見出し画像

未来への手紙と言うほどでもないけどお土産の話。

はじめに

突然だが、私は元来出不精の引きこもりで、というこの文章書こうとしたら、マイNECのパソコン、通称パソ子が「出不精」を「デブ症」と変換したので画面を軽くひっぱたいた自分、昭和生まれ。機械は叩いて躾けるタイプ。
話しが逸れた、で元来引きこもりだった上に、末っ子が長時間外出が難しいタイプの医療的ケア児で、ついでにこの春の緊急事態宣言を受け日本全体が一億総引きこもり宣言をしている今、旅行なんか言っている場合ではない、命が惜しくないのかお前たち、引きこもれ人間の家。

という事で、今現在、己の遊興の為の旅行はおろか、私が毎日夫の帰宅より楽しみにしている夫の会社のひとびとの旅行出張のお土産のおこぼれが全く手に入らなくなってしまった。

夫の職場のひとびとは、実家に帰省したり、旅行に行ったり、出張に行ったりするとそれぞれ、日本全国津々浦々お土産として地方銘菓を必ず人数分買ってきてくれるという古式ゆかしい日本の職場の伝統を守っているんだかそれとも仲良しなのか、兎に角いつも何かお土産を買ってきて配ってくれるのだ。

ありがとう優しい同僚のひとたち、あったことないけど。

それで、毎日私は帰宅した夫のカバンを奪い取り

「ね~今日何か貰ってきた?」

そう言いながら子ども達とカバンを逆さにして振るのが日課だったというのに何なんもう最近、超寂しい。

それでこの寂寥を払うため、そしてそう遠くない未来にまたお土産が夫のカバンに乗って私と子どもの元にやって来る日を夢見て私的鉄板地方のお土産を書いてみた。

暇つぶしではない、朝5時から娘達に張り付かれている私に隙と暇はない、これはある種のセラピーだ、未来への希望の手紙だ、断じて暇つぶしではない、繰り返すあたりは怪しい。しかしつきあってくれみんなたち。

北海道・東北ブロック:六花亭・マルセイバターサンド(北海道)

言わずと知れた北の王者、六花亭。その中でもバターサンド、ハイ間違いない。
2019年のNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』出てきた帯広の菓子店・雪月のモデルになった六花亭。私はあの時あのドラマに出演していた草刈正雄演じるじっちゃんの一代目開拓者らしい寡黙で厳しい面持ちと裏腹に甘党でシュークリームに目が無い設定が大好きだったんやで正雄。ある意味広瀬すずよりヒロインやった、その六花亭。
六花亭の『六花』は雪が六角形である事に由来した雪の異称らしいですね、美しいかよ、可愛いかよ、お土産としてかの六花亭のお品をもらえるとあの包み紙のかわいらしさも相まって超嬉しい、そして間違いなくおいしい。大体私は新婚旅行というか結婚してから夫と行った最初の旅行それって新婚旅行やん、まあそうなんやけど、その旅行先が北海道で、その時六花亭でしこたま親戚のお土産を買ったのだ、買わなければいけなかったのだ田舎民だから。その時結構な額を札幌の北大の近くのお店で使ったのでノベルティで風呂敷を貰った、今でも大切に手元にある。そして件のバターサンドは最近こっちの生協でも注文できる時がありチャンスがあると絶対買う、そして隠れて一人で食う、やるもんかコレは俺のものだ、お母さん超心狭い。ありがとうマルセイバターサンドよ永遠なれ、そして生協では定期的に扱ってほしい。

関東ブロック:豊島屋・鳩サブレ―(神奈川県)


関東広い、そしておいしいものいっぱい、そんな中すべての強豪を抑えて私的関東一のお土産銘菓『鳩サブレ―』。だっておいしい上に形がかわいいんですもの、何なら缶入りをいただいた時の缶の形も色も鳩のイラストもすべてが超可愛い、あの表面に鳩と『鳩サブレ―』と書かれた大缶は実家の母の裁縫箱としても活躍している。そんなご縁の鳩サブレ―、その鳩の歴史を紐解くと明治30年頃鎌倉の店に訪れた異人さんにビスケットないの?と言われた初代が作ったものらしいが最初近所の人にコレ新商品やからと配ったらバターの香りに馴染みの無い明治のみんな達、こっそり犬の餌にしていたとかで、初代可哀相、犬役得かよ。そしてあの手の可愛い形状の食べ物を貴方は何処から食べますか?私は100%頭から。だって尻からいくと「お~ま~え~か~俺の尻食ってんの!」とか睨まれそうなんですもの、先手必勝、ひよこもこの手で食う、最高、おいしい、明治大正昭和平成、そして令和の今世も変わらず居て欲しい鎌倉の鳩。

東海ブロック:株式会社赤福・赤福(三重県)


今回この文章を書こうとしてHPを訪ね、それで初めて赤福を作って販売している会社の社名が『赤福』だと知ったこの私は。
看板商品イコール社名、ナイスわかりやすい。人生はまだまだ知らない事で溢れていると思った41歳の春。
それで赤福、日本中の人間が伊勢神宮とニコイチでにみんな知っている赤福、人生に一度はお伊勢さん参拝のお土産で頂く赤福。そんな私は関西民なので、京都駅とか近鉄のターミナル駅で買えるんですわ赤福。何よりこしあん派、むしろ粒あん何それおいしいの?という気概で飢えに苦しむ日が来たその時にアンパンマンが顔をくれても食う気の一切無いこしあん原理主義者の私は、小さなお餅を中心にして、ぽってりとこしあんがさざ波の如く美しく乗せられたあのお餅を本気で偏愛している。我々は伊勢の社に参拝に行くのではない、赤福を食べに行くのだ、罰当たりか。そんな伊勢というとやはり皇室の上つ方も召し上がるのだろうかあのお餅、そして私はこの赤福の商品の中でも、白・緑・黄・黒の4色のあんののった『いすず野あそび餅』を貰うと小躍りします(現在販売休止中、哀しい。)

北陸ブロック:芝寿し・笹寿し(石川県)


ハイ、来た、ここまで上記3件はメジャー中のメジャー、日本全国津々浦々みんなしってるやんいまさらオマエが書かんでも、という銘菓中の銘菓だったが、いいやんおいしいんやから、それはいいとして、ここにきて突然の寿司。
それは鮭や鯛や鯖をお酢と塩で締めたものを使った押し寿司。そのお魚の横にレモンの小片や山椒の葉が添えられたすし飯を殺菌効果のあると言われている笹の葉に包んだもので、あの地方の郷土料理。私の実家は富山だが地域的には石川寄りなのでかの地のマメな主婦は自宅でも作る、そしてマメとはbeansの和訳でしかないずぼらな主婦は店で買う、私は後者。そしてこの芝寿しの笹寿しはその中でメジャー中のメジャー、私的押し寿司界の女王、大丈夫、押し寿司の王はちゃんと奈良の柿の葉寿司に譲る。そして本当の地元には辛辣な私としては鱒の寿司オマエ駄目だ、切り分けがめんどくさい、そしてでかい、イヤおいしいんやけど。
あと本気でどうでもいい私個人の思い出として、この芝寿しの笹寿しは私が嫁にいくその日、平たく言うと結婚式当日、花嫁は式中何も口にできないからと実母がそのやさしさ成分100%の気持ちから金沢駅で沢山買い込んで来てくれたのに、親戚の男ども(夫含む)がみんな食べてしまって私が一口も食べられなかったという逸話を持つ。アレは今でも恨んでいる、食い物の恨みは一生もの、そんなわけで望郷の念と共におなか一杯食べたい、誰か買ってきてください、笹寿し、私は鮭のヤツが好きです。

関西ブロック:たねや・どらやき(滋賀県)


関西、京都あるやん和菓子やったらと皆は思うかもしれないが、あえての滋賀。
「たねや」と言われると何それ種苗屋?どこの菓子屋よ?と思われる事しばしばですがこれはアレです、関西バームクーヘン界の雄、クラブハリエの和菓子部門、というかクラブハリエの出自がこの滋賀の水郷・近江八幡の和菓子屋なのだから阪急で三越でくるくるバームクーヘンを焼いていてもその大本は和菓子屋、そして私はここの和菓子がすごく好きだ。確かに和菓子は京都、あのものものしい名前の、たとえば鶴屋義信とか俵屋吉富とか老松とかがあるのだけれど、その格調高い京菓子の名店にはどらやきとか栗饅頭とか、京都の人に持って行ったら「なんや素朴な和菓子ですなあ」とか言われそうなものがあまりないのだ、私は和菓子は普通のもっと言うと田舎菓子と言われそうな素朴さのあるものが好き、そしてここの普通の和菓子は普通においしい特にどらやき、普通か。
滋賀のひとはそういうとこがある、関西という他の地方から見るとアクの強い地域にあって、京都程怖くなく、大阪程強くなく、そして兵庫というか神戸ほどとっつきにくくない、素朴かつ普通。というか私は一時期滋賀県民だった事があるので滋賀については超ひいき目なのだ、でもここのお菓子は普通で素朴で本当においしい、ご興味のある方は近江商人の商魂溢れるHPから是非。

中国四国ブロック:野焼き(島根県)


自身が「出身どこ?え?富山?く、薬売りとかいるよね?」としか出身県の話題を振ってもらえない地味さいぶし銀の地方出身者なので、そして今薬売りはその辺を歩いてはいないのだが、島根さんには大層親近感がある、同じ地味県民として。あと鳥取さんと茨城さん。そして夫の親戚で数少ない『私の好きな親類』の夫祖父の出身地でもある。その島根からのエントリーの『野焼き』。野焼きってなんやねん、と思われるかもしれないがそれは平たく言うとでかい竹輪だ、飛魚(あご)のすり身を巨大な竹輪状にした、というか竹輪なんやけど高級な、そんな食べ物で、これ、その私の大好きな夫祖父の連れ合いの祖母が電話注文でよく買っていて、結構値段がするのにバンバン注文しては親戚に配りまくるから困ると姑がこぼしていた位、竹輪のくせに結構高い、でもおいしい、出来るだけ厚めに切って食べるのが良いらしく、一度この夫祖母の前で普通の練り物と思って切り分けたら「薄い!」と叱られじゃあと思い切りよく分厚く切ったら「厚すぎる!」と怒鳴られた、どないしたらええねん。この夫祖母は穏やかな松江藩士の末裔の夫祖父とは真逆のハイパー気のきついばあちゃんで、認知症が進んできた時分よくオマエか300円取ったのは!といって言いがかりをつけられて追いかけられたものだった。それゆえ一体どこの店の野焼きを注文していたのか今となってはわからない、聞いておけばよかった、お心当たりの方教えてください、多分松江にある店で、でかくて高い野焼きです。

九州沖縄ブロック:明月堂・博多通りもん(福岡県)


我が家ではこの九州銘菓メジャー中のメジャーが夫の手によって運ばれてくると抗争が起きる。
みんな食べたいのだ、しかしその供給量は大体ひとつ、私も息子も娘①もなんならその3人がわあわあと騒いでいるのを聞きつけた娘②も食べたがる。夫だけが俺はいいや甘いモンはと言って辞退する。罰当たりめこのモンドセレクション金賞の紋所が目に入らないのか、そして白餡おいしい、できたら一度に3個くらい食べたい、しかし残念ながら、夫の職場のツテ意外では私にも夫にも九州地方に友人や親戚が居ないのでそうそう口に入らない貴重な品なのだ。
二ノ宮知子の代表作『のだめカンタービレ』でも福岡出身と偽る佐賀県出身の野田恵ことのだめがフランスのコンセルヴァトワール・パリ国立高等音楽舞踊学校の先生に挨拶の品として渡していたこのお饅頭、その辺でも売ってくれないかなと思うし、そんな食べたきゃ通販で買えばええやんと思うが、そこはそれ、夫のカバンから転がり出てきたのを親子で争って欲しがった挙句みみっちく四等分するのがいいのだ、わかってくれるだろうか博多のみんなたち。

以上7点、この長い長い緊急事態が収束して、少し外に出て旅行なんかができる時期になっても、まだまだ酸素ボンベとご一緒の人生の娘②がいる限り、私個人は旅行とは縁のない人生だけれど、早く夫のカバンに地方銘菓が転がり込んでくるそんな生活が戻ってきて欲しい。それまでは思い出を反芻しながら頑張ろう、その為の記憶力、その為の想像力、そしてその為に無駄にお土産について書いた。

私個人はこれ、結構楽しかった。

これを読んでくれたひとの、貴方の大好きなお土産は何だろうか。

サポートありがとうございます。頂いたサポートは今後の創作のために使わせていただきます。文学フリマに出るのが夢です!