見出し画像

【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(19.12.13)

 ニンジャスレイヤーの再読が忙しく、ストックが結構にあったにも関わらず、一か月ぶりくらいになってしまったアレやコレ。あ、ポケモン剣やりました。銀以来だったのですが超おもしろかったです。ジムリーダー戦でクソほどぶちあがり、キャンプでドッコラーくんをあやして木材で頭を殴られて死に、コンセプトがバシバシに決まった化石ポケモンのデザインに痺れ、ワサビが大量に自生しているワイルドエリアに戦き、ダサいデザインがだんだんかっこよく見えてくるダンデさんに魅了され、進化した瞬間声が電子音になるライチュウが怖くて泣きました。好きなポケモンはストリンダーくんです。笑顔が汚いのがいい。

金剛寺さんは面倒臭い(5巻)/とよ田みのる

 金剛寺さんは面倒臭い新刊発売の喜びは祝福の鐘の音となって地球全土に降り注ぎ、それを聞いて天を仰いだ人類は皆その圧倒的輝きに目を潰されるので2019年12月12日は実質トリフィドの日だったと言えましょう。時空、善悪、罪罰、因果、肯否、虚現万象、あらゆる全てとそれ以外の全てが、絶対的に約束されたHAPPY ENDにむけて螺旋を描いて収斂してゆくこの物語は、ついに物語であることすらも追い越して、読者を浄化消滅させる巨大な幸福の光そのものと化しました。しかし、作品として非常にまとまりのいいその「完成」もまた、主人公とヒロインの続いてゆく人生の中では、他人(作者・読者)が定めた切り抜きにすぎません。完成度なんてどうでもいいものを放り出し、蛇足と断じながらも書きこまれた「つづく」は、とろけるほどに優しく、愛と幸福そのものであるこの作品に相応しいと思います。


神はいつ問われるのか?/森博嗣

 全然パンクしてないサイバーパンクこと、WWシリーズ第二段。「暴走した管理AIが、仮想空間をシステムダウンする」というキャッチーな開幕は、例によって、騒ぎ立てることも飾り付けることもなく、水が高きから低きに流れるような必然性をもって、するすると拡散し、混ざり、均され、いつの間にかふっと消えているのです。その滑らかな曲線を描く尻つぼみと肩透かしは、まさに作中で語られる、社会、生命、地球、宇宙がやがて迎える顛末そのものでもありましょう。そして、その顛末に至る過程の中で、神は最後まで取り残されるのか、それとも最初に消えてしまうのか。主人公の肉体的な挙動が、めちゃくちゃ細かく描写されてるのが何とも森小説めいていておもしろく、それ自体が仕掛けになっているのもおもしろかった。


バキ道(4巻)/板垣恵介

 相変わらずいい評判を聞かない「道」シリーズですけど、個人的にはめっちゃくちゃおもしろいです。親子喧嘩を終えて完成した刃牙世界を、まるごと思考実験の試料として使う大贅沢によだれ溢れる。「刃牙道」が刃牙世界と外世界(≒素手が無敵なわけねーだろというマジレス)の比較実験ならば、「バキ道」は刃牙世界と別の内世界(≒相撲が無敵なんだわという別のファンタジー)の比較実験なのでしょうか。つまり、漫画「刃牙」vs漫画「相撲」のメタバトル。刃牙世界内にも相撲があることが混乱の元となり、「なんで今更力士と……?」という混線が起きてしまっているのもおもしろいですし、「刃牙世界の力士であり、相撲世界の力士ではない」宿祢くんが混乱の象徴としてお話のど真ん中にドカンと座っているのもおもしろい。あと、東京ドーム地下闘技場を八角形の土俵と言い換えることで、二つの世界の共有ゾーンにしてしまうギミックにはぶったまげました。言語SFかな?


冬のスフィンクス/飛鳥部勝則

 夢の中で起きた殺人事件を夢の中で推理するミステリー。夢小説おなじみの胡蝶がバサバサ、境界線ふわふわな作品なわけですが、現実パートが幻想小説の如き曖昧な筆致で綴られ、夢パートが推理小説の如き明晰な筆致で綴れるという転倒が呼び起こす奇妙さは本作のオリジナルだと思います。何もかもが定かではない世界によって、ハウダニット(手法)の解析がふるい落とされ、ホワイダニット(理由)が最後に残るという作りも素晴らしく美しいと思います。あと、飛鳥部勝則作品は「本格推理小説にこだわることで、物語が汚れてしまうこと」という凄まじくマニアックな共通テーマを持ち、それは本作においても見事に昇華されているのですが、あまりにもマニアックなので感想からは割愛します。飛鳥部作品の個性と魅力はいつか単体の記事に起こしたいです。