十二国記 白銀の墟 玄の月のネタバレ感想~2琅燦のこと~

琅燦に関して、sns上でも賛否が分かれていますね。賛(というよりなんとか擁護)、否否否否否否否定否定!って感じですが。もちろん今回もネタバレなので、読んでない人はぜひ先に本編を読んで下さい!







泰麒の予測を正とするのか、琅燦が阿選に語ったことを正とするのか、で彼女に対する受け取り方って大いに変わると思うんですよね。しかも本編ではその答えを出してない。出さなくともよい、なのか、短編集に乗るのか。ぜひ短編集で彼女から見た阿選朝を書いてほしいです。ともあれ、泰麒の予測を正とした場合の、琅燦の心情を推測してみようと思います。


琅燦が泰麒の予想した通り、耶利の主公であれば、青鳥を飛ばす耶利の描写からも、玄管も琅燦であろう、と推測できます。

「お前が王でもおかしくなかった」と述べ、「狸力」の使い方を教えたりした阿選の回想もまた事実を述べているとすれば、
琅燦は、阿選に妖魔の使い方を教え、その後も協力を(むしろ黒幕では、と言われるほどに)し、その裏で道観を援助し、葆葉、敦厚を介し、反軍の準備を進めさせた、ということになります。
矛盾甚だしい行動の裏に、彼女自身の好奇心と驍宗への忠誠心の二律背反があった、とする考察も見かけて、なるほどなあ、ってなりました。
でも、彼女が耶利の主公ならば、耶利に語った「民を救いたい」が詭弁だと言うことになるわけですが。そこを詭弁で無いとして考えてみようと思うのです。
彼女は、自らの「登極すればお前が王だったかもしれない」という言葉の責任を取ろうとしたのではないのかと。あの言葉が、弑逆への後押しだったと感じたの阿選の勝手であって、彼女は事実を述べただけではなかったのかと。

そのために「天意を止める」という策を阿選に吹き込み、驍宗、泰麒が共に生き残る道を残し、「狸力」の使用を積極的に進めることで、「落盤による幽閉」という驍宗を五体満足のまま温存する道を残したのでは。

鳩はどうだろう…。鳩、賓満、きゅうよに関しては、やりようを知った阿選が自ら手に入れ使役していたのでは、と思ったりしています。ただ鳩を放置したのは、無論、都合が良かったから、だと思う。

鳩のせいで阿選の朝は無力化しました。州候の傀儡化も、長い目で見れば、けして不都合ではなかった。事実、後の復興驍宗朝の拠点となった江州、英章、臥新の潜伏先であった馬州の例はもちろん、傀儡を配した文州においても、反軍の芽は育ちました。

あえて阿選朝にグレーのまま残ることで、その道を残したのだと思うのです。
彼女の誤算は、泰麒の蓬莱への逃避、驍宗の本格的な行方不明だったのではないのでしょうか。阿選には天意を止める方法を提案したものの、まさか6年、事実天意が停止すると思っても見なかったのでは。
その中で彼女は敦厚を通じて葆葉を使い、驍宗の捜索と、冬器の準備を含めた反軍を育てる。道観を通じて驍宗朝の残勢力を保護し、対阿選の決着に備えていた。そこに泰麒帰還。
泰麒帰還の経緯を知らない彼女からすれば、戻ってきたのを見ても「天意、どうするつもりなの?」ってなるのは致し方ないところでもあるのかと。
だとすれば、その彼女の策の集大成は文州の乱です。おまけに驍宗帰還の幸運もあって、あそこで事態は決着するかに見えました。
しかしそれをさらにひっくり返したのも天意です。(少なくとも琅燦にはそう見えたでしょう)。
驍宗処刑の場で厳趙に「これで満足か」と問われた彼女の「それは天に聞け」は、彼女自身も打つ手をなくした、ということだったんではないのかと。
彼女が阿選に語った「天意に対する興味」もまた真だと思います。阿選とは対極の「いかに王を玉座に戻すか」という立場で、彼女は天意に挑んでいた、と考えれば。戦っているうちにその戦い自体が面白くなってくることってあるじゃないですか。そういう状態じゃなかったのかな、と。


彼女の行いがたいに及ぼした累は計り知れませんし、復興驍宗朝において彼女の姿はないでしょう。彼女自身もそれを望みはしないと思います。耶利が主公の正体を語らなかったのは、主人のその思いを汲んだからではないでしょうか。

ですが、(上記を前提とすれば)彼女は今回の最大の功労者であるのも事実。皮肉屋で斜に構えた彼女らしい決断ではありますが、(あくまでも上記を前提とすれば)彼女の思いもまた、切ない気がするのです。


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