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お悩み相談室のうらがわ035の続き(国語教材の可能性2)

○抜き打ちテスト

キーンコーン、カーンコーン
「よーし、じゃあ今日の授業はここまで。」
先生が言いました。
「ふう! 今日の授業はつかれたなあ。」
「たろう君、明日は土曜日だから遊びに行こうよ。」
「うん! いいね!」
先生が手をたたいて、生徒たちの注意をひきます。
「こらこら、遊ぶ約束はあとにしなさい。みんなに連絡があります。来週、国語の抜き打ちテストをするので、準備をしておくように。」
生徒たち「ええー!!」

 さあ、困ったことになりました。せっかくのお休みなのに、みんな口々に文句を言っています。ぺてん君もたろう君もうんざり顔です。
「…ふんっ、おもしろくない。」
ぺてん君は、腕組みをしてすねています。

 次の月曜日。

「…ふう、今週抜き打ちテストだってせんせい言ってたけど、一体いつあるのかな。なんだか落ち着かないな。」
「たろう君おはよう!」
「ぺてん君元気だなあ。抜き打ちテスト嫌じゃないの?」
「まあ、なんとかなるって。」
ぺてん君は鼻歌交じりです。

 その週の金曜日。

「なんだかんだ言って、抜き打ちテストをしないままもう金曜日になっちゃったな。ということは今日は絶対テストがあるんだ。…よーし、がんばるか。」
「はいー、みんな席に着きなさい。」
( ほら! せんせいがテストを手に持ってるぞ! )
「先週に言っておいた抜き打ちテストをするぞー。」
生徒たち「えぇ~」
「ちょっとちょっと、せんせい!」
おや?ぺてん君がなにやらせんせいに抗議するようです。

○ぺてん君がんばる

「どうした、ぺてん。お前まさかテスト勉強していなかったのか?」
「いやいや、そういうことじゃないんですよ。せんせいに質問があるんですよ。」
「…? ほう、どんな質問だい?」
「抜き打ちテストの定義についてなんですよ。」
「定義? 難しい言葉をよく知っているなあ。定義っていうのは、つまり、『抜き打ちテストという言葉の意味をはっきりさせたい』ということか?」
「そうです、そうです。ぼくは『抜き打ちテスト』の定義を、『生徒がテストの行われる日を、当日までに知ることができないテスト』だと思うんですよ。」
「…なになに? 生徒が、テストのある日を、当日までに知ることができない、テスト…。なるほど。そうかもしれんな。」
「その定義でいいでしょうか?」
「うん、まあいい。」

「せんせい。ということはですよ。今週は月曜日から木曜日までテストがなかったわけですよ。」
「そうだな。たっぷり勉強できただろうな。」
「違うんですせんせい。それが、今日は抜き打ちテストができないんですよ。」
「なんだって? なんでできないなんてことがある? 今からするじゃないか。」
「だめです、せんせい。それは「抜き打ちテスト」ではないのでやっちゃだめなんですよ!」
 生徒たちはざわざわ。せんせいは眉根を寄せてしまいました。
 ぺてん君はなぜ、抜き打ちテストができないなんて言ったのでしょう。

○ぺてん君の考え

① まず、ぺてん君は「抜き打ちテスト」を次のように定義しました。
「生徒がテストの行われる日を、当日までに知ることができないテスト」

② 先週せんせいが言った言葉はつぎのとおりです。
「来週、国語の抜き打ちテストをする」

③今週は月曜日から木曜日まで抜き打ちテストがありませんでした。

④ということは、生徒はつぎのことが分かってしまいます。
「今日は必ずテストがある!」

⑤これは、①で言った抜き打ちテストの定義から外れてしまいます。

⑥ですから、
「今日は抜き打ちテストはできない」
ということになるのです。


「…なるほど。よくわかった。」
「でしょう! だから今日はテストなしですね?」
「そうだな。ぺてんのおかげでテストをする時間もなくなったことだし。」
生徒たち「わーい!」
「ただし、来週こそ抜き打ちテストをすることにしよう。ただし、抜き打ちテストの定義を変更しよう。抜き打ちテストの定義は、『生徒がなんと言おうとも、せんせいが「やる!」と言った日に絶対にやるテスト』だ!」

おわり


ところで、仮に月曜日〜木曜日にテストがあったとしたら、ぺてん君は先生を言いくるめることができたでしょうか?

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