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おもちのコロナウイルス入院記④(ICU編)

我が家のおもち(1歳11ヶ月)は1月半ばに感染したコロナウイルスが悪化し、コロナ病棟からICUに移動しました。
こちらではICUでの入院生活について記します。

2023年2月13日〜17日 入院17〜21日目(陽性27〜31日目)

前回の投稿で、おもちは血球貪食症候群(正式な診断名は血球貪食性リンパ組織球症)であることを書きました。血球貪食症候群には遺伝性とウイルス性があり、おもちの場合はコロナウイルスで免疫が刺激され、暴走したのではないかと医師からは告げられました。
血球貪食症候群の治療法はステロイドパルス療法や大量ガンマグロブリン療法がありますが、おもちには効果が見受けられませんでした。そこでHLH2004計画という治療法を採用することになりました。
使用する薬剤はデカドロン(ステロイド)、エトポシド(抗がん剤)、シクロスポリン(免疫抑制剤)の3つ。投与を始めると発熱は収まり、食欲も出てきて4〜6割は食べれるようになったと聞いて安堵しました。

2023年2月18日 入院22日目(陽性32日目)

それまで落ち着いていたのに、夕方になって発熱。土曜日なので検査せず、カロナール投与。

2023年2月19日 入院23日目(陽性33日目)

前日同様発熱。前日同様、カロナール投与。

2023年2月20日 入院24日目(陽性34日目)

血液検査の結果、血球貪食症候群が悪化していることが判明。血漿交換療法(体内から血液を抜き出し、悪い部分だけ抽出して元に戻す方法)や未承認薬含め、検討すると主治医から伝えられました。
同時に行ったPCR検査結果も陽性で、引き続きICUで治療することになりました。

2023年2月21日 入院25日目(陽性35日目)

血液中で悪さをしている物質を抑える薬(アクテムラ)の投与が決定。投与してから熱は収まったものの、血液検査の結果フェリチンが24万ということが分かり、まだ油断できない状態だと主治医から告げられます。

2023年2月23日 入院27日目(陽性37日目)

アクテムラ2回目を投与したことで、今のところ解熱傾向。食欲は無いようで、1〜2割ほどしか食べてなく、今日はあまり元気がないと言われました。
アクテムラのインターロイキン6(IL-6)含むサイトカインの上昇を抑える効果で、フェリチンやLDHの上がり幅は緩やかになったそうです。依然予断を許さない状況なので、引き続きICUで診てもらい、月曜日のPCR検査でウイルスが減ってれば小児病棟へ移れる見込みとなりました。

2023年2月24日 入院28日目(陽性38日目)

アクテムラ投与してから発熱はないものの、尿道に入れているカテーテルから血尿が出たとのこと。恐らく尿道が傷ついているのでカテーテルを抜去して様子見することになりました。
この日は夜比較的遅い時間に主治医から連絡がありました。ヘモグロビンが3まで下がり、急ピッチで輸血。6まで戻る。ヘモグロビンが下がったので、酸素をちゃんと供給するためにカニューラを付けていました。
クリオフレシピテートという血液を固めやすくする薬を投与しているので、貧血が落ち着けば元気になると説明を受けます。
ICUに入って10日以上会えていないので、看護師さんの取り計らいで明日急遽2人で面会できることになりました。

2023年2月25日 入院29日目(陽性39日目)

10:00過ぎ、主治医から電話。朝方2回ほど痙攣し、緊急でCT撮影。前頭部と腎臓付近に出血していることが分かりました。脳内ではないこと、腹部の出血は腹圧で止まる見込み。ただ動くと出血が広がるので、血を止まりやすくする薬を挿れつつ、挿管して鎮静をかけることになりました。

お昼過ぎ、医療用ガウンを着てICUの病室へ。
そこには想像していたのとは違い、苦しそうに呼吸しているおもちがいました。私たちの呼びかけに、「ママ」と口を動かして応えてくれました。「頑張ってね、お父さんもお母さんもまた来るからね」もう沢山頑張ってるのにこんなこと言うのは酷かもしれないけど、必死に呼びかけました。
私たちが帰ったあと、挿管。どうか安静にすることで、また元気なおもちに戻りように。

2023年2月26日 入院30日目(陽性40日目)

昨日の挿管は無事終了。まだ出血し続けている状態なのと肝臓の数値が悪化しているけど、今は身体を休めているので様子見。心臓と肺に異常がないのが救い。主治医からは心拍も安定しており、これ以上悪くなることは考えられないと言われ、安堵しました。

2023年2月27日 入院31日目(陽性41日目)

朝7:00過ぎに主治医から入電、なるべく側にいてあげて欲しいと言われました。急いで病院へ。ICUへ到着すると、主治医からは驚くべきことを伝えられました。
昨夜から排尿がないこと。肝機能だけでなく腎機能も低下していること。そうなると、出来る治療が限られてくること。輸血もできなくなること。
頭が整理できないまま、病室へ。2日振りに面会できたおもちはお薬ですやすや眠っていると思ったら、ここに書くのは憚られるくらい、壮絶な状態でした。
薬で意識がないのは分かりつつ、少しでも届いたらと沢山声を掛けて病室をあとにしました。

お昼前、再度行ったPCR検査の結果が出たと主治医から連絡がありました。結局陽性のままで、ICUから出れませんでした。それでも普段の倍以上の時間、追加で面会時間を許可してもらい、家族でだっこしたり、沢山話しかけることができました。鎮静で手足に力が入らないおもちは、ただただ重かった。
面会をしている最中、主治医から「もって今日か明日です。」と告げられます。こんなはずじゃなかったのに。あまりにも唐突で、残酷で、一気に私たちは地獄に突き落とされました。
「もし、最期のときが来るのであれば、立ち会いたい」と告げ、再度帰宅します。

夕方、主治医から「そろそろ側にいてあげた方がいいかもしれません」と連絡がきます。
ICUの病室前でガウンを着て病室へ入ると、先程と変わらないようなおもちがいました。呼吸も心拍も安定しているように見えるけど、それは挿管して酸素を送っていたからだそうです。
自発呼吸がないことと瞳孔を確認し、16:59主治医により死亡を告げられます。主治医の絞り出すような震える声の背後で、17:00のサイレンが聞こえました。
「もう頑張らなくていいよ、よく頑張ったね」まだ僅かに鼓動しているおもちに、そう呼びかけました。「いっぱい頑張らせてごめんね。お家に帰ろう」聴覚は最後まで残る感覚だと聞いたので、少しでも届くように、語りかけました。

こうして、おもちの42日に渡るコロナウイルス闘病は終わりを迎えました。
新型コロナウイルス感染によって血球貪食性リンパ組織球症を発症、最終的には多臓器不全となり、亡くなりました。

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