見出し画像

『鋼の錬金術師』 2巻 感想

概要

著者:荒川 弘

初版発行:年
デジタル版発行:2012年
発行人:田口 浩司
発行所:株式会社スクウェア・エニックス

Apple Books リンク

発行者による作品情報

東部辺境の町・リオ―ル、炭鉱の町・ユースウェルを経て、東部の中心「イーストシティ」へと、エルリック兄弟の旅は続く。『焔の錬金術師』ロイ・マスタング大佐と軍の面々に迎えられた2人は、『綴命(ていめい)の錬金術師』タッカーと、その娘ニーナに出会う。そこでしだいに明らかになる、紙に背きし者の背負いし罪と罰…。さらに"神の意思の代行者"をみずから任じ、国家錬金術師のみをつけ狙う宿敵『傷の男(スカー)』との遭遇!!人ならざる存在であるラスト、グラトニーらも暗躍を開始し、物語は大きくうねり始める!
(C)Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
Apple Books|荒川弘『鋼の錬金術師2巻』

感想

 この巻では、タッカーさん関連のエピソードで「『研究者としての錬金術師』が持つ負の側面」を、傷の男(スカー)関連で「『人間兵器としての国家錬金術師』が持つ負の側面」を描いています。かの有名な「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」という台詞が出てくるのもこれです。

 それにしても、タッカーさんの変貌というか本性というか。しでかしたことや思考回路は割とベタなマッドサイエンティストのそれなんですが、それまでの"どこか頼りなさそうだけど優しそうなお父さん"という(表向きの)人物像との落差が凄い。「人語を使う合成獣(キメラ)の錬成に成功した時期」と「妻がいなくなった時期」が重なる(ともに2年前)という事実や所々挟まれる苦悩するかのような言動など、それを示唆する描写はあったのですが、わかったうえで読んでも背筋がゾワッとなります。
 とはいえ、エドに追及されたときのタッカーさんの言い訳にも一理あるとは思います。「人の命をもてあそぶような真似」「禁忌とわかっていてなお実行した(試さずにはいられなかった)」という点ではタッカーさんもエドも同じと言えなくもない。もっとも、そこに至った理由や"錬金術師としての矜持"は天と地ほどの差ですが。エドがさらに(それこそ、右腕(=鋼の義手)でタッカーさん(=戦闘能力のないただの人間)を何度も殴るほど)激昂したのは、自分自身かつてしたことが「人の命をもてあそんだ」という自覚があるからなのかなとは思いました。

 そして、傷の男との戦闘でエルリック兄弟は(自力では)再起不能にされてしまいます。作中で兄弟が負けるのは初めて…というか、見返してみたら、バトルらしいバトルってレト教徒数名と列車ジャックした過激派集団「青の団」だけ。ファンタジー漫画なのに、現時点では思ったより戦っていない。
 傷の男の目的は「国家錬金術師への復讐」。しかし、マスタング大佐からそれを聞かされたエドは「関係ない人間も巻き込む復讐に正当性もくそもあるかよ」と吐き捨てます。"創作に限っては"復讐者キャラを好きになりがちな僕ですが、これは本当にその通りだと思います。というか、そこで一線を越えたキャラは、(語弊が生まれそうな表現をすると)復讐者キャラとしては応援できない。

 エルリック兄弟は、破壊された体(エドは右腕、アルは首から下の右側大部分)を直すために、アームストロング少佐の護衛付きで故郷・リゼンブールへ向かいます。その途中ではなにやらきな臭い話に巻き込まれそうな予感がするのですが、それはまた別の話。

 今回も巻末にオマケがあります。少佐護符は…いろいろなものに効きそうです。某ゲームでは格闘が効かないゴーストにも。

 ところで、一つ気になった点が。エドが動物(特に犬)によくチョッカイをかけられるのは、父親に関するちょっとした伏線なんでしょうか?どういうことかはネタバレになるので言えないんですが…。

この記事が参加している募集

#マンガ感想文

19,720件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?