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映画版BEASTの太宰死後について(お題箱から)

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※映画版BEASTのネタバレを含みます。

頂いたお題はこちら:
映画版beastの太宰死後について&織田が何故小説を書いている世界と断言できるのか

映画でエンドロール後に敦くんが中也に「探偵社を攻撃するのも太宰さんの手の内だと思いますよ(的なニュアンスの事)」と言っていましたがそれは本当に太宰の手の内なのでしょうか?
太宰が織田にもうそちらを襲わないみたいなことを言っていたのに中也達が探偵社を襲うとそれは嘘をついた事になってしまいますし、もしかすると織田が死んでしまうor人を殺してしまうor子供達が死んでしまう(探偵社の誰かが死ぬ)かも知れません。
そうなると織田は小説を書かないと思うんですよ。
それを考えたら太宰の手の内なのは違和感がありますし、いくら太宰でも自分が死んだ後も全てを思い通りにできるのかなと思ってしまいます。
また、太宰が死んだ後にもしかしたら織田に何かがあって小説を書かなくなるかもしれないのに何故いつまでも小説を書いていると断言できるのでしょう。
そんなに織田が小説を書いている世界にこだわるなら織田が満足するまで小説を書き続けられるように生きて裏から手を回さなくてはいけないと思うのですがどうお考えか教えて欲しいです。長文すいません。


お題頂きありがとうございました!!
あのー、まずはじめに、まったくの同感です、はい。
反論の余地ないので、そっくりそのままこのお題を朝霧先生に投げつけてやりたいです。

明らかに生きたまま裏で手を回す方が確実性は高まりますよね。
なぜ敦と芥川に本のことを伝えるという回りくどいことをしたのか、さっぱりわかりません。
太宰にとっての目的が「小説を書ける世界を織田のために残す」という一点に集約されていたのだとしたら、もっと別の手段をとった方が効率的だと思います。
しかし以前別の考察で書いたように、太宰の真の目的が「あり得たもう一つの可能性の追求」なんだとすると、太宰自身も死という救済を経験したがっているはずなので、死に急いだというのは多少しっくりきます。
全ての「あり得たもう一つの可能性」を同時に存在させるために描かれた世界がBEASTなんだと個人的には思っています。
太宰にとっては、織田>自分でもなく、自分>織田でもなく、二つのことが同価値だったのではないかなと。それは中也とかも一緒で中也のための「もう一つの可能性」も、太宰にとっては同価値だったんだと私は思ってます。ただ中也にとってのもう一つの可能性を実現するには、中也を徹底的に孤立させるという手段が必要なので、見た目上すごいハードシップ高い出来上がりになってるっていうだけで...

ということにして話を畳んでしまいたいところですが、これでは考察もへったくれもないので、太宰の死後について推測できる限りのことを推測してみようと思います。推測と言いつつ、基本的には妄想に過ぎませんし、あまり自信はありません…

ドストエフスキーという異物

はじめに、映画版にはドストエフスキーという異物が投入されていて、その後の展開においては相当鍵を握っているので、まずはドスの動きについて考えてみます。回り道になり、すみません。

まず、何故ドスは可能世界の存在とそのルールを知っているのか、という点ですが(正直わからないので)ドスはマフィアビル屋上での会話を盗聴していたために、これが可能世界であり本がただの排水溝であることを知った、ということにしておきましょう。ドスとの情報格差はない前提になります。

そうなったとき、ドスがBEAST世界で一体どこに目的を据えるのか、というのが問題になります。
可能世界では本を奪う戦いは無意味です。
本に書き込んだところでドスの目指す世界は実現しないどころか、すべてが無に帰すわけです。なんとか本以外の方法で目的を実現したとしても所詮現実世界ではないので、正直あまり意味がありません。
頑張っても無価値。
だとしたらもう暇つぶしする他ない。
特に暇つぶしのアテがないのだとしたら、太宰がやろうとしていた「もう一つの可能性の追求」というのを面白半分に踏襲して、ゲーム感覚でやりかねないなと想像しています。
現実世界で選ぶであろう選択肢とは反対の選択肢を自分も選ぶ。
現実世界での「本を奪って世界を書き換える」という目的の反対、「本を守り誰にも書き換えさせない」という目的。
そしてもし現実世界で「異能力者のいる世界を消滅させたい」と思っているならそれの反対である「この世界を守る」という選択肢。
つまりドスくんは横浜を守る側に付いてくれるのではないかなと。
映画の最後でドスが言った「世界を救うための戦いです」という台詞の背景にはこんな意図があったりするのかもしれないなぁと思っています。

探偵社を襲うことは太宰の手の内なのか

さて、話を戻しまして。
マフィアが探偵社を攻撃するのは太宰の手の内なのか、という点です。
まず、中也が暴れ回るのは太宰の手の内だと思います。
むしゃくしゃして暴れ回った、と中也は言っていました。
首領が私情で暴れて、マフィアという組織の立場を危うくしたわけです。
マフィア全体には新しい首領を歓迎できないムードが広がってしまっている可能性がありますし、政府からの監視もキツくなっているはずです。
それもこれもすべては中也を孤立させるための手段だと私は思っています。

中也には孤立してもらう必要がある。
マフィアも仲間も中也から剥ぎ取る必要がある。
そうでもしない限り、中也は兄と共に生きるというもう一つの選択肢を選ばない。
太宰はそんなことを考えていたのではないでしょうか?

結果的に太宰の死後、中也は家族よりも私情を優先しました。
中也は確実にヴェルレエヌに近づいていると思います。
やるべきことをやる、ではなく、やりたいようにやる中也が完成しています。
おそらく太宰の思惑どおりに。

マフィアにはもう森も太宰もいません。
もしかしたらストブリで姉さんも失ってるかもしれない。
そんな中也が頼れるのは今となっては敦と鏡花だけ。
(旗会の立ち位置がまだ全然掴めないでいるので、妄想には登場させません…)

しかし、敦は本当に探偵社を襲うという選択をするのでしょうか?
太宰が命をかけてまで守りたいと思ったものを壊しに行くわけです。
普通に考えれば、中也の命令より太宰の遺志を尊重するのでは?
敦がマフィアにいたのは太宰さんがいたからだと本人も言っていますし、太宰を慕う気持ちはあっても、中也やマフィアに対する忠誠心がそこまであるとは思いません。

敦の原動力になるのは、恩師である太宰の言葉、鏡花、死への恐怖、院長の言葉のどれかな気がしています。
もし敦が、探偵社を襲うことも太宰の手の内=遺志だと本気で考えたなら、探偵社を襲うのもありえるのかもしれませんが、そうするとどうしても矛盾が生じます。
太宰が守ろうとしたものをなぜ破壊するのか。

そう考えると、迷い、からの裏切りという道筋も見える気がしています。
探偵社に向かったら丁度ドスが放った刺客が現れ、そこから敦と芥川の共闘に繋がる、とかありそうな展開です。
その後、敦の気持ちが固まって探偵社を襲うのをやめるのも十分考えられます。
探偵社を襲うことが太宰の手の内なのだとしたら、敦と芥川が共闘したり、敦が中也を裏切るところまでもが太宰の手の内なんではないでしょうか。

しかし、仮に共闘してドスの刺客を倒したところで、3人ルールには別途決着を付けないといけないんですよね…
ドスの刺客を倒したところで、ドスに手が届くわけではない。
太宰なき今、ドスと対等に渡り合えるチェスの相手はいない。
…ルールの変更できませんかね、フョードルさん?

誰かが死ぬという強硬手段以外でも、交渉の余地はある気がしてます。
ドスの異能には脳の機能を改変する能力があるっぽいですよね。
ホーソーンは芥川のこと忘れてたし、同じように本のことを異能で忘れさせたりすることはできないのかな?
その代償はもちろんドスの駒になること、なんだけれども。
ドスが横浜を守る側に付くという確証めいたものがあれば、どちらかがドスの手下になる代わりに本についての記憶を消してもらう、というような展開もありえない話ではない気がしてます。
織田先輩、交渉とか上手そうだしそこんとこうまくまとめてほしいです。

世界の構造自体が反転することへの布石

個人的には、中也がヴェルレエヌとともに世界を破壊する側になり、一方でドスが世界を守る側につくという未来を想像していて、言ってしまえばそれって世界の構造自体が反転することなんですが、これまでの物語はそれの前準備だったのかもなと妄想したりしています。

太宰の息がかかっていない部分って基本的に反転してないと思うんです。
太宰が施した反転も、彼が自ら決断を下す部分で反対の選択肢を選んでるというだけで、誰かの計画を覆すような形での干渉はしていないはず。(例えば、ヴェルレエヌやミミックの来訪を阻止する、とかそういう形の働きかけはしてないと思う。)
BEAST世界の始まりは、太宰が選択をいくつかちょちょいと変えただけのはずなのに、それがいつの間にか最終的に世界の構造そのものが反転することに繋がってた、ということだったりするのかもしれません。
あな恐ろしや。

ちなみに小説版の最後の方に芥川がこんなこと言ってます。
「そう遠くない未来、この世界は消滅するのかもしれない」
なんか…これが真実なような気がしないでもない…

何はともあれ、続編で色々回収できるといいですね。
個人的には続編とても見たい気持ちになってます。

以上、ほとんど妄想しか語ってないので、お題への回答として満足頂けるものになってるか自信ありませんが、自分の精一杯を書いてみました。

お題を頂き、ありがとうございました!!



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