無題

パワポ探偵の明白な解決

 白明荘。天才奇術師・白馬幸太郎が建てたその邸宅は冬になると「消える」のだという。種は単純で、全面真っ白に塗られているから雪の色に紛れるのだ。そして、探偵・舞倉オフィスはそれこそが事件を解き明かす上で最も重要な点だと断言した。なぜなら、プロジェクターの投影がやりやすいからだと。

 白明荘一階・剥製の間。ただし剥製は廊下に運び出され、代わりに机と椅子がスクール型に並べられている。推理合戦はロの字型の座席配置が適しているが、探偵対容疑者のオーソドックススタイルはスクール型が適しているからだ。投影画面の台形補正を終えた舞倉は、クリアファイルからクリップ止めの推理を各座席に配布し、白馬幸太郎殺人事件の容疑者である七人の奇術師を室内に招き入れた。

「席は自由ですので。あっ、神宮さん、タイムキーパー頼めます?」
「なんだそれは」
「一鈴が18分、二鈴が発表終了で20分、三鈴が22分です」

 どこか納得がいかない様子で、隻眼の奇術師・神宮がストップウォッチと鈴を受け取る。一方、黒衣の奇術師・矢城は2アップ印刷されたA4資料をめくり、目を丸くしていた。いきなり犯人として自分の名が挙がっていたためである。舞倉はわかりやすい解決編を心がけているため、まず結論から述べる。

「さて」

 探偵は、告発劇の口火を切った。

「まずは、お手元の資料の方を確認して頂いてよろしいでしょうか。『白明荘殺事件におけるフーダニット』と書かれたA4片面のホチキス止めのものが一つ、『基礎資料』と左肩に書かれたA4両面の分厚いものが一つ、最後に『白明荘殺人事件におけるハウダニット』と書かれたA3一枚紙が一つ」

「あの」 仮面の奇術師・日堂が手をあげた。「A4の薄いやつなんですけど、刷られてるの全部同じページです」

 舞倉は顔色を変えると、予備で印刷した手元の資料に目を通し、絶句した。

「……私はとんでもないミスを犯していたようだ」

【続く】