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『虎に翼』第18回 特別扱いをしてやる?なんという傲慢だ

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虎に翼応援クーポン(1ヶ月無料)
2024/04/08 22:30

2024/04/30 23:30

 クーポン配布します。今回は好きなので気合を入れていきます。よろしくお願いします!

「空気がうまい!」
 そう轟が叫ぶところから始まります。
 ここで轟のトレードマークである髭のことでも。日本では歴史的にみて、男性が髭を伸ばすことは当たり前で、身分の高い男性は伸ばして整えていました。それが江戸時代以降、下火に。明治時代となると、当時の西洋を真似て伸ばしはじめます。大久保利通が典型例ですね。それもまた人気が低下し、昭和初期ではあえて伸ばす轟はバンカラ、男らしさをアピールしているのでしょう。去勢されると抜ける髭は男らしさの証であり、宦官制度のある国では伸ばすことが特に重視されました。
 そんな轟のマッチョぶりをおさらいしつつ、参りましょう。轟は荷物を運ぶことをアピールしています。幼い光三郎の荷物を持つところは好青年です。涼子のおつきである玉の荷物も持つところからして、子どもだろうが、従者だろうが、見下さないフラットな長所がありますね。
「男の役目を果たすまで! ハハハ!」
 そう笑う轟の理解はシンプルで、野生的というか原始的かもしれない。男=力が強いというシンプルな図式があって、そこに従おうとしるのでしょう。
 よねはそこで、男も女も関係ないとチクリ。これも本質なんだよな。フェミニストが散々突っ込んでいる。男はレディのバッグを持ったりドアを開けたりするけど、農婦が重い束を運んだり、女商人がでかい荷物を運んでいるときはどうして手伝わんのか? 彼女ら見れば女は力が弱いと言い切れないんじゃないの? そういう議論はあるんだな。轟は、今日はハイキングだからとよねとの議論を回避します。
 

優しくしても、寅子には通じない


 ここで寅子が靴擦れを起こしています。新しく靴を買ったことが裏目に出ました。花岡はここで寅子の足の怪我を治します。跪いてヒロインの足を触る場面は、先週ラストでよねが体現しています。あの場面に対する反応をみて、結局萌えとはシチュエーションに対してのものであり、男だ女だ、あまり関係ないんじゃないかと思いましたよ。あのよねと比べると、花岡は落ちる。というのも、花岡の下劣な本音を昨日見ているから。寅子も笑顔がひきつっているし、あまり喜べておりません。むしろ猜疑心だ。

 ちょっとハイキングの補足でも。轟にせよ、花岡にせよ、田舎は空気が綺麗だと言い張っておりますね。当たり前なんだけども、産業革命以前は野遊びに空気清浄は期待されておりません。景色が違うとか、涼しいとか。そのあたりですね。このハイキングで気分転換というのが、近代以降、かつ西洋流を真似ていることは考えたいところです。日本でも古来から物見遊山はある。それこそ『光る君へ』の石山寺詣がそうですね。そういう日本の伝統とは、このハイキングはちょっと違う。モダンなものだという意識があるのです。
 そういう西洋流の価値観をふまえつつ、先に進みましょう。

女の武器は料理だと?

 轟が「ヤッホー」とはしゃぐ中、ここでランチが披露されます。涼子の洋風。梅子の和風。寅子も持参していますが、ここで「ごぼうを切っただけ」と馬鹿正直に答えるところが実に寅子らしいですね。ここで梅子が涼子を「ハイカラ」といい、自分の料理を謙遜しています。ここで持参していないよねと香淑に目配せしつつ、お二人の手料理が食べたいと言い出す小橋。よねが「あ?」と詰め寄ります。ここで料理は女性の武器と返すわけですが。
 それ、全然日本の伝統じゃないし、普遍的なことでもないから! 
 日本では江戸時代初期あたりまで、男性も包丁を握ります。むしろ自分でうまいものをお出ししてこそ洗練されているだろうという価値観がありまして。細川藤孝(幽斎)は「料理できない男とか話にならないでしょ」と言っておりますし。伊達政宗も自ら料理しています。徳川家康の寿命を縮めたとされるあの天ぷらを作ったのも、茶屋四郎次郎とされています。身分の高い人だけの話でもなく、戦う時代が続くとなると、衣食住くらい自力でどうにかしないと危ないんですよね。
 それが江戸という近世と、半端に西洋流でも取り入れた明治以降のせいですかねえ。こういう舐め腐った日本の伝統と関係ないことが根付いてゆくと。
 よねは性格的に手料理を作らないとしまして、香淑は祖国の料理を作れない可能性も考えられます。今では韓国料理や食材がおなじみで、洒落たものとしてむしろカルディや韓ビニで買い求める時代。でも長らく差別の対象で、キムチがヘイトの象徴とされたのです。香淑が韓服で卒業式に臨めないこと。料理を持ち込めないこと。それは時代考証にそった表現にせよ、すごく悲しいと思ってしまいます。
 花岡はここで、彼女たちには料理なんて武器はいらないという。ここでは「うまい!」と浮かれている轟の方がはるかに好感度が上がる。光三郎は「お母さんのおにぎりが一番好き」と微笑みます。その笑顔に心打たれているような梅子の顔よ。香淑はその奥にある何かを感じ取ったようです。香淑はとても優しくて感受性が強い人で、何かあるとブラウスを着た彼女の手が、相手にそっと寄り添っていることがわかります。

男にとって「モテ」は大事だってさ

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