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【スタートアップ・オブ・ザ・ニュー・デイズ】

【スタートアップ・オブ・ザ・ニュー・デイズ】

 「世界に何が起きたのか」カブキ装束の男はアグラ姿勢のまま語る。彼の装束の中で刺繍のアゲハ蝶のエンブレムが羽ばたいた。

 「あの年は凄まじい年であった。月が砕け、大地が裂け、そしてコウライヤではシュウメイが起きた。…そういった、全てを数えるのも不可能な無数の縁が絡み合い、おおいなるカブキが地上レイヤーへと重なったのだ」

 「あれは世界に様々な影響を与えた…。ある者はカブキに開眼し、ある者は筆を折り、ある者は平行世界に女子高生の自分を見た。そして…ぴるす君たちは少し強くなり、少し愚かでなくなった。何やら組織立っている者らも居るようだ」

 「彼らの目的?そんな事など知らぬ。だが…放っておけばいずれ世界に混乱と破壊をもたらすだろう。このカブキの時代に、ピルストロフィを」



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 「ドーモ、ペルクナスです」「ピクラスです」「パトリムパスです」三人のニンジャぴるすが続けてアイサツをした。彼らの胸にはフォースハナビシのエンブレム。コウライヤ紋。「我らがコウライヤきっての武闘派、ぴるす三闘士と知っての狼藉か?」「…愚かなり」「貴様らには後悔する暇も与えないんですけお!」

 彼らが相対する男、グレーの改造法服に身を包む男がアイサツを返した。「ドーモ、プレジディングです。我々はぴるすを解放する者。諸君も類稀なる強きぴるすとお見受けする。我々の元に下り、共にぴるすの為の世界を作ろうではないか」

 「…ハハハ!何を言うかと思えば」「…我らはコウライヤのカブキの徒。何故この地位と安寧を捨てねばならない?」「無駄話は終わりだ!死んでくだち!」ペルクナスが雷の如き速度でプレジディングへと飛び掛かかる!




 「なるほど」サルファリックが床を撫でる。空間に残るカラテ、カブキ、そしてイクサ痕から過去のイクサを垣間見る。カブキの歴史を辿るように、勧進帳を紐解くように。

 「伏兵のアンブッシュを受け、パトリムパスが死亡」支援役であるパトリムパスを失ったぴるす三闘士はパワーダウン。…いや、それ以前の問題か。

 「ペルクナスのデン・ジツは弾かれ、更なる伏兵に殺された」カラテの差は歴然。「そしてピクラスは敵を影へ引きずり込み…」

 その時、部屋の隅の影から1人の男が現れた。黒いローブを纏い影に潜むニンジャぴるす、ピクラス。…その首から上は無い。「サヨナラ…!」そのままうつ伏せに倒れ込み、ピクラスは爆発四散した。

 次いで影から解放されたのは、法服のニンジャぴるす、純白のニンジャぴるす、そして断頭ギロチンマサカリを携えるニンジャぴるす。彼らはコウライヤの所属ではない。…間違いなく此度の下手人だ。

 「ドーモ、サルファリックです」瞬時に手を合わせオジギし、法服ニンジャぴるすが応じた。「ドーモ、プレジディングです。こちらはペナライズとピュリファイヤー」

 「貴様らは何者だ」「我々はぴるすを解放する、ぴるす正教会。飼い慣らされた豚を罰しに来たんですけお」「何を言って…」

 「カブキアクター…今はまだ時期尚早。サラバ!」三人はカラテを構えず、一目散に窓へと向かう!「逃がさぬ!イヨーッ!アブラ・ジゴク!」
サルファリックのシャウトに応えるように、ニンジャぴるす詰め所に粘体毒油が満ちる!「血気盛んな事だ!ケオーッ!」プレジディングは粘体毒油を蹴り、窓へ飛ぶ!逃げの一手!

 「逃がさぬと言ったはずだ!」粘体毒油が触手めいて伸びる!だが!「ケオーッ!」ペナライズがギロチンマサカリで斬り裂く!なんたるニンジャ筋力!そして!「ケオーッ!」ピュリファイヤーの手から放たれた白き炎が毒油を浄化してゆく!

 「審判の日はそう遠くない!ザンゲして待っていてくだち!オタッシャデー!」窓から飛び出した3人は色付きの風となり、夜の闇へと消えた。

 「おのれ…奴らは一体…!」



 「「「ケオーッ!」」」カラテシャウトが響き、ネオサイタマの夜景の中、ビルからビルへと3つのモノクロの風が吹き抜ける。「カブキアクターの介入により半ばで阻止されたが…裁くべき者はまだ数多といる!」

 プレジディングは走りながらその両腕をワナワナと震えさせた。「ぴるす正教会の名の元に速やかなる選別をせねば…!」その両目には涙が浮かぶ。「生けるぴるすに救いを!死せる家畜に罰を!」感極まり叫ぶ。叫びながらビルからビルへと跳び渡る。

 …その時。ビルの屋上に着地した3人の前に、一筋の影が舞い降りた。

 「…何奴!」月明かりに照らされるその姿。モノクロのカブキ装束。「き…貴様!その姿…!カ…カブキ…!」


 「ドーモ、ホワイトパロットです。ぴるす正教会について話して貰おう」



◆カブキスレイヤー第10代:ピルストロフィ・オブ・カブキエイジ◆

プロローグ:【スタートアップ・オブ・ザ・ニュー・デイズ】終わり




カブキ名鑑

(※これ以降、カブキ名鑑は新章版へと移行します)

◆歌◆カブキ名鑑#7【ペルクナス】◆舞◆
コウライ・コーポレーションの強力なニンジャぴるす。デン・ジツの使い手であり、敵味方入り交じる混戦下であっても優れたニンジャ精密性により敵のみを電撃で狙い撃つ。

◆歌◆カブキ名鑑#8【ピクラス】◆舞◆
コウライ・コーポレーションの強力なニンジャぴるす。ハデス・ニンジャクランのソウル憑依者であり、敵を影の中に引き摺り込んで本隊から分断させて殺す。

◆歌◆カブキ名鑑#9【パトリムパス】◆舞◆
コウライ・コーポレーションの強力なニンジャぴるす。周囲の味方へと祝福を与える「ディヴァイングレース・ジツ」により多人数でのイクサを優位に進める。

◆歌◆カブキ名鑑#10【プレジディング】◆舞◆
灰色のニンジャ法服を纏ったニンジャぴるす。ぴるす正教会という謎の組織の教えに従い、研ぎ澄まされたカラテによってコウライヤ所属のニンジャぴるすを殺して回っていた。

◆歌◆カブキ名鑑#11【ペナライズ】◆舞◆
漆黒のニンジャ装束を纏い、断頭用巨大マサカリギロチンの刃を軽々と振り回すニンジャぴるす。自我を矯正されており、全ての行動をプレジディングに委ねている。

◆歌◆カブキ名鑑#12【ピュリファイヤー】◆舞◆
純白の装束を纏うニンジャぴるす。白き炎を放つ特殊なカトン・ジツは不浄なるものを浄化する。ペナライズと同様に自我が矯正されているため戦闘外での自己判断は不可能。




K-FILES

!!! WARNING !!!
K-FILESは原作者コメンタリーや設定資料等を含んでいます。
!!! WARNING !!

カブキスレイヤーの新章、ピルストロフィ・オブ・カブキエイジのプロローグに当たるエピソード。謎めいたニンジャぴるす組織、そして謎のニンジャホワイトパロットが姿を表す。


主な登場ニンジャ

プレジディング / Presiding:ぴるす正教会のニンジャぴるす。サバキ・ニンジャクランのソウル憑依ぴるす。指揮能力の高さからペナライズ、ピュリファイヤー両名の指揮官を任されていた。作中では披露されなかったが、鎖による拘束とイアイを得意とする。サバキ・ニンジャクランは一説にはシ・ニンジャクランに連なる系譜であり、その優れた拘束術及び処刑術から罪人の捕縛から処罰・処刑までの全てを請け負っていた。

ペナライズ / Penalize:ぴるす正教会のニンジャぴるす。サバキ・ニンジャクランのソウル憑依ぴるす。小柄ながらも強靭なニンジャ筋力を誇り、巨大な斬首用ギロチンの刃に簡易な柄をつけたマサカリを軽々と振り回す。

ピュリファイヤー / Purifier:ぴるす正教会のニンジャぴるす。ホーマ・ニンジャクランのソウル憑依ぴるすでありカトン・ジツの使い手。彼の生み出す炎は白く燃え、毒や菌、汚れと言った不浄なる物を焼き尽くす。

ペルクナス / Perkunasコウライヤのニンジャぴるす。ゼウス・ニンジャクランのグレーターソウル憑依ぴるすであり、デン・ジツの使い手。ピクラス・パトリムパスらと共にぴるす三闘士を名乗っており、チームでの戦力はコウライヤのニンジャぴるすの中でも高位に位置する。

ピクラス / Peckols:コウライヤのニンジャぴるす。ぴるす三闘士の一人。ハデス・ニンジャクランのソウル憑依ぴるすであり、影の中へと自由に入り込む。他者や物を影に引きずり込むことも可能であり、敵の分断や隠密行動を得意としている。

パトリムパス / Patrimpasコウライヤのニンジャぴるす。ぴるす三闘士の一人。彼の使うディヴァイングレース・ジツは事前に契りを交わした味方へと作用しカラテや身体能力を増幅させる。影響下ではカラテが強まるだけでなくニンジャ感覚や耐久力、新陳代謝も高まるため攻守ともに優位となるがジツの使用者本人には作用しない。



メモ

今作はカブキスレイヤーの新章である「ピルストロフィ・オブ・カブキエイジ」のプロローグとなるエピソードだ。時が経ち現れる新たな敵、謎の組織、そして謎の男。主人公は一体どうなったのか、どこへ行ったのか。そんなオーソドックスな導入となっている。こういう情報をチラリと見せる導入部分というのは言ってしまえばありきたりだけれど、それでもやっぱりワクワクさせられる。まさしく王道だね。僕も大好きだ。

この章のコンセプトとしては、各作品が単発のスクリプトの様であった前章と異なり繋がりを意識した一つのストーリーとして組み立てる事だった。今後敵として暗躍するぴるす正教会を主軸に置き、彼らの企みを暴いて芽を摘むというエピソードを進めながら敵の本質へと迫ってゆく。その中で(元)マツモト・コウシロは何を見つけ何を果たすのか…。そんな話の繋がり意識している。また、繋がりをより強く意識させるためにあえて舞台となる地は一定の場所に留まらず、世界を転々とさせて冒険譚のようなフレーバーも足されている。

別の切り口の挑戦として、ニンジャぴるすに徒党を組ませることでキャラが入り乱れる戦闘描写の向上を目指した。今までの組織と反逆者という構図ではなく組織と組織、あるいは主人公と敵組織といった戦いを描きたかったんだ。また、1部のように敵が孤独なるニンジャぴるすだとコウライヤたちの名に警戒することはあっても実際に被害を受けた側として対策を取ることはしないだろう。それでは各自が各個撃破されて終わりだ。だからより強い敵を安定して出すためにもぴるす達には組織で動いてもらう必要があった。

こうして幕を開いた第二部では、コウライヤの面々であっても苦戦するようなニンジャぴるすが登場する。より厚みを増したストーリーと戦闘描写がいったいどんな結果をもたらすのか。世界はピルストロフィに陥ってしまうのか。真相を追う本編と箸休めに挟まる短編のコントラストを楽しみながらコウライヤの戦いを追いかけていこう!

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