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桜の季節に思いを寄せて

2024年4月14日、日曜日、快晴。
久しぶりに東京の街へと出向いた。実に4年ぶり。
目的はライブ。これまた実に4年ぶり。

これまた久しぶりに電車に乗ったら、こんなに揺れたっけ?と思ってしまうくらい揺れて、小説を数ページ読んだだけで酔ってしまった。東京の街はあい変わらずたくさんの人で溢れていて、どこへ行っても話し声が絶えなかった。言語も目の色も様々で、4年前の今頃の、思いがけず簡単にどこかへ行くことができなくなった / 行きにくくなった時の、さらに前の状況に戻りつつあるんだな、とようやく実感したりした。

4年前に六本木で観たのもまた、フジファブリックのライブだった。キーボード・ダイちゃんの生誕祭ライブ。スクリーンに写真を投影してこれまでを振り返ったり、天井に釣られたり、急に料理が始まったり、だいぶ本格的なマジックを行ったりとものすごいライブだった。ここまで書いてみてほんとうにどうかしている(誉め言葉)ライブだったと改めて思う。

まあさすがに今日は料理はしなかろうと思いつつ向かったのは、LINE CLUB SHIBUYA。旧渋谷公会堂。これまで何度もライブに足を運んできたけれど、渋公は初めて。大きいところだ、と率直に思った。そしてすぐ、グッズの先行販売の列がものすごいことになっていて、おおう……と躊躇いかけたけど頑張って並んだ。案外スムーズに進み(それでも50分近くは並んでいたみたいだけど)、売り切れる前にお目当てのグッズを購入できてほっとした。

開場してみると、まさかの3階席は建物の5階で、思っていた以上に高いところからステージを見下ろす場所に席があることが判明。高さにおののきつつ(高所恐怖症)、見下ろす位置とはいえすごく見やすい!と感動。ペンライトがちゃんと点灯するかを確認したり、ちょっと小説の続きを読んだりしながら待っていたら、じわじわと緊張が高まってくるのがわかった。そうそう、わたしはライブ前になぜかやたら緊張するのよな……と思い出しつつ、手汗どうにかならんかな、とひたすら手のひらを拭っていた。

しばらくして、場内の明かりがふっと消えていき、いよいよ開演!

ところが幕が上がる気配がない。いつもなら暗転してすぐに入りSEが鳴り、それに合わせてメンバーがステージ上に現れるのに。あれ?と思った時、かかったままの幕にスポットライトが当たって、ソウ君のシルエットが浮かび上がった。弾き語りで始まったのは、最新アルバム『PORTRAIT』の最後に収録されている『ショウ・タイム』。(某野球選手を彷彿させる曲名だな……と思って聴いてみたところ、弾き語りから音がどんどん重なり合い、ジェットコースターの如くテンポアップするは曲調は変わるはのとんでもなく素晴らしい曲だった。)歌詞にある「上演だ」とともに幕が上がるという、なんとも粋な演出。歓声が巻き起こり、緊張が一気にほどけていくのを感じた。

ライブが始まる。
ようやく会いに来ることができた。
この場所で鳴り響く音が、直接鼓膜を震わせている。

いろんな思いが駆け巡って、堰を切ったように涙が溢れてきた。とはいえライブは始まったばかり。拍手が鳴りやまないうちに、『プラネタリア』『虹』『Particle Dreams』と、どんどん曲が紡がれていった。

会場にいる人たち皆もうわかっているであろうメンバー紹介を経て披露されたのは、デビュー曲『桜の季節』
今年は例年よりも開花が遅く、奇しくも季節が重なることになった。曲を聴きながら、20年前のこの日を想像してみたりした。ダイちゃんが「この日を迎えるとは……」と感慨深く話していたのが印象的。そうだよね、20年だもんね。産まれた赤子がハタチになる、決して短くはない年月だもんね。そりゃあしみじみしちゃうよなぁ。

とはいえ周年ライブだからといってへんにかしこまったような感じはなく(そう思うと10周年の武道館や15周年の城ホではそこはかとない緊張感が漂っていた)、メンバーも観客側もリラックスして終始和やかだったように思う。ソウ君の言葉を借りるなら、「もうね、あったかい!」って感じ。会場は暑かったけど!笑

『東京』『ミラクルレボリューションNo.9』『ブルー』と続き、またしてもゆるめに着席を求められ笑、しっとり始まったのは『月見草』『音楽』『音の庭』の3曲。アコースティックアレンジの研ぎ澄まされた音の響きが本当に美しかった……『音の庭』の、弦が切れてしまうのではと思うくらいバチン!と強く弾くギターが特に好き。

初めて聴いた時、とんでもない曲作ったな!と率直に思ってしまった『KARAKURU』は本当にとんでもない曲だった(褒めてる)。「何度も聴いてもらえる」「飽きのこない」「皆の居場所になれるような」音楽を作りたい、とMCでも話していたけれど、そうやってひたむきに追求し続けるからこそ、フジファブリックの音楽は聴くたびに驚かされるのだろうな。
『バタアシParty Night』『Feverman』と踊ったあと、ドラマチックなイントロで『星降る夜になったら』が続いた。この曲は毎度、大きな歓声で「皆この曲が大好きなんだ」と胸をうたれる。

そしてあっというまに最後の曲、『Portrait』。初めて聴いた時からグッとくるものがあったけれど、曲に対する思い、20年目を迎えるバンドへの思いを聞いて、さらに大好きな曲になった。最後にならされるギターのGのコードは『手紙』のはじまりと同じ音。彼等の「これまで」、そして「これから」を物語る美しい奏でに、割れんばかりの拍手が起こった。

大きなアンコールの手拍子(いつも思うけど、会場の一体感極まってるよね、アンコールの手拍子って)に答えるように聴こえてきたのは、『若者のすべて』のイントロ。たくさんの人が歌い継ぎ、たくさんの人に愛されている名曲。
かつて志村くんは、この曲についてこう言っていた。

赤黄色の金木犀という曲を作れて、この季節になって自分自身でもその曲に浸りながら街を歩く。なんてことができるのはなんて素晴らしいんでしょう。
そういう曲に今度のシングルの若者のすべてもなりそう。していきたい。

『東京、音楽、ロックンロール』より

時を経て、そういう曲になったよ、と、声を大にして言いたい。
そして曲がとても素晴らしいのはもちろん、フジファブリックがフジファブリックの音楽を鳴らし続けてきたからこそ、今たくさんの人に届いているのだ。ありがとう、と伝えたい。

アンコールの2曲目は、『LIFE』。もー、どうしてライブで聴く『LIFE』はこんなにも多幸感でいっぱいになるんだろう!!大好き!!!この曲に出会えたわたしの人生は最高に幸せだよありがとう!!!(急に語彙がなくなる)


最後の最後、ソウ君が「さっき話してて思ったのは、皆の居場所を作りたいと思って音楽をやってきたけど、結果として僕等の曲を聴いてくれる皆さんが、僕等の居場所を作ってくれたと思って。だから……」と。
この日彼は何度も何度も感謝を伝えてくれた。だからわたしも、おそらく「ありがとう」がくるであろうと拍手を構えて次の言葉を待っていた。待っていたのだけど、まさかの

「……もちつ もたれつ。」


さすがにその言葉がくるとは思ってもいなかったのよ。笑
ダイちゃんとかとーさんもずっこけたりツッコんだり謝ったりして笑、その姿を見て、「ああ、わたし本当にこの人たちが大好きだ」と思いを噛みしめた。笑
(終電に間に合う電車の時刻が迫っていたから、最後のMCは聞けず……。後ろ髪を引かれつつ渋谷の街を爆走した。笑)


……と、ここまで思いのままにライブの感想を書き綴ってきたけれど、本当に、最高の日に最高のライブを観ることができて、本当に幸せだった。

年齢を重ねるにつれ、殺伐とした日々をただただ過ごしてくだけになっていた。そんなわたしの毎日が、フジファブリックの音楽に出会ったことで少しずつ光が当たり始めた。

桜が咲き始めると『桜の季節』が聴きたくなるし、
夕立のあとには『ブルー』が聴きたくなる。
『陽炎』を聴きながら夏の思い出を振り返ってみたり、
雨上がりの週末は『虹』を探そうと空を仰ぐ。
真夏のピークが去り、夕日を眺めては暮れゆく夏に寂しさを感じ、
金木犀の香りがしたらあのイントロを思い浮かべて感傷的になる。
冬は白い息を吐きながらタッタッタラッと逃避行。
うまくいかなかったら『バウムクーヘン』とともに少し拗ねてみる。
迷った時は『透明』を聴いて、『破顔』を聴いて励まされて。
梅ガムの香りを感じては、春の雪を眺めては、季節の移ろいを感じる。
瞬きをしている今も、そう。
信じられないくらい、今、鮮やかな色彩であふれている。

「出会ってくれてありがとう」と、何度も言っていたけれど、そう言いたいのはわたしの方だ。
出会わせてくれてありがとう。
わたしの人生に寄り添ってくれてありがとう。
大好き!!
これからも「もちつ もたれつ」でいさせてください!笑

次は8月!早くも楽しみです♪