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ドスくんの意識の問題を紐解いてみる

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
ヤングエース2024年4月号および5月号のネタバレがあります。単行本派の方は閲覧ご注意ください。

本誌を考察したりドスくん関連のお題を考えている中で、個人的にクリアにしておきたいなあと感じたことがありますので、ちょっと取り上げて記事書きます。

前々からたまに話してましたが、ドスくんの意識の問題ってなかなか難しくてですね。
ドスくんの異能を検討するときにどうしても引っかかってくるのがDAで出てきた「罪と罰は仲良しなんだ」というシーン。
ドスくんの異能は乗り移りである、など異能の候補は色々ありますが、どんな異能であるにせよ、DAでなぜドスくんの異能は本体を攻撃しなかったのか、というところの説明まではカバーしきれない。なので今回の考察はそこに重点をおいて進めていきたいと思います!

■意識の在り処

主と異能の意識の問題ってとても重要だと思うので、今回もこの話から。何度でもやりますよ~。

【意識が主にあるケース】
異能力って普通、主が意識を持っていて、異能が主に従属する形で力を発揮しますよね。

例外は異能継承された場合で、異能が前の持主の命令に従っていることがある。
影の仔は辻村娘に継承されたものの、異能は辻村母の命令しか聞かない感じですし、夜叉もはじめのころは母の携帯という媒介を通さなければ指示を出せませんでした。
どうやら普通は異能そのものが意識をもって自律的に行動することはなさそうな感じがします。

【意識が異能にあるケース】
そんな中で、主が意識を失う代わりに、異能が意識を持ち始めるというパターンがあります。

澁澤は主が不在となった後に異能が分離して意識を持ち始め、自律的に行動し始めました。
死後に異能が分離して存続したのは、澁澤自身が「異能を分離させる力」を持っていたから。通常の異能は死後分離するわけではないようです。

ランボオも異能生命体が生き残ってましたが、それもランボオが「死者を使役する」という異能を持っていたからこそ。普通の異能は死後に主と共に消えるとストブリには書かれています。

主が生きているのに、意識の主導権が異能に移ってしまうケースもありますよね。
55minのガブは異能側が「死にたくない」という願いを持ってしまったために主から意識と肉体を奪っていき「意識の逆転」と呼ばれる現象が起こっています。

ドスくんが演じた二重人格の芝居も、ガブのケースを踏襲していて、主の意識が薄れ、異能が意識と肉体を乗っ取るという「意識の逆転」現象を演じていました。
しかしこれはドスくん本人が「陳腐な筋書」と言っている上に、主と異能のふたりは「なかよしではない」ので、二重人格は偽りの可能性が高そうです。

【霧の中での意識の在り処】
霧によって異能が分離すると、異能は主に従属せず、澁澤の命令に従属するようになります。
このときも異能はおそらく意識を持っていません。だから異能は無作為に攻撃し、コミュニケーションも取れなければ、喋ったりすることもない。(エリスちゃんだけは喋ってましたがあれは異能のデフォルト設定って感じですかね?)

そんな中で、ドスくんだけは違っていました。
ドスくんの異能は主を攻撃しないだけでなく、普通に喋る。主と交互に喋る。ドスくんだけは、主も異能も両方とも意識をそれぞれ持っているように見える。

だとするならば、ドスくんだけなぜこんな違いが生まれるのかを解明しなければ、ドスくんの異能の実態には近づけないのではないでしょうか。

■意識と空間を操る異能

さて、ここからは新たに浮かんだ妄想の話です。ドスくんの意識がふたつあること、今の本誌の展開、このふたつを同時に綺麗に説明できる仮説がほしい。そう思って捻り出した案で、自信は特にありません。
本誌の内容をそのまま見てそのまま受け取っても再び偽装にひっかかって叩きのめされるだけだろう...と今回学びましたので、ガラッと見方を変えて、挑戦的な内容にしてみたつもりです。

まず、今回ドスくんの異能について考察していて少し気になったことがあります。

シグマがドスくんの情報を読み取っていたとき、一番最初に流れてきた記憶が「二重人格の芝居」の情報でした。ドスくんから見たシグマの映像のやつですね。
だけどよ?これって…果たして秘密なんだろうか?

シグマが交換したのは「秘密ぜんぶ」のはずです。だけど流れてきているものはもしかして記憶ぜんぶになっている...?と気になってしまいました。
シグマが受け取ったものが「秘密ぜんぶ」ではなく、「記憶ぜんぶ」なのだとしたら…
そこが仮説のスタート地点です。

シグマに流入している情報が、シグマの指定した秘密だけでなく、記憶すべてなのだとしたら、今回の記憶の流入はシグマの異能によるものではなく、ドスくんの異能によるものだったという可能性が出てきます。

では、ドスくんの異能の発動条件とは?
今月の本誌の流れを見る限り、ドスくんの死というのが発動条件のひとつっぽいですが、ドスくんの血に触れること、というのも条件としてあるのかもしれません。

では、シグマがドスくんの血に触れた瞬間とは?
もしかしてドスくんの右手に触れた瞬間だったりしないだろうか。
ドスくんの右手に血が付いているのはアニメでは明らかです。漫画は巧妙にカモフラージュされてますが、シグマがドスくんの左肩を銃で撃った後にドスくんは傷口を右手で覆っています。なので漫画のドスくんの右手にもきっと血は付着している。

だとしたら、シグマはドスくんに触れた瞬間に、自分の異能ではなくドスくんの異能を発動させてしまったのではないか。
ふたりの異能発動のきっかけが同じ行為によるものなのだとしたら、異能の偽装の方法としてはこの上ない。

では、もしシグマがドスくんの異能を発動させていたとして、その異能とはどんなものなのか。

ドスくんはマフィアに捕まった時に、自分の異能は「空間と意識を操る異能」だと言ってましたけど、この情報に本当のことが紛れていた可能性はある気がします。
なぜなら、今シグマの身に起こっていることは、シグマの意識がドスくんの「意識の空間(記憶の空間)」の中に閉じ込められてしまっている状況だという風にも捉えられるからです。

わかりにくいと思うので図にしてみました。

まだまだ情報不足なのでひとまず発動条件を2段階に分けてみました。血に触れることでターゲットの意識がドスくんの「意識の空間」に閉じ込められる。ドスくんの肉体が死を迎えることで、意識を失ったターゲットの肉体への乗り移りが発動する。こんな感じを仮の姿として想定しています。
手傷を負ったのは「あの男」以来だとドスくんは言っていますので、血に触れるという条件はそう簡単に満たされないものであると解釈できます。

ドスくんの異能は、人の意識を食べて自分の中に閉じ込めてしまう。そうして意識を食べて空っぽにしたターゲットの身体を、ドスくんの意識が代わりに乗っ取っていく。
だとするならば、シグマの意識が今ある場所は、シグマ自身の肉体の中ではなく、既に肉体から分離してドスくんの意識の空間の中にいるとも考えられます。それこそ、大きなドスくんという存在の中に、その掌に、乗っかってしまっているような状況。

もしかしたら「意識の空間」はドスくんの異能の本体のような存在になっているかもしれません。本人の情報がすべてコレクションされている場所。
そこにあるのは単なる情報の羅列だけど、全てが合わさるとドストエフスキーという人間の像を結ぶ。そうして像が結ばれたものが、ドストエフスキーのカタチをした異能生命体のように見えるのかも。

異能が意識そのものである、あるいは意識を操る異能を持っている。そう仮定すれば、ドスくんの異能が霧の中で自分の固有の意識を保ち続けることができたことに対する説明が可能になるんじゃないかなという気がしています。

「意識の空間」というのは、いわば「意識の監獄」でもあると思います。史実のドストエフスキーが大好きな引きこもりの部屋、たとえば地下室のような場所。
だとすれば「狭き部屋」と称された場所は、ドスくんの異能のことをも指していたと考えられるでしょうか。

こういう異能は、他者の思考や人間性を消去して否定し続けるような異能であって、己の意識だけを尊重していく、己だけに閉じこもっていく異能という見方もできます。自意識だけが永遠に拡張していく異能。
そして「血」というのはキリスト絡みですし、死は史実のドストエフスキー自身が体験した臨死体験とももしかしたらなにか繋がりがあるのかもしれません。そもそもドスくんは死の家の鼠の頭目であり、死の家とは史実の著作に照らし合わせれば監獄という意味になります。

ドスくんの異能について考えていた中で、どうしても気になってしょうがないもうひとつのポイントが、始まりのきっかけはなんだったのか、という点。
一番最初の本物のドスくんは、死んで初めて自分が異能者だとわかったのでしょうか。異能というのは主が死ねば一緒に消えるのが基本のようですが、死を発動のきっかけにしてすぐに異能の乗り移り先が見つかれば、異能を使役するために必要とされる人間の精神も消えずに継続していけるものなのでしょうか。そのあたりはまだなかなか想像がつきません。

ということで、ちょっと考え方をぐるりと方向転換して攻めてみた考察でした。
まだなぞときは始まったばかりですので、完全に解明されるまではこんな感じで色々な案を出していけたらいいなと思っています。


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