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【特集:みんながつながるケアのまち③】デジタルサービスの視点から~在宅ケア支援アプリ『ケアエール』~

※この記事は「ケアラータイムズ 第5号」(2023年4月号)からの転載です。

2025年問題を目前に、「超高齢化社会」となる日本に住む私たちにとって、介護の問題はもう待ったなしの状況です。これまで家庭に丸投げされてきたケアから、まち全体、社会全体でのケアに転換していかなければ、日本社会は立ち行かなくなるでしょう。私たちはどんなまちを目指していくべきなのか、参考となる先進事例や新しいシステムはあるのか、さまざまな視点から、目指すべき“ケアのまち”について考えていきます。

在宅ケア支援アプリ『ケアエール』
SOMPOホールディングス(株)とSOMPOケア(株)が開発した在宅ケア支援アプリ(無料)。スマートフォン・タブレットで利用可能。ケアが必要な本人、家族・親戚、ケアマネージャー・医師・看護師などの専門職が、生活・体調の記録や介護情報を共有することで、スムーズなコミュニケーションが叶うツールとなっている。2022年度「グッドデザイン賞」を受賞。ダウンロードはこちらから。

◆回答者・韓承娥さん(SOMPOケア(株)在宅ケア支援アプリ『ケアエール』 開発担当)
◆聞き手・吉良英敏、ケアラータイムズ編集部

Q 韓さんは在宅ケアを支援するアプリ『ケアエール』を開発されたそうですね。アプリの特徴を教えてください。
A はい。私たちは、ケアが必要なご本人のことを“大切な人”と呼んでいます。大切な人や家族が安心して使える、クローズドなコミュニティがつくれるアプリになっています。「トーク」「体調」「カレンダー」というタブがあり、体温や血圧、食事の量といった基本的な健康情報はもちろん、嬉しかったことや気になることなどの心情まで共有できます。これまでは家族と専門職が個々にケアしていましたが、大切な人をケアする人たちがゆるくつながって、ケアラーの孤立も防いでいます。オンラインサロンも開催していますので、同じ境遇の仲間をつくることも可能です。すべての方に使っていただきたいので、アプリは無料です。

Q 会津若松でたくさんの方が利用されているそうですが、具体的にどんな効果がありましたか?
A 会津若松市の地域包括ケアセンターのご協力で、アプリを実証させていただきました。大切な人は一人暮らしで、家族が遠方にいらっしゃる場合も多いです。コロナ禍でなかなか会うこともできず、ご本人も家族も不安が募り、心穏やかでいられないことも。しかし、『ケアエール』で日常を共有することで関わりが増え、大切な人が元気を取り戻せたり、お互いに安心感が生まれたりしました。具体的には、「大切な人との思い出が増えた」「関係者と関わりやすくなり、心の余裕ができた」と喜びの声をいただいています。会津若松で検証できた効果としては、「遠距離介護へのサポート」「孤独・孤立対策」「地域包括ケアのツール」として役立ったことが挙げられます。一度試しにお使いいただくと、便利でずっと使ってくださる方が多いですね。ちなみに、個人の方のご利用だけでなく、紙の連絡帳がわりに『ケアエール』を活用されているデイサービス施設もあります。

Q 開発・実証時に、どんな思いを込めてアプリをつくられたのですか?
A やはり「ケア」についてとても深く考えさせられました。ケアって「暮らしの伴走」ですよね。ケアする人も、ケアされる人も、今までの暮らしを諦めることなく、穏やかに生活を続けることが一番の望みなのではないでしょうか。だからこそ、血圧よりも「日々の小さな喜び」を共有できることが大事なんだと思います。言葉としての「地域包括」ではなく、真の意味での「ケアのまち」が目指せるよう、「暮らしの伴走者」をまちにいっぱいに増やしたいと考えています。このアプリがその一助になれたらいいですね。

Q 『ケアエール』は、今後どのように進化していくのでしょうか?
A 私たちは「デジタル在宅ケア」を構想しています。『ケアエール』に機能を追加し、位置情報をもとに発災情報を発信したり、自動運転バスのルートを検討したり、介護保険申請の手続きができたり。多くの自治体で進められているデジタル化やスマートシティへの取り組みに対応したサービスを検討しています。デジタルをケアに活かすには、まずはデジタル端末がすべての家庭に行き渡っている必要があります。いわゆる「ガラケー」を使い続けているヘルパーさんや、家に電話がないご家庭もあるので、ぜひ行政から端末を提供していただきたいです。私たちは『ケアエール』をはじめ、デジタルを活用した在宅ケア支援を通じて、地域に暮らす方々のウェルビーイング(心身ともに満たされ幸福であること)実現を目指していきます。

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