橘高勝のこと 〜ミステリというなかれを見たあとのクソデカ感情を吐き出したい〜

タイトルのごとく超超ネタバレです。

出来れば見てから読んでほしい!







ドラマミステリというなかれ、アイビーハウス編を見終わった後、もう上記の人物のことが頭をぐるぐるぐるぐるしているわけです。

橘高勝が堕ちていったその過程が、悲しくて悲しくて仕方がないのです。
煙草森誠の問題が(おそらく)先天性の欠落だとすれば、橘高勝はそうではない、と思うのです。
そして誰しもが、彼と同じところに堕ちる可能性があるのです。


話に散りばめられた情報を、橘高についての部分を拾い集めてみます。

1.元来重度の潔癖症である、という点。及びミスを許せない、という点

2.高校時代、パーフェクトマンと呼ばれ、女性にモテていた、という点

3.現在公務員で、独身、おそらくパートナーがいない、という点

4.趣味が山登りであり、おそらくは一人での行動を好む、という点

5.親の介護の為に仕事をやめなければならない、という点


1.2.に関して、おそらくその潔癖さ、言い換えれば清廉さが、評価された時代があったのだと思います。瑕疵のない自分。それは彼にとっての自分を保つための一つのファクターだったのではないでしょうか。

3に関して。
彼は「公務員」という職業に対して「平凡」というような意味の言葉を使っていたように思います。普通のおじさんだ、と。
彼が現状独身であり、パートナーがいない、という点に関して。
実際そういうのって縁とタイミング、あと勢いなんですが、彼にとっては、それも「瑕疵」であったのかもしれません。

そのコンプレックスの表れが喜和と天達を揶揄するセリフなのではないかと。


4の通り、彼は自分の時間を大事にしたい人だと思うのです。故に他者との時間を恣意的に少なくしてきた。その自由さは、5の親の介護を通じて、彼に孤独を強いるのです。
5に関しては、だから結婚しとけば、とかは言いたくありません。結婚って親の介護の為にするわけじゃないから。
何より彼は職務上、介護のフォローの斡旋にも熟知しているはず。

これもまた「頼ること」を「瑕疵」と捉えていたということなのかもしれません。

この、1から5、そして、自分のミスによる喜和の死が、5年彼を苛んだ結果、

彼は「瑕疵のない悪」になることを選ぶのです。
いっそ、そちら側で完璧になればいいのだ、と。

話は少しそれますが、僕の周りの「結婚出来ないおじさん(あえてそう表現します)」には、特徴があって。
相手に対して優しい人が多いんですよ。
自分の歳や見た目で、相手がかわいそうだ、と思う。
親の介護の為に結婚させるみたいで申し訳ないと思う。

相手を慮るほど動けない。

橘高勝がそうか、と言われれば、わかりません。実際彼はとてつもないほどの悪事に手を染めました。
ですが、彼が親の介護を投げ出さなかった人物なのは事実です。
そして、透明人間の話。
殺すか殺されるかの瀬戸際の中、彼が自ら言い出したそれは、彼からの友人たちに向けたsosだったのではないかと思うのです。

彼は許されない罪を犯し、人として堕しました。
しかしながら、そこに堕ちる過程こそ、教訓として我々が刻まなければならないことだと思うのです。

最後に、この橘高勝という人物を、その落ちる過程を、そしてその奥にある人物の芯を見事に演じきった佐々木蔵之介さんに称賛の拍手をおくります。

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