117回 医師国家試験 公衆衛生関連

さて、117回医師国家試験の公衆衛生の問題を振り返ってみたいと思います
面白くない問題は見てもしょうがないので、そうではない問題を見ていきましょう
(面白くない問題とは、知っているか知らないかを単に問われているだけの問題です)

A問題

A48 呼吸困難を主訴に来院した症例
「建築現場で解体作業のアルバイト」ときたら産業医は全員「!?」となるはずです。
というのも、今まさに世の中では、建築物解体工事数がピークを迎えようとしており、しかもその解体する建物にアスベストが使われているか調査をしなくてはならない、ということになっているためです。
解体等作業における石綿ばく露防止」という、時宜に適った問題といえると思います

B問題

B10 国民生活基礎調査における有訴者数
これは「労働災害において、腰痛は休業4日以上の業務上災害において第1位の原因」ということを知っていますか、という問題と考えることができます。

C問題

C2 地域包括ケア
今後訪れる、自宅での治療・介護の時代を迎えるにあたって、今後出題されない年はないでしょう。
C3ほか 統計
統計の問題は知識の問題なので、別に良いでしょう。知っているかいないか、それだけです
C4 災害医療
これも知識の問題。面白くはないです。ただ、今後はもう少し突っ込んだ災害医療の問題が出てくると思います
(以降、知識を問うだけの面白くない問題は飛ばします)
C9 風疹
厚生労働省が一生懸命キャンペーンしていたので、これを落とすのは致命的
CITY HUNTERに土下座です
C12 人口動態統計
これは、今まさに少子化が進んでいて、「まずどこまで回復させなければならないか」の前提となる知識をおさえてください、というメッセージが見えます。
C15 在宅医療のサービス
C2につながりますが、医療に限らず「自宅で受けられるサービス」を問われる機会は今後ますます増えるでしょう
C25 へき地医療
これはメッセージ性強すぎ問題。ITの活用、プライマリケア医の養成、など押し寄せてきています。
C30 65歳以上の就業者数
これもメッセージ性強すぎ問題。就業構造の変化によって今まさに課題に直面しているのが高年齢、非正規、外国人、障害者なので、このあたりは今後も出題されるでしょう
C36 化学物質を浴びた労働者
これは問題文の記述からも「うわ…」という問題でしたが、何を問うている問題かといえば、化学物質の管理が自主的な管理に変わりますよ、ということを問うているわけです。化学物質管理の方法がかわることを抑えていなくても解けますが、そういうメッセージです。
C38 産前産後
これは、育休を取りなさい、という厚生労働省からのメッセージです。はい。
C46 退院請求
これは人権を制限されている状況の人が取ることができる方法について問われています。今後も、感染症による隔離など、人権に関する問題は頻出だと考えます。

D問題

D7 ワクチンの効果
これはもう、今回の新型コロナのワクチンで散々振り回されたことが関係ないとは思えないです。いまでも本当にひどいものですから。

E問題

E9 筋肉注射について
またワクチンw 明らかに(新型コロナのワクチンを接種する)三角筋に対する注射の合併症を聞いています。もう推しがすごい。
E10 発症予防ができるもの
これは2022骨太の方針からの出題でしょう。「国民皆歯科健診」を意識しているのだと思います。サービス問題ですが、皆さんの無意識に刷り込まれています。
E23 20世紀初頭に流行した感染症
これは面白い問題だと思います。新型コロナばかり意識していないで、新型インフルエンザのこともちゃんと注意しなくてはいけません、というご指導だと考えます。

F問題

F3 ノーマライゼーション
これは個人的には削除問題にしてほしい問題です(個人の感想です)
F28 高年齢労働者に対する安全配慮
これぞ火の玉ストレート問題。「高年齢労働者は職場にいるのが当たり前」ということを伝えたいのでしょう。


キーワード1:5疾病6事業

これまでにも注目されていましたが、令和6年度から新興感染症が追加されて6事業になることからも、これまで以上に注目されるでしょう。
今回は、災害医療とへき地医療が出題されていましたね。

キーワード2:13次防

耳慣れない言葉かもしれませんが、産業衛生の業界では非常に重要な国家的な計画です。
正式名称は第13次労働災害防止計画です。
突然ですが、この計画の「はじめに」のキーワードを抜き出してみましょう。

過労死
メンタルヘルス不調
働き方改革実行計画
治療と仕事の両立
化学物質による重篤な健康障害の防止
石綿使用建築物の解体等工事への対策強化
大規模な自然災害による被害からの復旧・復興工事
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業における安全衛生の確保
労働災害

さて、この中で、今回出題された問題をピックアップすると、

働き方改革(育休の問題)
石綿と解体工事
大規模な自然災害による被害
労働災害(腰痛)

(ちなみに、計画が目指す社会には、高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者、障害者の記載があります。cf. C30)
が出題されています。過労死はなかったと思いますが、パワハラを思わせる問題は出ていましたし、メンタルヘルス不調はそのまま臨床の問題で出ると思うので、かなりの割合で出題されたといえます。

そしてこの13次防ですが、今年で終わりです。令和5年度からは14次防になるので、これをおさえれば、もしかしたら118回の国試に出るかも?

最後に

私の勝手な思い込みの部分もあるかもしれませんが、今年の国試はメッセージ性がものすごく強かったです(他の科目についても同じように仰っている先生がいたので、他の科目でもそうだったのかもしれません)
F28のような問題は、昔の国試では出なかったように記憶しています

ということで、今年の国家試験を代表する公衆衛生の個人的1問は
C36 化学物質を浴びた労働者
の問題です。
この1問をみた瞬間に、産業衛生はきちんとやらないと取れない範囲になりつつある、と考えさせられました。

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