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『1日外出録ハンチョウ』 16巻 感想


概要

著者:上原 求、新井 和也
原作:萩原 天晴
協力:福本 伸行

初版発行:2023年
発行者:森田 浩章
発行所:株式会社 講談社

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発行者による作品情報

あ?何してんのかって?見た通り‥‥
ガイシュツキメてんだよ‥‥!
読めば中毒、悪役大槻の1話完結日常譚‥!

暗澹とした地下施設で働きながら、休日を満喫する開拓者‥‥大槻班長‥!
おじさん故に受ける職質の悲哀も、若者との価値観の違いによる激論も、話のネタにして楽しむことは朝飯前‥‥!

1日中ふざけ倒す休日もあれば、大人のバスケにアツくなる休日もある‥!

おじさんの休日と侮るなかれ‥‥人生を楽しむコツが、この1日に詰まっている‥‥!

楽しさを自ら掴み取る、愉悦的スピンオフ第16巻‥‥!

Apple Books|上原求,新井和也,萩原天晴&福本伸行『1日外出録ハンチョウ (16)』

感想

 職質に始まり、辛い食べ物への葛藤、抑えきれぬ悪戯心、果ては若者との価値観の違い。今回は大槻らの"中年""オジサン"という側面にスポットライトを当てたエピソードが多め。とはいえ、まだ若者な僕でも共感・理解できる部分もそれなりにあります。

 最も共感したのは第123話「無垢」。表に出る言動然りその裏にある背景然り、僕にもそういう部分は(多分)あるので。他者から「切れ者」「ストイック」「真面目」と評されやすい方々は共感できるのではないでしょうか?
 そういう方は、少なくとも"オン"の場では自分のそういった「子供」「本能的」な部分を抑えている(行き過ぎると「斬り捨てた」)という側面が大なり小なりある。だから"オフ"であったり、不満や不安が溜まりに溜まった時には、"わんぱくモード"になって発散したい…という欲求はまあまあある。ただ、TPOを読まないと自分のプラスイメージが瓦解しかねない(「悪行三昧の不良が、たった一つ善行(それも「良識ある人間ならして当然」というレベルの)をした」は褒めそやされるのにね)。その辺も考えた、所謂"最大公約数的な答え"が、今回のような「正真正銘『気の置けない』間柄の人間相手にふざける」です。まあ、ツッコむ側からしたら「ボケが一人増えた」状態なので疲れるでしょうけど…(そこはごめんなさい)。
 そういう意味では、大槻にとって沼川と石和は「気の置けない間柄」と信頼されていると思います。
 だからといって、"秘技・弁当垂直入れ"はしませんが。受け入れる側も『でんじゃらすじーさん』みたいな落書きを自分にしなくていいと思いますが。

 そしてなんと、第127話「人知」では、チャットAIによって作られたエピソード「地下からの休日」が登場しました。
 一見そこまで変な感じもなく、よくまとまった一作。しかし、よく見ると違和感の素がそこかしこに。例えば、フードトラックグルメを楽しむのはまだいい。しかし、最初がスイーツ系で、そこからは肉、肉、肉。順番が逆じゃないですかね…(そもそもこの肉ラッシュは重すぎるのでは?)。絵的な話で言えば、最後の1ページの街路樹が"松の盆栽"みたいなことになっている。なにより、「悪役主人公のスピンオフ」とは切っても切れぬはずの"毒っ気"的なものがまるでない(でもそれは普段の『ハンチョウ』でも同じかもしれない)
 とはいえ、「美味しい肉‥‥‥‥‥できますか‥‥‥‥?」に対する「ああ‥‥!美味しい肉がね‥‥‥君を待ってる‥‥‥!」には肉メインのお店で「美味しい肉」ってなんだよ、と思いながらも福本先生っぽさの片鱗というか、"光るもの"を感じました。
 総評すると、「現時点ではまだまだ。しかし、今後の学習次第では大化けする可能性あり」と言ったところです。

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