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非線型力学系と分岐について

前回の記事から②を書かないまま違うトピックに来てしまった笑
(前回の記事はこちら↓)

だって分岐について勉強したことをまとめておきたかったから。。。

さて、今回のメインテーマは非線型力学系における分岐についてです。
なるべくいろんな人が読んでも理解いただけるように書いていくつもりです。マジで数学ってこんな風に使われるのか!って思うことばかり。学校で勉強するときに、「今習ってるのはあくまで道具で、こんな面白いことに役立つんだ!」って教えてくれた数学好きが増えるんでないかなー。でもこれは工学的な考え方でちょっと寄ってるな、うん笑

1. そもそも非線型力学系って何??

簡単なイントロとして、非線型力学のイメージをご紹介します。

まずは非線型力学系について。世の中の現象って自然科学法則に従っていれば数学的に記述できることが多いです。最近では「8割おじさん」として知られている西浦博・京都大教授が新型コロナ感染者のシミュレーションを出していましたが、あれも結局は感染者の行動パターンとかウィルスの感染様式や感染度合いなんかを数学的に記述しているはずなんですね(専門家じゃないから大きなことは言えませんが)。
ちょっと考えてみればわかるかと思うんですが、世の中の現象って単純に四則演算だけで表せることって少ないんですよ。たとえば以下のような比例の式で、xが前日のコロナ感染者数でyが今日の感染者数って表すことができればなんと簡単なことか(a, bは定数)

$${y = ax + b}$$

これば成り立つのであれば、とりあえずその日その日で感染者数が減っていけばいい話ですもんね。このように、ある変数xが1次の形(累乗とか分数とかsin, cosとかつかない)でyを表すことができれば、線型性を有するといいます。これが例えば以下のようになると、線型でなくなるので非線形とよびます。


$${{y = ax^2 + bx +c}}$$とか$${y = \sin x + \frac{\log x}{ x^2}}$$

力学ってのは物理現象とかのように、何かしらの作用が対象間で影響しあう様子についての学問なので、非線形力学ってのは数学的に非線形な現象を記述して、その現象に隠されたメカニズムとか将来的な予測を明らかにしていくことだと私は考えています。

2. じゃあ分岐って何??

固定点とその安定性


ここから数式がぐいぐいと入ってきます笑
以下のような数式で表されるダイナミクスを持つ$${x}$$という対象があるとします。ちなみに$${\dot{{x}}}$$で表されるように文字の上にドットがついているものはその文字の微分を意味します。

$${\dot{{x}} = x^2 + r (r:実数定数)}$$

ここでは上記微分方程式を解いてxの時間的な変化をとらえるのではなく、微分方程式で表されているxのダイナミクスの変化を解析します(ここでは1次元なので速度変化と考えてもらえればよいです)。
ダイナミクスを考える上でポイントになるのは、「どこが変化0になるか」です。つまり$${\dot{{x}} = 0}$$を満たす$${x}$$を見つけます、この点を固定点と呼びます。固定点はrの値によって以下のような3パターンに場合分けして算出できます。


オレンジの丸が固定点です

r<0の場合は固定点がふたつ、r=0で固定点がひとつ、r>0の場合は固定点が存在しません。
では次に固定点近傍での安定性について考えます。つまり、xが固定点に存在するとき、常にその固定点に存在し続けようとするのかどうか?を考えます。「何言ってんの?」って思いますよね笑
話を簡単にしましょう。今、r<0の場合を例にとって、下図の赤線($${y=0}$$)上を野球ボールが転がると考えてください。このボールは赤線上を左右どちらかにしか動きません。そして左右どちらに動くか、そしてどれくらいの強さの力がかかるのか、という情報はグラフの縦軸の値に含まれています。
#1の場所ではグラフの縦軸は正の値なので、x軸上の正の方向に力が働きます。
#2ではグラフの縦軸は負の値なので、x軸上の負の方向に力が働きます。
#3でもグラフの縦軸は負の値なので、x軸上の負の方向に力が働きます。このとき、#2よりも絶対値が大きいので、負の方向へ進める力は#2よりも大きいです。
#4ではグラフの縦軸は正の値なので、x軸上の正の方向に力が働きます。

とすると、面白いことが見えてきます。便宜上、固定点を$${x1, x2  (x1 < x2)}$$としておきます。#1と#2の動きを見る限り、$${x1}$$付近では、$${x1}$$に向かって動き、なおかつ$${x1}$$に近づけば近づくほど、その力は弱まっていきます。このような固定点を、安定固定点と呼びます。逆に、$${x2}$$近傍では$${x2}$$から離れていくように動いていくので、不安定固定点と呼びます。
つまり、$${x1}$$ではちょっと外力が加わっても、ゴムのようにびよーんと$${x1}$$に引き戻されてしまう一方、$${x2}$$ではちょっと外力が加わっただけで遙か彼方、もしくは別の固定点へと吹き飛ばされてしまいます。これが固定点近傍での安定性解析です。
ちなみに、r=0の場合の固定点はもちろん安定固定点ですね!

分岐

では本題に戻りましょう。先ほどはパラメータrを場合分けして固定点とその安定性を解析しました。固定点とその安定性が、非線形力学系でのダイナミクスを考える上で重要になるというのは、なんとなく伝わったかと思います。しかし、よくよく考えてみると、そんな重要な性質がパラメータrによって異なってきてしまうではないか!?そう、まさにこれが「分岐」なのです。
さっきの例で言うと、r<0の場合は安定固定点が存在しており、野球ボールは$${x1}$$で落ち着くことができていました。しかし、何かの拍子でパラメータrが急増してr >0となった途端、野球ボールは遙か彼方へと飛ばされてしまいます。。。このように、あるパラメータの変化によって系の安定性が変わってしまう現象を「分岐」と呼ぶんですね。

3. おさらい

今回はとりあえずこのへんで。ポイントとしては以下の通り。

  • 非線型力学系というのは、線型($${y=ax+b}$$)ではない形式で数学的に記される自然現象である。

  • そうした現象のダイナミクスを知るためには、固定点とその安定性を解析することが重要。

  • 場合によっては、パラメータの変化によって固定点とその安定性が変化することがあり、そのした現象を分岐と呼ぶ。

やっぱ具体例がもっと無いとわかりづらいよなーと反省中。
今回は1次元に限定していましたが、次回以降は多次元への拡張や線型化までいきたいなー。Pythonを用いた腫瘍増殖シミュレーション②もやらな笑


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