無題asa

【シーンズ・オブ・カブキアクター】

空から世界を眺めてみれば、今を生きるカブキアクターの姿が見えてくる。貴方もカブキグラスを手に取り、彼らの生きる世界を覗いてみよう……。


【ノルウェー海海上:ホワイトパロット】

「イヨーッ!」恐るべきポン・パンチが、船を締め壊そうと目論む1本の巨大触手を爆散せしめた。「ケオーッ!?」恐るべき巨体の軟体ぴるす…プンナーは海面で悲鳴を上げる。「愚かなり、君に力を与えたのは誰だと思っている」ホワイトパロットの声が極北へと至る冷たい海に響く。

 プンナーというぴるすはかつてコウライヤが生み出し、そして海洋へと放った後に行方をくらませていたニンジャぴるすである。何の縁か彼はぴるす正教会の手先となり、極北へ向かうホワイトパロットの前へと現れた。「イヨーッ!」「ケオーッ!?」触手が爆ぜる。「イヨーッ!」「ケオーッ!?」触手が爆ぜる。「イヨーッ!」「ケオーッ!?」触手が爆ぜる。「…耐えるか、優れた耐久力だ。喜びたまえ、沢山カブキを味わえるぞ」

「イヨーッ!」「ケオーッ!?」触手が爆ぜる。笹船とタンカーとでも表現するべきであろうその体格差を物ともせず、ホワイトパロットは今や完全にイクサのイニシアチブを握っていた。「イヨーッ!」「ケオーッ!?」触手が爆ぜる。…だが、それでもその体格差は無視することはできぬ。致命打を繰り出すには触手のリーチが長く、ホワイトパロットは最接近カラテを叩き込むことが出来ぬ。そしてそれをプンナーは半ば無意識に自覚した。

「イヨーッ!」次なる拳が触手を爆散させる、その寸前。「ケオーッ!」プンナーは己の触手を自らの意志で切り落とした。そして口から水を噴出し、逃走を図る!「イヨォーッ!」ホワイトパロットのミエが空を裂き、空間を爆破する。「ケオーッ!」触手を更に自切し盾とする!そして再加速!ホワイトパロットは再度ミエを構え…「…アウト・オブ・レンジ」構えを解いた。

 プンナーの流体の体は水の抵抗を極力減少させ、巨体に似つかわしくない速度を発揮させる。もはやスリケンも届くまい。届いたとしてスリケン数枚で何が出来ようか。蚊に刺された程度の問題だ。プンナーは再度水を噴出し、速度を上げる。

……「プンナー君、無知な君をアワレに思う」ホワイトパロットは遠ざかるプンナーを眺め、掌で掬った。……気が付くと、プンナーは巨大な掌の中で立ち尽くしていた。エンキンホー・ジツ。「君はブッダの掌のマジックモンキーに過ぎぬのだ…文字通りにな」ホワイトパロットは拳を握りしめる。「ケ…ケオーッ!?」プンナーは必死に触手を伸ばしたが、全て潰れた。
……プンナーは握り潰され、死んだ。


【????? ????】

 何処かの地底奥深くに存在する古めかしき遺跡、そのさらに深奥、何らかの封印がなされた石扉をナイフで用心深く慎重に削り開け、二人のぴるすが踏み入る。「ハァーッ…ハァーッ…!見てくだち…!」白衣姿のぴるす、パーシュアーは興奮と驚きに息を切らせる。その部屋の中には無数の宝箱、壺、そして棺が並んでいる。

「これは実際古代ニンジャ学の歴史的発見になりえるんですけお…!」興奮冷めやらぬパーシュアーは喜び勇み、部屋中をくまなく調査し始めた。「そういうのは別に興味はないんですけお。俺は早くこのカワイコちゃんの中身が見たいぜ…!」探検隊装束姿のぴるす、トレジャーハンターのプレシャスもまた、別の興奮に浮かされながら宝箱の開錠を進めていた。

「へへ…この調査への同行を依頼された時は正気じゃないと思ったし、道中でお仲間がバタバタ爆発四散していった時はブルシットなモンに参加しちまったとも思ったけお…」元々はパーシュアーとプレシャスら雇われぴるす49人、計50人の隊であったが、この部屋に辿り着くまでに48ぴるすが罠によって爆発四散している。

「これは実際…実際凄い!この装飾、この壺、この棺…!実際…実際…!これはパンドラ…」パーシュアーの呟きを聞き流し、手元のキーツールを器用に動かす。カチリと音がし、箱が開く。「へへへ…ご対面っと…!」箱の中には綺麗に並べられた、極彩色に妖しく輝く無数の宝石。「……!これなら奴らも死んだ甲斐があるってもんなんですけお…!」プレシャスは宝石の一つ一つを保護布で丁寧に巻き取って懐に仕舞うと、パーシュアーへと振り返った。

「なあ、この宝石の分け前は…」……パーシュアーはいない。「…?オイ…どこ行ったんですけお…?」探検ニンジャナイフを構え、部屋を見渡す。…誰もいない。用心深く、寸前までパーシュアーがいた場所へと歩み寄る。「どういうことなんですけお…?アイツはさっきまでここで…棺とかを確認していた…」……彼の言葉は、突如石棺から伸びた腕によって遮られた。


【ネオサイタマ ショッピングストリート】

 休日のネオサイタマ。大きな道の左右に様々な店が連なるショッピングストリートには大人から子供までたくさんの人々が楽しげに歩いている。彼らは食事やファッション、雑貨、トイなど様々な店を見て回りながら、束の間の休息を楽しむサラリマン家族達である。路の端ではストリートミュージシャンがLAN直結したギターで論理演奏し、クラウンが大玉に乗りながら5本目のクラブをジャグリングする。日々を忘れさせるのどかな風景。…だが!

 BLAM!「アイエエエエ!?」
突如鳴り響く銃声と悲鳴!拳銃を持ち、バラクラバで顔を隠す男がアタッシェケースを抱えてストリートを走る!そしてその男の口元には…メンポ!ニンジャの強盗なのだ!「どけ!イヤーッ!」「グワーッ!」強盗ニンジャに押しのけられた老紳士は悲鳴を上げ転倒!「アイエエエエ!」パニックを起こし逃げ惑う市民!「ウワァーン!」両親とはぐれたと思しき少女が泣き叫ぶ!なんたる不運か、彼女のへたり込む場所は強盗ニンジャの進行方向!おおブッダ!哀れな少女へと差し向けられる救いの手はないのか!?

 その時!「イヤーッ!」「グワーッ!?」木製のジャグリングクラブが宙を舞い、強盗ニンジャの顔面へとめり込んだ!今や10本ものクラブをジャグリングするクラウンが手を止めることもなく大玉を器用に操り、強盗ニンジャへと近づく!「アイエエエエ!」少女は泣き叫びながら走り去る!「グ…貴様…ピエロ野郎…!」クラウンは全てのクラブを見事にキャッチし、礼儀正しく手を合わせる。「ドーモ、私はプランクです」


【コウライヤ社屋 プライベート茶室】

「…ドーモ、ホワイトパロット=サン。プロンプターでございます」フスマ越しに真面目そうなぴるすの声が和室に響く。ホワイトパロットはブラシを動かす手を止め、チャを溶くことを中断した。「ドーモ、プロンプター=サン。…要件は」「デンショウの折れた柄の件でございますけお」ホワイトパロットの眉がピクリと動く「…続けたまえ」「ハイ。柄の破片は我々が全て回収したものの、少なからぬ断片がカラテ衝撃により消失。また、強度の面からも柄を新たに造り直す方が相応しいかと思われますけお」「…そうか」ホワイトパロットにとって、それはさほど衝撃的な内容では無かった。ポープに折られたあの時、彼にはもはや自然に分かっていた。当然の事であるように。ホワイトパロットは再び手を動かす。「ならば、君たちクロコ・ピルス達の次なる任務は決まりだ」静かな茶室に小気味よい音が規則的に響き、器の中のチャが泡立ってゆく。「世界中から木材の情報を集めたまえ。柔軟でありながらも強い粘りを持ち、しなやかでいてそれで頑丈な木材を。それも、コウライヤの家宝に相応しい逸材を」「…御意にございますけお」


カブキグラスに映る風景は不定期かつ低頻度に移り変わります。ふと思い出した時にでも気軽に覗いてみてください。

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