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夜更けのたま手羽

夕食はすっかりすんだし、子供はもうそろそろ寝る時間。それなのになぜこんなタイミングで?というような時間に蒸しパンだのドーナツだのを突然につくり出す。母はそういうひとだった。しかも、蒸しパンには私の嫌いなレーズンをたっぷりと入れて。
あるとき私はそんな母に文句を言った。
「私、レーズン嫌いだからさつまいもを入れて」
と。そしたら母から返ってきた言葉に私は軽く衝撃を受けた。
「別にあんたのために作っていない。私が食べたいから作っているだけ」

え?母親が作るお菓子といったら、それは子供のためのおやつじゃないの?
え?自分のため?そうだったの?

思い立ったら作らずにはいられない。
それが夜更けだろうと。
そんな変なところが母ゆずりの私、明日も仕事だというのに、ついうっかり始めてしまった。キッチンでは今、マーブルコートの26センチのフライパンがコトコトと音を立てている。
それを聞きながら先日買った吉本ばななの『とかげ』を読んでいる。
コトコトコトコト…湯気が甘辛い味噌の匂いを部屋の中に揺らす。

料理上手のリエちゃんが毎年開催している味噌作りのワークショップに2年前に初めて参加して作った味噌は、来年の2月には3年ものの味噌となる。年数が経つほどに色が濃くなってゆく味噌は今はカカオ100%のチョコレートのように深い色になっている。味噌がこんなふうに育っていくものだとは知らなかった。旨味があって、自分でいうのもなんだけど、上出来だ。
その味噌の中で手羽元と卵がコトコト揺れている。卵にもいい感じに色がつき、そろそろ仕上がる頃。
山椒をふって味噌たま手羽丼にしてもきっと美味しいだろうなぁ。

さて、まずはビール、ビール〜


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