、その選択肢はそれほど多様でない。多様でないというのは、多様な状況に対応する力を持たないということで、それはすなわち攻守のバランスを90分通して安定的に維持することができないということを意味します。それは強力なブロッキングを、できる方法を持ってはいても長時間維持できないということを意味しており、そこから「(限られては居るが強力な方法で)攻撃することによって時間を獲得する」という戦略を採ることを、リスクをかけても余儀なくされるという事態がうまれます。コートジはSHをサボらせないといけないし、日本は上げ目のコンパクトネスからの波状攻撃(激しいトランジションとコンビネーションアタックの組み合わせ)に全てを賭けなければいけない。この5分間に凝縮されているのは、コートジはそのリスクに対するリターンを(たとえ敵失によるものでも)得ることができており、日本は逆に自らのアクション不全とミスによって自分たちが賭けているリスクをそのままリスクとして被ってしまっているということです。

コートジ戦は最初の5分で、両チームとも肉を切らせるけど罠ですよタイプであることをさらけ出していて、そのうえでの差し合いで日本の方が負けた。という様相が凝縮して見てとれます。

*DMFがSBの位置に逃げて行うビルドアップは、単なるコンパクトネスからのマーキングで阻害し切るのは難しいのですが、コートジのそれがコンパクトネスで窒息させられるのには理由があります。起点の深みをとっても、幅をとっても最終的に渡すところと経由地は特定できるので、そこを抑えればいい。

(前半7:20~)スローインからのボールをマイボールにできず、そこからGKに戻されるところで本田が長躯プレッシャーにいきます。本田はGKの利き足(右)で蹴らせようと左から寄せているので、GKは右へ蹴ります。そのプレッシャーに対して香川と大迫が連動していて、このロングボールをオーリエのところで阻害。しかし生かされてバックラインに戻されます。が、ここはしっかり蛍と岡崎が縦を切りに出ており、逆サイドに流させて時間を得ます。

その間に日本はMFラインをHL付近に押し上げ、DFラインも押し上げて20~30m間隔の442を形勢。コートジはサイドを替えながら中央でディエ、ティオテ、ヤヤを出し入れし、オーリエに出たところで最終的にティオテをフリーにします。オーリエはすかさずそこへ出しますが、ここは蛍がしっかりと出て下げさせます。(8:23)

そこからもう一度オーリエに出されてクロスを上げられるが、ラインをしっかり上げて人を捕まえているので、問題は生じませんでした。日本はこの形をできるだけ維持するべきでした。

(8:52)そこからの展開。コートジはやはりプレッシャーには来ず、日本に押し上げさせてくれます。日本は内田がSBを釣りCBとの間にスペースを作ります。本田がDMFとSHを引きつけ、岡崎がトイメンSHの背中を取ってそのスペースを攻略。森重がそこへパスを出し、裏に出るがここはうまく戻られてボールを失います。

コートジは日本のDFラインからのビルドアップを積極的に阻害に行かず、日本に攻めさせて切り返しを狙っているのですが、中盤とDFラインの守備の連動性がうまくいっておらず、逆に日本にスペースを与える結果になっているシーンが多々みられます。日本はコートジのSHの守備意識の雑さ、カウンターのために高い位置を維持していること、そのためにボールサイドにDMFユニットが寄ってしまう、SBがヘルプに高い位置を取らざるを得ない、しかしCBは日本のCFとの駆け引きに注視せざるを得ないので(最初の攻撃で裏ぬけされ。日本側のミスが無ければGKと一対一にされていた)動けない、そのためDMFとSBとの間に大きなスペースができるという問題を利用しています。この後にも内田が蛍のパスでSBの裏に抜けかかるシーンがありました。

コートジも準備万端水も漏らさぬ備えでリスクをかけているのではなく、ことによったら日本以上に危うい構造を放置したままの状態でいたことがわかります。日本はそこを理解しており、きちんと使おうとしています。

この差し合いの中から徐々にボールを握り始め、森重のサイドチェンジ→長友突破から得たCKからの流れ(スローインから)で本田が先制します。おそらくボールの握り方も含めて狙いどおりだったでしょう。

(16:55)
コートジはDMFのサイド落しから逆サイド展開してワイド(高く上げたオーリエ)にボールを運ぶビルドアップを試みます。しかし中継地点としてフリーになるはずのティオテに香川が外側からしっかりついて内側に身体を向けさせ、スムーズに展開させません。ティオテは降りてきているヤヤにボールを預け、ようやくオーリエに出すがここには長谷部がついています。オーリエはジェルビーニョに出すがそこには長友がついており、ジェルとのワンツーでオーリエが内側で抜け出そうとしますが、ここには香川と長谷部のダブルチームが待ち構えていて阻害。こぼれたボールがオーリエに再度渡るものの足下に落ち着かせている間に蛍が寄せてボールを奪取します。

コートジのワイド展開メソッドに対して、日本のSHとDMFが準備できていることを示すわかりやすいシーンです。明らかに日本はこのやり方に対して準備をしてきていて実際に機能させることができているので、この展開パターンだけで日本がやられたという指摘は正しいとは思えません。

この瞬間日本のCFとSHとDMFはティオテとジェルビーニョが空けている後方の大きなスペースを使える状況。日本の穴を使うコートジの「罠」があるなら、これが日本の「罠」だといえます。が、この展開から得た陣地、ボールを維持したかったが自陣に戻さざるを得ず、川島からロングボールを蹴ってしまいます。大迫がうまく跳ね返りを収め香川に出しますが、香川のアクションが中途半端でボールロスト。ボールはコートジGKへ(18:55)

ただ、ここでもしっかりと押し上げていたのが功を奏します。本田がやはりキーパーとCBへ寄せる構えを見せ、GKは今度は左SB(日本右)へ。しかし岡崎が準備をしていてすぐに寄せます。連動して蛍がディエに寄せているのでそこへは出せません。ティオテにも大迫がついているのでそこへも出せず、CB経由で逆サイドのオーリエに送りますが、香川がしっかり寄せます。この時香川は内側から寄せ内側へのコースを切っていて、首を振って縦のカバーを確認し思い切り寄せています。内側への角度を確保できるポジションにヤヤが降りてきますが、長谷部がヤヤについているのでヤヤにも出せずオーリエは日本が誘導したサイドライン際の縦へ出すしかない状況へ追い込まれます。味方の動きに対して準備していた長友がチェックに行き、長谷部がボールを奪取します(長友の所でファウル判定)。前からハメに行くのに連動し、全体がしっかりと押し上げることができているため、コートジの狙いを阻害するよい形で守備できていることがわかります。

こうやってあらためてつぶさに確認していくと、日本は入りが不味くミスも多く主導権を握りきれていないのですが、おおむね自分たちの戦術、プランをしっかり遂行していると思えます。

(19:32~)↑でコートジが得たFKを日本がカットしてコートジスローイン。コートジは自分たちのビルドアップがなかなかうまくいかない中先制されて歯車狂いかけておりスローインのターゲットもなかなか定められず、ようやくフリーで出てきたボニへ出しますが、麻也が思い切って出てきてこのボールを奪取します。そのまま麻也が持ち上がってカウンターにつなげます。HL付近からの攻勢だが、大きなチャンスに繋がります。相手陣までもち込んだところでワイドに開いた大迫にパス。そのままゴール方向へ走り込むがコートジの選手は麻也を完全にロスト。大迫はおそらくその向こうに走り込んでディエの前に出れていた岡崎に出したのでしょう(届いていればドンピシャの軌道でした)が麻也がヘッドで本田に落としてしまい、いったんチャンス消滅します。しかししっかりと時間を作り後ろが押し上げてきているので、上がってきた内田に本田はボールを出すことができ、ここから内田がシュートまでいきます。このシュートを仕留めていれば……というくらい、ここまで良い展開でした。

本田がGKまで詰めていった上記の2ケースでは、その詰めるベクトルに応じてSHがしっかり出し先にをつかまえにいって、その後ろも連動してボール奪取にまで結びつけています。コートジが中央経由地をフリーにするために準備しているバックラインポゼッションに対応した準備をしてきていることはもちろん、そこへGKを組み込んでいること、利き足とどういう場合どちらに出すかのケーススタディもしてきていることが明らかです。

(23:57~)SBとSHを高く上げDMFが一枚落ちるコートジの形。うまく阻害してCBから精度の低いサイドチェンジをオーリエに向け蹴らせることに成功、コートジは中盤とサイドを大きく空けているので、ボール奪取・トランジション後本田が余裕を持ってボールを受けて展開。しかし内田と岡崎のところでパスミス。カルーに走られかけるがなんとかカットしてマイボール化。まずまずうまくやれています。

(26:05~)長友が突破しボックス前にクロス入れますが、そこから一気に自軍BOXまで持ち込まれます。スピードに乗ったランをされるだけでコートジゴール前から自ゴール前まで一気にやられました。麻也はファウルで止めるしかありませんでした。このピンチが、ひょっとしたらチーム全体の「押す、引く」の価値観を狂わす分水嶺になったかもしれません。

(29:00~)奪った後の切り返しで本田が大迫にわたし、リターンを前で受けるところでミスが生じて再び奪われます。けれども、そもそもここのポジティブトランジションで後ろの上がりが遅くなっています。奪われた後前線がすぐプレッシャーをかけて時間を稼いだのですが、DFラインは下がったままで、残っているヤヤにもオーリエにもSHにも、DF~MF間に広大なスペースを与えてしまっています。ここもファウルで止めるしか無かった。

このへんの時間帯で顕著なのですが、GK(川島)からのリスタートをほぼ蹴っているのが謎めいています。競ってもコートジボールになっているだけで、これもこの時間帯周辺からDFラインが上げずらくなっていく原因のひとつかもしれません。相手の前線はほとんどプレッシャーかけてこないのだから、たとえGKが川島でもDFラインにつけさせてゆっくり押し上げつつ時間をコントロールできれば、もっと試合を落ち着かせることができたのでは?

(30:53~)26:05のピンチ以降にDFラインの押し上げが遅くなり間延びするシーンが少しづつ増えていきますが、ここでもGKのタイミングが早かったのか、それともDFラインが上げるのが遅いのか、ハイボールを取られる前も後も下がるのが速すぎ、スペースを与えています。全体としては35mくらい。危険数値に近づいている。しかもDFとDMFのライン間で相手にこれまで与えていなかったスペースを与えています。長友がゴールキックにして難を逃れたが…

(32:10~)コートジ陣内スローインから。ここでもコンパクトネスが失われています。前線とDFラインの感覚は40メートル近くに広がっていて、DFとDMFの間でヤヤらに余裕を持って受けられ始めています。ここはカットできたのですが…間延びし始めて相手にスペースを与え始めていても、なんとなく奪取できているのが修正を遅らせたのかもしれません。

(33:32~)蛍から大迫へのクサビを狩られ、逆襲を受けます。しかし奪われた瞬間香川と蛍が近い関係だったので、ワイドへの角度を付けたコースを切りつつプレッシャーをかけることができていました。が、DFの森重も麻也もこの時点で下げる準備をはじめていて、長谷部と蛍の背後のスペースにいるボニに、まったくチェックにいくことができません。コートジ側はボニに出すコースしか残されていなかったのに。しかもこちらのファーストDFによって。20分までの展開では、勇気をもって阻害にいけていたシーンです。

自らスペースと時間を相手に与えてしまうことになり、ジェルビーニョとイーブンの駆けっこに持ち込まれ、しかもボニにノープレッシャーでジェルに出すのを許します。ここはなんとか対応しましたが、少しづつリアクションで守備をしなければならない局面、アクションをかけられるはずなのにしないことで自らそうなってしまうような局面が増えてきています。

(39:25~)攻勢をしのいでからの逆襲で、長谷部のミス。

(41:55~)コートジバックラインからの攻撃で、失点シーンの先触れとなるようなシーン。コートジのやり方は変わらず。ここは日本も寄せることはできているが、全体的に甘くなっていてボールを生かされ、逆サイドのSBへ展開されます。岡崎と内田のスライドが甘く、良い状態でニアにクロスを入れられフリーで合わせられました。BOX内には蛍が戻っていたのですがクロスを阻害できず。縦を切ってからサイドに出されたボールに対してアプローチをする、というザック日本の定石ですが、ザンビア戦でもそうでしたが、相手にスピードアップした状態でサイドに出されると、アプローチが間に合わずいい状態で上げられるという問題点が残ったままです。結果的にこの問題点が2失点の原因のひとつになります(他の原因もある)が、修正の目処が立っているのか不安なところです。

(43:12~)日本スローインから。長谷部から大迫へのくさび、大迫ポストで本田に落とすところでミス。ボールを奪ってから3手以内でのミスが多く、このことも日本を苦しめていき、DFラインの判断に迷いを生んでいますます。ここではすぐに左サイド(日本右)へボールを逃がされ、逆大外のジェルビーニョへ出されて、あっという間に長い距離を戻らされました。

(43:37~)上記ピンチはクリアしますが、クリアボールを拾われ、自陣に引いたまま守らざるをえなくなります。少しでもラインを上げたいところですが、大迫が戻っておらずクリアボールを確保したティオテにプレッシャーをかけられる選手がいないので無理。ここで長谷部が出て行きます。この判断が危難を産みます。ティオテとの距離は10m以上あって、寄せていってもボールはいい状態で離される可能性が高い。ティオテの選べる受け手にプレッシャーをかけられる状態であればよかったのですが、押し下げられているのでSBのオーリエがドフリーで余っており、ここへ簡単に出されます。長谷部はそれでもいいと思ったのかもしれませんが、ここで麻也と一緒に近距離で挟んでいたヤヤを離してしまい、彼にスペースを与えることになってしまいます。コートジはフリーのオーリエとジェルビーニョ、ヤヤのトライアングルで香川を囲んでいる格好になります。オーリエがノープレッシャーでボールを持っているので、ラインは上げられません。長谷部がいなくなったのでヤヤへボールが入るコースを阻害できないため、麻也はついていたヤヤから離隔し、ヤヤにボールが入った場合にシュートを打たれぬようポジショニングし直し(ゴールへのコースを切る)ます。しかし、そのためオーリエからジェルビーニョに出された場合に長友を釣り出され、ヤヤに麻也と長友の間に空くスペースを使われる危険が生じました。

ヤヤはもともとこういうポジショニングがうまい選手ですが、長谷部が何にもならない寄せをしに出なければ、長谷部と麻也でヤヤの行動の選択肢を削れたはずです。このシーンでは結局ジェルビーニョに出され、ジェルからヤヤに出されてBOXに侵入されます。長谷部は戻ってきてヤヤについていたが、前をふさぐ選手は誰もいない状態なので簡単に前を向かれ、そこからグラウンダーのクロスを入れられました。完全に崩されたシーンで、ここで同点にされていてもおかしくなかったです。このシーンを与えたのは長谷部の判断ミス。この試合の長谷部はこういった判断のミスが目立ちました。

(45:08~)川島のフィードのボール争奪でまた負けて、奪われます。奪われた瞬間の切替が遅く、決定機まで一気に持ち込まれました。ここでもやはり、長谷部が中央でフリーになっているディエに、切替時適切にプレッシャーにいけなかったところから。ディエにボールが渡った時点では、マヤの後ろに居たボニが長谷部を釣るためにその視野に入りに来ているのでここへ出させないため動くほかなかったのですが、切替の初期段階でディエに素早く寄せることができていれば少しでもラインを上げることができたので、この危難は避けられた可能性があります。先程は行き過ぎ、今度は待ちすぎた。このポジションの選手としては、判断の悪さ、遅さが目立ちます。ザックが後半早々に交代したのも無理はないできですが、この状態の長谷部をなぜ先発させたのか……優しさだったのでしょうか。

■後半


開始直後、森重から大迫への25mのグラウンダー。大迫スルーで本田に渡るがトラップミスでボールを失います。ここはファーストDF上手く運んで事なきを得ますが、ビルドアップのミスが多い。

(後半1:59~)
中央のハイボール争奪戦でボールを奪われ、サイドへ展開されます。カルーにボールを持ち出されるがここに蛍と岡崎でプレッシャー。ここでプレッシャーがかかっている間に、蛍がカルーに詰めているために生まれているDF前のスペースに入っているジェルビーニョに自由を与えぬよう少し上げるなり誰かがアプローチできるように準備できればよかったのだが、総員下げ続けでジェルにスペースを与えてしまいます。ここへボールを出され、前を向かれてドリブルされて一気にピンチに……

(3:44~)
サイドで生かしてガラ空きのオーリエの裏に出すも、長谷部のパスミス。

後半、コートジはワイドのプレイヤーへのパスとしてではなく、日本のDFラインを下げさせるためのロングボールを使い始めました。日本の最終ラインが下げ基調になってるために自分たちに有利なスペースが増えつつあるという戦況を意識的に継続させる狙いがあったのでしょう。

遠藤と長谷部を交代したのは長谷部の守備面での判断ミスがあまりに多いこと、攻撃面でもパスミスが多くボールを失う起点になっていること、またコートジがロングボールカードを出し始めていることからボール保持を回復するのが最優先とみた交代だと思われます。見込める効果を考えれば下策とは言えないです。

(10:33~)
川島からのリスタートのロングキックでセカンドボールを奪えず、やじゃりボールを失います。

(11:40~)
岡崎と大迫でボールを奪ってからのカウンター。真ん中でボールを持ちディエをかわした本田はナナメにDF裏へ走り込んだ遠藤では無く外側の香川を選択しますが、成らず。そこでボールを失った直後、本田・蛍・長友でファーストDF。遅らせてティオテにボールを下げさせますが(本田がカットしかけたがティオテにわたる)ファーストDFによって稼がれた時間があったにもかかわらず、ここで香川のプレスバックがありません。香川はトランジション時に足をとめてしまっていて、直前の攻撃が成らなかったことを嘆いて動かぬまま。しかしこのため、切替時に味方が日本のファーストDFを浴びているにもかかわらず長友が出た裏狙いで走っていたオーリエに、ティオテは良い形でボールを出せることになりました。相手に与えてはいけないスペース(走れるスペース)を与え、長躯自陣へ戻らされることになり、ヤヤのドリブル突破でBOXまで入られPKスレスレのカットで事なきを得ました。

*攻守に渡って、切替時の香川のアクションが遅くなっているのが気にかかります。

(13:45~)コートジのSB爆上げポゼッションに対し442でブロックします。DF~FW間20~25mで守れていて、人のズレを許さず。カルーの強引なミドルはあったが、守れている。後半でも、この状態を作れていればきちんと守れています。

(15:17~)コートジポゼッションに対し442ブロック。とくに遠藤が入ってから16分くらいまでの時間帯は、アタックでミスをしながらも高い位置までボールを持ち込めており、かつファーストDFもできていて、ライン設定をやり直してコートジのポゼッションにもコンパクトに対応できています。
(香川のサボりからヤヤにもっていかれたシーンを除いては)

(16:37~)
ディエに替えてドログバIN
DMFが一枚いなくなったからか、ドログバが入ったからか、コートジは日本陣内でも強くプレッシャーにきはじめます。遠藤の縦をうけに入った香川が自陣内で背後からチェックを受けボールを失います。そこからすぐドログバにつけられ、一気にBOX内まで持ち込まれて決定機を作られます。

ここは阻止して、切り返します。コートジはドログバの突破に連携してオーリエも両サイドのSHも全員上げてBOX内で使っているうえ、DMFを一枚欠いているのでオーリエ・ドログバのサイドはガラ空きになっています。日本はすぐ切り返して香川と長友でサイドを上がっていくのですが、後ろの押し上げがあまりに遅い。コートジは自陣に人がおらずプレッシャーかけようにもかけられないのですが、日本の押し上げが遅くサポートがこないので、コートジ陣半ばまで持ち込んだところでカットされてしまいます。しかも、押し上げられていないので日本の陣形も間延びしており、攻め残りしているコートジのアタッカーたちにスペースを与えた状態でサイド攻撃を許すことになりました。ここはしくじってもらえたが、勝負所でした。なぜなら、同じ構造のミスから同点弾をくらうからです。

*後半の日本は、攻撃時にゆっくりと時間を使うことを選択することが多くなります。押し上げを迷うケースが多くなったのと同じく、チームとしてのこの挙動は敗戦の原因のひとつになったのではと考えられます。時間を使うときに肝心なのは、ただ使うだけで無くその時間で相手にスペースを使わせないように差配を整えることが重要ですが、(でないと取られたときに崩されやすくなる)この試合で日本はそのような挙動時に全体で押し上げることもせず、行ける選手だけでもボールサイドに入れていってサポートを増やしていくこともせず、ただ漫然と時間を使っています。これは非常に危険な選択でした。コートジの攻撃の特徴は「コンビネーションは単調なのでスペースを与えないように守備すればあまり怖くないが、スペース(とくに、走れる縦のスペース)を与えてしまえば個人でもっていかれる」というもので、これは選手達もわかっていたはずです。けれども、その特徴を抑えるために準備してきたはずのことを自分たちから放り投げているように思えます。

(18:32~)失点シーンですが、ここも日本のカウンターチャンスからでした。中央で香川と本田がボールを受けるのですが、思い切ってスピードアップし上がることもなく、サポートが大きくワイドに開いてボールを逃がすこともせず、ただ中央でボールを失って(しかも自陣内)ワイド展開されました。後ろも押し上げておらず、フリーのオーリエからクロスを入れられて同点。

あれだけフリーでクロスを上げられたらマズイですが、ボールを奪取された後いったん中央のヤヤにボールを預けられ、さらに内側にも人を入れられているので香川や遠藤はこれをケアしないといけない。さらにドログバがサイドに出て長友を釣っているので、オーリエにプレッシャーをかけられる選手がいない。強いてあげれば前残りしている大迫だが距離がありました。カウンターチャンスから一転、サイドに出されたら最後、阻止するのが構造的に難しい盤面に持ち込まれていました。

こうならないために、コートジのしくじりを一気に切り返して二点目を奪うスピードアップ、押し上げがここでは必要だったはずです。コートジはバランスを崩していました。しかし、前半から続く奪っては(ほぼ自分たちのミスから)失い長距離を戻り、の繰り返し、そして良くない形で奪われた場合に一気にBOXに持ち込まれるというシーンがいくつかあったことから、無闇に押し上げずその状態を避けたいというメンタルに入っていってしまったのでしょうか。しかし「一気に持ち込まれる」のは、個のスピードがある相手にスペース(縦のスペース)を与えているからなので、しっかりと組織を作り押し上げてスペースを殺しておけばかなりの危険を防げるはず(実際それができているシーンでは狙い通り防げている)。日本代表は、そもそものコートジの特徴を認識し直す原点に立ち戻って、守備にしろカウンターにしろ適切なプレー選択をするところに回帰するべきでした。なのですが、無意味に詰めて展開された(長谷部の判断ミスなど)シーンもいくつかあり、押す、引くの案配、認識がチーム内で徐々に狂っていったようにも見えます。しかし、この試合の敗因は間違いなくこのズレにあるのではないかと思われます。

(20:18~)コートジは後半DFライン下げさすためのロングボールを増やしていますが、ドログバが入ってターゲットになったことにより積極的に狙ってきます。ここでセカンドボールを拾われ、いったん内側でためられてから走り込んできたオーリエにワイド展開されます。ここへつくべき香川のアプローチが遅れ、内側で4対4を作られたところへ良いクロスを上げられ、決定的な失点をしました。

1点目はチーム全体でカウンターと押し上げをためらったための失点ですが、2点目は若干詰んでいたといえるような失点です。ここでは押し上げはできていたけど、直前に失点してしまったこともあり、ドログバの参加でマークをズラされているところの修正がし切れていない(落ち着く時間が無い)ところで、ずれたまま攻撃を喰らってしまった。このケースではまずBOX幅のケアに動くのはこのチームの守備のセオリーなので、SBへのケアが遅れた香川を責めるのも酷です。大迫が全力で戻ってきてオーリエのプレーを阻害するというスーパープレーが飛び出せば試合の潮目そのものが変わったかもしれないけれど、このシーンの大迫は442セットの中央閉塞からのスタートなのでそれを求めるのは厳しい状態。ただ、ドログバがあのエリアでターゲットになって相手のマークをズラし、SHをフィニッシャーとして自由にするというパターンは知られているので、このケースに持ち込まれたときにどう対応するか、どうも落とし込まれていなかったようなのが気にかかります。とはいえ、このチームの長所短所を考えるとボールを保持してドログバを浮かす、というのが最善手のような気もしますが…。

逆転したあと、コートジは自陣内ではボールサイドのSHをバックラインまで落とす5バックで割り切り守備からのカウンターで試合を締めに入ります。日本はいくつかの手を打ちますが、効果を上げられず試合終了…

■全体を振り返って

全体を振り返ると、コートジの戦略に対して日本は十分な準備をしてこれていました。ワイド攻撃のしくみも全般にしっかり抑えられており、前からハメにいっても、HL付近を中心に下げていった状態でも、最終ラインを押し上げて全体の組織をコンパクトにできている状態であれば、長谷部の判断ミスがあったシーンと最後のドログバへのロングボールから逆転弾に結びつけられたシーンを除けばしっかりと対応できています。とくに前半25分くらいまでは我慢の展開で局面としては均衡も、戦略的には主導権を握れていたのではないかと思えます。日本の組織に破綻が見え始めるのは、前半26分の日本攻勢から一気に切り返されたシーンからです。ここから、最終ラインの押し上げに迷いが見られるようになり、DMFのラインとの間にスペースを自ら生み出し、コートジに中央経由ワイド行の展開を、しかも(DFラインとDMFラインの間を使われるので)より危険な位置で許すようになっていきます。再確認した限りでは、日本をこの状態へ追い込むために特別な手段、ムーヴをコートジが導入しているようすはありません。流れの中で、日本の方が勝手に崩れていったけはいがあります。

攻撃でミスを重ねたこともあいまって、時間を経るにつれ最終ラインはより慎重になっていきます。けれどもその判断は縦のスペースを欲している相手に欲している物を与える結果となり、カウンター時の迷いから同点弾を許すことになりました。安全を求める意識が、結果的にはもっとも避けるべき危難を呼び込んだのです。歴代の日本代表が本番で陥ってしまった状態に、この代表も陥ってしまったのでしょうか。

この試合、戦術的には大きな破綻はないと思われます(ドログバ後のマーキング修正の混乱、後れはあったかもしれせんが)。選手達も口々に言っているとおりの問題こそが、敗北に直結した脈絡なのではないかと、やはり考えられます。ここを早急に持ち直し、チームとしてのプレイイメージをつむぎ直してギリシャ戦にむかってほしいところです。









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500zoo

コメント2件

両SHのプレスが消極的でSBも下がる→DFラインが下がる→ボランチの負担過多じゃないですかね?
SH含め前線の選手がプレッシングをかけられない場合にラインが下がるのはOKです。この試合での日本の組織の問題は、SHも含め前方のプレッシングができている時・攻撃時押し上げなければいけない時にDFラインもしくはMFのラインが連動して押し上げられない(むしろ引いてしまう)ケースが散見され、そこからピンチを招き、失点を喫しているということですね(2点目はここで書いておりますように別の問題)。ちなみに両SHは相当守備も頑張っています。ただ、特に香川のサイドで香川が勝手に足を止めてしまったことによって穴をあけピンチを招いているシーンはありました。全体に、どこのポジションの選手の責任というよりは、チーム全体でプレッシングの意思統一を欠いたシーンがかなりあり、そこからやられてしまった、という試合だったかと思っています。ラインの高さ(タックルライン)をどこに設定するにせよ、必要なのは意思統一と連動性を取り戻すことかなと。
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