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苦味走る:

一時期、苦味走るという言葉にはまっていた。
渋い の元となっている言葉で現在はほとんど耳にしないような言葉だと思う。
少なくとも僕は今まで聞いたことがなかった。

こいつとの出会いは社会人1年目の4月。今から3年くらい前。

駒沢にある本屋に友達と行こうとなり、駒沢公園駅で待ち合わせした。
ちょうどランチ時で、腹が減っていたのでどこかでご飯食べてから本屋に向かおうとなった。

彼がカレー好きなのを知っていたし、ぼんやりカレー屋さんにしようとしていて、これから向かう本屋のマスターもカレーフリークという情報は抑えていたので、一層のことマスターにおすすめのカレー屋さんを教えてもらおうと僕が提案した。

そして電話して聞いた。
「これからお店に向かうんですけど、その前にお腹が減ったのでカレー食べてから行こうと思っていて、おすすめのカレー屋さんがもしあれば教えてください。」と。

少々イレギュラーな店の決め方かもしれないけど、仮に僕がそのマスターだとして、この聞かれ方は悪い気はしないだろうと思った、むしろ僕だったら嬉しい。しかも行った感想も言えてコミュニケーションの入り方としては申し分ないと思えた。
そして快く紹介していただいた、そこは本格的なインドカレー屋さんだった。

店内に入りカウンターに座りオーダーし、待っている間、置かれていた雑誌の中から気になるものを手に取り読んでいた中で「苦味走る」に出会った。
確かカレーの雑誌の大した関係のないコラム記事だったと思う。

よく良い歳の取り方をした髭の似合うダンディな男を渋いと表現するけど、苦味走るは渋いより渋い。

当時渋い男になりたがっていた若い僕ら二人にとってこの言葉との出会いは、普通の人が使わないような言葉であるけどしっかり日本語として存在している単語を見つけたってことで一歩渋い男に近づけた感覚にさせてくれた。

そこからことあるごとに、苦い苦いと、渋いをあえて使わずに表現していた。
端から見たらかなり気持ち悪い。

そういう時期があった。

まあでも苦味走るを使いこなせる男はかなり苦いと思う。

なので今後僕が苦味走るを使っていても変な目で見ないでください。
よろしくお願いします。

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