素晴らしいロミジュリ『泣くロミオと怒るジュリエット』

ロミジュリがあんまり好きじゃない理由は
大きく3点


ライバル同士の家柄とはいえ、殺意まで抱けるほど嫌悪する意味がわからんし、
親友が殺されたといっても好きな人の身内殺すのにためらいがないのが全くわからん問題


ひとめぼれは理解できるが、命捨てるほどか?と気持ちが追い付かん問題


ジュリエットの計画がロミオに正確に伝わらなかったこと、結構大事件だけど、
サラっと流されすぎじゃない?問題

泣くロミオと怒るジュリエットについては
このロミジュリ3大問題を盛大に解決してくれる最高の物語になっていた。
「終戦5年後」そして、「日本人のやくざ」と「在日(三国人)のチンピラ」との争いと舞台を変えることでその物語を成り立たせた脚本が本当に素晴らしい。

【お互いの殺意について】
ティボルトは戦争でつらい体験をしていて、それはマキューシオによってフラッシュバックが引き起こされていた。(マキューシオは知る由もないが)
 ロミオは怒りと悲しみでドスを振り回したけれど、殺意があったわけではなく、ティボルトがロミオの腕をつかみ、自分の胸にドスを突き刺した自殺だった

【ロミジュリの恋について】
ロミオは生活に絶望していた。
戦争が終わり、ある程度生活が落ち着いたからこそ見えてくる自身の将来への不安。
リアルに感じられることだなと思う。
そんな中恋に落ちた相手が救世主に見え、絶対的存在になる気持ちはとても理解できた

【ちゃんと伝えろよって事について】
神父陰謀説(昨年見たR&Jはまさにこれだった。陣内孝則さんめっさかっこよかった)とかここについては各舞台で色々膨らませられる部分だと思うのだけれども。
泣くロミオはなんと!!!
ベンヴォーリオがロミオに密かに恋をしていて、わざと手紙を届けなかった。
という物語。これがまた泣ける。。。

この舞台は本当に笑っているか泣いているか、泣きたいのに笑かされるか、笑ってたのに突然泣かされるか、もう感情ジェットコースター、脳で理解する前に体が反応しちゃっているみたいな舞台だったのですが、


ティボルトの激白
白髭(ローレンス)とカラス警部補の過去
ジュリエット死後のロミオとベンヴォーリオの別れ
ロミオからジュリエットへの祝福
ジュリエットの最後の希望


と各登場人物にフォーカスされた人間の弱さがむき出しの号泣ポイントが用意されていて、
誰も悪くないよ!!!誰も悪くない!!!!
みんな幸せになってほしかった!!!!!号泣!!!!!!!
と素直な気持ちで見れるとてもよい物語でした。

原作のロミジュリはなぜか「銅像建てて両家仲直り大団円!」って結末だけれど、
泣くロミオ…はソフィアとベンヴォーリオを残して全員死ぬ。
これは関東大震災以後に実際にあった在日外国人が大虐殺された事件を描いていて、
ここまで個人の弱さを描いてきたけれど、
人間が持つ最大の弱さは集団心理だよというメッセージが込められているようで、
今のコロナ問題見るにつけ、まさに、、、という気持ちになる。
ある意味とても時世にあった舞台だった、、、

ラスト、生き残ったソフィアとベンヴォーリオは黒い衣装。
死んだ人たちは白い衣装(カラス警部補とスズメ巡査は制服だけど)
赤い紙吹雪が降る中
ロミオとジュリエットがタキシードとウエディングドレスで、
後ろに笑顔のマキューシオとティボルトを従えて大階段を下りてくる。
白と黒と赤のコントラストが非常にきれいなラストシーンだった。

そのあと、ロミオが呼びかけみんなで記念撮影するのだけれど、
誰も悪くない!みんな幸せになって!
の気持ちが実現したようなラストで、
そういう姿が見れて嬉しいような、これがただの夢であって現実ではないことがとても切ないような…
そんな複雑な気持ちを残すすごく余韻を作り出してくれる舞台でした。

本当に好き。
泣くロミオと怒るジュリエット。

絶対再演希望。

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