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お酒と《羊》について(お題箱から)

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※お題箱に頂いたお題への返信です。

頂いたお題はこちら:

文ストの世界では、未成年者飲酒禁止法にあたる法律は存在しないと思っているのですがどうなんでしょう?

国木田が、谷崎(18)が昼間から居酒屋に行っていたと早とちりした際飲酒を咎めていましたが、未成年の飲酒習慣による身体への悪影響を説いていて法律に違反するからといった理由は彼の口から出てこなかったのが気になります。
もし法で未成年の飲酒が禁止されているとしたら、国木田ならそこにも焦点を当てかなり怒ると思うのです。。

sideAで織田が太宰(16)の前での喫煙を躊躇うシーンがあったので、飲酒喫煙共に未成年者に悪影響だという価値観は変わらないと思うのですが、軍警のある世界ですし大戦後ですしこちらとは少しずつ何かが変わっていたりするのでしょうか?

マフィアを除きそもそも未成年のうちから飲酒している人物がいなさそうで特に描写もないので分かりませんし、この小さな違和感を突き詰めたところで何か重要なことが明らかになるわけでもないのですが……

お酒といえば、羊のメンバーが危険を冒してまで酒を盗みに行ったのも気になっているんです。
羊は孤児で構成された集団でありながら横浜の一等地に拠点を構えており、sb白瀬の時計からも結構お金には不自由していなさそうな印象を受けるのですが、それなのに酒は盗みにいかないと手に入らない状況がうまくイメージできなくて……
未成年には売ってもらえない(=法律がある?)とか、盗んだ酒が余程高価だったとか、そういう事情があるのでしょうか?
《羊》の生活、主に衣食住や経済事情って結局どんな感じだったのかあまり想像がつきません……


お題を頂きありがとうございます!
学校制度とか飲酒法とか、気になってる方多いみたいですね…
世界観自体、現代と大正時代がミクスチャされててあんまり型にはまってない感じします。

お題に書いてくださった国木田と谷崎のやりとりは『ある探偵社の日常』に出てくるやつですね。そして国木田が谷崎に注意したときの文言がこちら。

十八歳が仕事をサボって昼から飲酒か?未成年飲酒の悪影響は統計学説によって様々だが、テストステロンと呼ばれる脳ホルモンの分泌にアルコールが影響を及ぼすのは確実とされている。と云うか統計など待たずとも、そんな年から酒ばかり飲んでいると、数年のうちにここにいるワカメ脳みたいになるぞ!

文豪ストレイドッグス 探偵社設立秘話(ある探偵社の日常)

ふむふむ。慥かに、身体への悪影響だけ注意していて、法律云々の話はしてないですね。法律で禁止されているからを理由にしないのは意外といえば意外ですが、国木田さん健康オタクなところありますものね。首吊り健康法とかメモするくらいなので、健康オタクとしての一面が暴走してこういうこと言ってるのかな?という気も個人的にはしています。

会議後、国木田と谷崎が深夜営業の居酒屋に入りますが、そのときに谷崎が注文したのは、酒杯代わりの炭酸飲料なので、未成年が呑んじゃいけないという暗黙のルール自体はありそう…

だけど気になるのが、アニメ3期の一番最後に執り行われた船上パーティーでしてね。敦くん、シャンパングラス持ってるじゃないですか。18歳だから未成年のはずじゃないですか。...アウトでは?
それとも船の上だったら、ワンチャン日本の法律が通用しないとかそういうことある?それともこれはシャンパンに見せかけたスパークリングウォーター?どなたか当時の公式見解など覚えている方いましたら教えてください。

ということで、法律があるかどうかの答えは漫画や小説からは導き出せませんでした~。お役に立てずすみません。

さて、次は羊のお話です。

羊に関しては、十五歳とストブリに詳しく書かれていますかね。
羊は孤児たちによる互助集団で、色んな危険から自分たちの手で身を守っていたんですよね。子供たちの一種の逃げ場のような組織。
ですが、中也加入前と中也加入後で在り方がだいぶ違うのではないかなと思っています。

中也加入前の初期の羊は、とても弱い組織という印象です。
食事はひときれのパン、ねぐらは下水路。
いつも橋の下で隠れて酒を飲んでいた。
ひっそりと最低限の暮らしをしているような、本当に無力な感じがします。

しかし当時7歳だった中也が羊に加入して以降、徐々に力をつけていき、マフィアに警戒されるくらいの強さを獲得していった。それもこれも、中也の異能が脅しとして機能し続けたからですよね。
中也は助けてもらったことへの恩返しとして羊のために力を使ってきた。中也がいなければ、羊はここまで力のある組織にはなれなかった。
だけど、羊の面々はそんな中也に感謝するどころか「恩義に報いて、持っている手札の義務を果たすのは当然のことだ」と抑えつけて、中也に首輪をかけ続けました。
羊の子供たちには中也に対する反発心や警戒心というのが常にあったのかもしれません。他人を信じられない弱さや怯えでもあるし、非凡人に対抗するための凡人たちの集団としての防衛でもあったと感じます。

そんな中で、羊の子供たちは力をつけたあともお酒を盗みにいく。中也はそれを咎めるのだけど、白瀬はそれを咎める中也こそ悪いと言わんばかりに突き放す。
なぜ彼らはお酒を盗み続けるのでしょうね。未成年だから買えないというのが一番わかりやすい理由ではありますが、もしかしたらもっと心理的な理由があるのかも。

たとえば、お酒を盗むのは、羊の子供たちが中也加入前から続けていた行為であり、それを続けることが彼らにとってのアイデンティティの維持だったとか。
中也がいなかった頃の「本来の羊」としてのプライドみたいなものを失いたくなかったのかもしれないし、羊があたかも中也の組織のようになっていくことがどこかで許せなかったのかもしれない。
羊あってこその中也なのに、中也あってこその羊になりかけていることに対する精一杯の反抗でもあって。

力に頼らないで維持できることは、中也には内緒で自分たちだけの手で維持しようとし続けたんじゃないかなと思います。
ひどい言い方をすれば、そうやって中也を仲間外れにして、調子に乗らないように組織として睨んで見張っているかのようでもありますよね。
力が必要なときには中也が必要だけど、それ以外では必要じゃないから関与するな、威張るな、と牽制する。それもこれも圧倒的な力に対抗するための、少年少女たちの必死の自己防衛だったんじゃないでしょうか。
その反抗の意志表明として、中也の知らないところでお酒を盗むという行為をし続けたようにも見えます。

羊の子供たちが、親の愛のもとで生きられなかった子供たちであるということも忘れちゃいけないですよね。親がいない、愛されなかった、言ってしまえばそれだけのことなんだけど、たったそれだけのことが人生を覆したくなるほどに腹立たしい。

飲酒喫煙は不良の少年少女にありがちな破滅行動であり、言い換えればちょっとした自虐行為です。存在意義のなさに対する腹いせともいえる。
「なぜ自分の人生はこうなんだ」という嘆きや「どうせいらない人間だから。生きてる価値ないから。」という投げやりな態度、そういったものが滲み出た結果のリスキーな行動でもあると感じます。こういうの、破滅願望って文ストではよく言われますよね。芥川のBEASTも破滅願望が原点にあるようですし。
そういうものを潜在的に抱えている子供たちだったのかなという印象もあります。

太宰もかつて羊に勧誘されたことがあるそうで。
だから太宰もきっと同じ領域に属する仲間(=孤児?)で、太宰は破滅願望が自殺嗜癖として表出していたのかもしれない。
中也は…あんまり破滅的な印象ないですけど、もしかしたら戦闘狂ってやつが中也なりの破滅願望だったのかも?手をポケットに入れたままにするなど、敢えてハンデを背負ってギリギリのラインで戦う、そうやって自分を追い込んでスリルを味わって快感を得ようとするのは破滅願望ゆえなのでしょうかね?いや、あれはただ単に敵が弱すぎて余裕なだけか…?
荒覇吐そのものが破滅願望の塊っぽいので、そっちに破壊的なものが全集中している分、精神のほうには破滅願望があまり残ってないというのもありえますかね?

羊の衣食住など私もあまり詳しく想像できませんでしたので、彼らの内面からお酒を盗む理由について探ってみました。あまりお望みの答えにはなっていないかもしれません…
お題を頂きありがとうございました!!


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