第一話

「ずっと、、待ってるからね…」”お姉ちゃん”の手をとりながら泣き叫んだと思う。背中側には来年開業するホテルの建設事務所がある。真っ暗で大きなプレハブ小屋は吸い込まれそうで不気味だった。稲妻が目の前で走る。キャーと叫びながら目を背けた。怖くて身体は動かない。お姉ちゃんの手を強く握りしめた、しかしその感触はスッと消えていった。気がついたらあたりはしんとしている。お姉ちゃんと叫んだつもりだが声にならない。もう一度叫ぼうとする。「おねえ…」声になったことに驚くと同時に土砂降りに振られていることに気づいた。フラフラと立ち上がり帰路につく。”お姉ちゃん”がいたところはもう池になってて、跡すら残っていない。家に着いた時はびしょ濡れで6月とはいえ寒かった。どうやって帰ったのか覚えていないが、ポケットに封筒とその中に手紙が入っていたことは覚えている。下着までびしょ濡れになったのに驚く程封筒は乾いていたのだ。気になったが開けてはいけない気がした。少なくとも今は。見つけられたくなかったので引き出しにしまいお風呂に入った。そのあと今の今まで封筒と手紙の存在すら忘れていた。小学校四年の時、7年前の過去の出来事である。

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