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旅に生きる2019/0911 ~地名から読み取る~ ①見せてみろよ、お前のイーハトーブ!

※皆さまの投げ銭を旅費にする企画です。投げ銭がないと旅に出れないのでぜひぜひおねがいいたします。


岩手県に行った理由はなんとなくである。

でもなんとなく喧嘩を売るべき偉人がいたので挨拶代わりに行ったわけである。

穏やかではない始まりだが予告していた通り今回のテーマは『地名』なのだ。

家から出なくても完了するテーマである。

ところが地名のどこに焦点を当てるかでガラっと変わってしまう。

『珍地名』『由緒ある地名』『意外な由来の地名』

もうネットで検索すれば調べてみた趣味者がごまんと文章や画像を出している。もう搾っても水一滴も出ないほどやり尽された話だ。


現地に行くとしても

「はい、ここが〇〇です!」で終わってしまう。なんとスカスカな内容だろうか。通勤電車の時間つぶしにもならんくらい薄い内容になってしまう。


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雨は思ったより激しい。

喧嘩相手(勝手に売られて迷惑だと思う)が愛した場所を訪れるには最悪な天候だ。

喧嘩相手は岩手県民から怒りを買いそうな大物、『宮沢賢治(このシリーズではみやけんと略します)』である。

正直彼の事はよく知らない。


まず童話はさっぱりわからない。独特な文章がわからない。

美しくリズミカルに神秘的。だが『詩的』すぎる気がする。詩は好きで読むたびに感動をするのだが、童話だとどうしても内容が入ってこない。

草野新平と同じ『詩』の領域で受け止めるべき人として自分の中では着地させていた。


つまり『知っているけど知らない』よくありがちな教科書の人となっていたわけだ。

ところがこれをたまたま観る機会があった。

プラネタリウムとかガラじゃないんですけどなぜか観た(なんで観たか理由は覚えてない)

映像と音がつくと突然入る。これはこの作品を作ったkagayaと朗読の桑島法子がズルい。

音楽も加賀谷玲氏(製作会社社長の弟)が見事に引きこんでくれる。


想像力を引き立たせるのではなく読み込んで読み込んで、音や光や色々なモノが浮かび上がるようになるまで付き添っていくそういう作品を生み出すのがみやけんなのだろう。わたしのようにわかりやすい刺激がないと頭に入ってこないボンクラには高尚すぎた。


だがそんなみやけん、社会的な肩書、もし名刺を持って歩かねばならないとすれば肩書は

『作家・詩人』と一緒に『地質・鉱物学者』も列記せねばならない。

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彼は盛岡高等農林学校(現在の岩手大学農学部)に首席入学している。

みやけんのファンのほぼ9割は文学的な視点から彼の作品を読み取っていると思われる。

地質学側がみやけんの作品について「解釈が難解な所は地質学鉱物学的知識で再検証すれば紐解ける」とアプローチをした。

現在定説になっている解釈はこのアプローチに背中を押されて確率しているところが大きい。原稿用紙とにらめっこするだけではみやけんは難しいのだ。

逆に天文学的な部分は大きくみやけんの独学と宗教的感受に寄るところが多いのでこっちは学者ではなく宗教人の出番であろうと思われるが。


彼は歩いた。山も川も。石を拾う子供の遊びはそのまま現地で採集する地質学と鉱物学の基礎だ。

東京から難しい顔をした学者が来るよりも足と目でみやけんは誰よりも故郷の地形を見ていた。

そしてこれまた彼のファンならよく知る最期、東北砕石工場技師となるがそのまま死去。

農民と寄り添おうとしたが病気もあって、激しい当時の農作業は厳しかったろう。

農民の相談等に無料で協力したのも美談ではあるが実家が裕福だったからだ。彼は自給自足には病弱すぎた。だから自分の知識が活かせて農民の力になれる場所を追い求めたら元々持っていた『学者』へ回帰に結果なった。

だがその時にはすでに激務に耐えられる状態ではなかったわけだ。

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ここで断りをしておくが喧嘩を売っているのはDis目的ではない。偉人に挑んで炎上したいわけでもない。

みやけんがした『アレ』だ。

『岩手』は『岩手』に決まっとる。だが『イーハトーブ』とわけのわからん呼び名をつけた。

今は町おこしで公式にあちこちで見かけるわけだが、これなんでこう呼ぶのかはわからないらしい。

「エスペラント語」って言ってたはずだがこれは正確ではないんだと知った時は愕然とした。

エスペラント語の発音などに影響を受けただけでエスペラント読みに変換したものではないのだ。

地名としてならばエスペラント語でも『岩手』→『IWATE』なのだ。

もしやるとするならば

『岩』→『Roko』『手』→『Mano』で『Roko mano』がエスペラント語で岩手を表現する一番ストレートな変換。
歴史的仮名使いの『いはて』もじり説だと『Ihat』+理想郷『Utopio』からどんどんみやけんが変化させていった・・・・

この他、モリーオ(盛岡)ハームキヤ(花巻)、センダード(仙台)シオーモ(塩竈)、トキーオ(東京)

適当じゃないか!(;´Д`)

まあ今観光として地元の人が利用できているんだから結果はオーライ。それにみやけん本人が説明していないからわからないままでいいのだ。

・・・・だが日本人としては納得ができないわけだ。

やっと本題の入口にたどり着いた。

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画像もやっと入口。

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無料でお茶出してるのは素晴らしいおもてなし(・∀・)つ目 

『イギリス海岸』は泥岩層が見えるのをイギリスのドーバー海峡に例えてみやけんが名付けた呼び名。

みやけんはここで化石も発見している。

さて『地名』とは何か?

地形が人間の心をはぐくむ土台なら地名は人間が地形に与えた『記号』だ。


ここ数年、ネットで何回か出てくるネタに

『この漢字の地名は危険!いますぐ引っ越せ!』とか『危険な地名トップ100!』

これがね、もうね(´_ゝ`)

だから引っ越すのって金があればいいかもだが、建てたばかりの一軒家とか先祖代々の土地ならそうもいくまいて。

それにその土地もしっかり改良されたり治水や斜面工事が完了して安全なところだってある。

むしろ危なくない地名なのに災害対策が老朽化して大雨などでそれが露見することのほうが珍しくない。

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どうやったってこの水位で見えるはずがないね

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まあ歩いてみるよ(`・ω・´)

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一か所目なのにすでにびしょ濡れである。レインパーカーを羽織っていたがあっという間に浸透してしまう。

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あらこの柵好き(*´ω`)

見た目もそんなに悪くない(でもチープ)し万が一水害で破損しても痛くもかゆくもない。しっかりした物体は設置する時ばかりではなく壊れた時に環境を破壊する可能性もあるってことです。これくらいシンプルで換えが利くのがいいぞ(`・ω・´)

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しかし緩い

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入らなかったよ。朝早かったし。

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猿ケ石川が合流するところが階段状になって降りられる。

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なんで線香を置いていくかね・・・・

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雨でつるつる滑るがここは泥岩層が常に露出している。もちろんみやけんが愛したイギリスはもっと凸凹しているわけだが。雰囲気だけでも味わおう。

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白いはず。だが雨で鈍色に沈んでしまいこの地層のようにはっきりはしない。

またダムができたおかげで水位が上がってしまい昔のように見れなくなった。

これを「景観を壊しやがって(# ゚Д゚)」と騒ぎたくなるかもしれないが北上川はダムがないとダメだ。

北上川は長大な国内主要河川としては一番勾配が緩い(たぶん)

画像21

引用こちら

よく日本三大急流とかそっちは話題になる。自分も橋の本を読むとだいたい急な流れのほうが取り上げられる。水と日本人の戦いには急流暴れ川が良く似合うのは仕方がない。

大雨が降ると普通の急勾配なら海に向かって一気に流れ落ちる雨が北上川は留まる。

緩すぎる勾配はゆったりとした流れでゆったりと溢れていったはずだ。

普通の堤防決壊とは違い、物理的に水面と離れていない田んぼや畑へ蛇のように静かに入り込み、水はせっかく植えた作物をゆっくりと潰していったはずだ。

緩い勾配と『北上川癌狭窄部』と呼ばれる狭幅な箇所をなんとか治めるには治水はもちろん逃げ場のない周辺で人が米を作るためにダムが必要なのだ。

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例えば『江』『浦』『沼』『浜』。

これらがつく地名は『標高が低い』『水害が多い』土地につけられることがよくある。

で、さきほど言ったような「はい!危ない!はい死んだ!」みたいな週刊誌がやる書き方や雑学本のような取り上げ方はアホである。

ご先祖達が

「この土地はこういう土地なんじゃぞ」とせっかく教えてくださったわけだ。

となればそういう土地に住むのがNGという脊髄反射ではなく

「雨が降ってるけど大丈夫だろう」

と油断しないで避難所が開かれたら無駄足になっても避難しておく、家を建てる場合は床を底上げする・・・・それでいいじゃんと思うのだ。


安全な土地にだけ人が集中したらどうなりますか?土地代が上がるだけじゃない、狭くなり人口集中で発生する問題やトラブルが表面化する。

また地震などの避けようのない巨大災害の時に全滅する確率が高くなってしまう。そこに集中しているインフラや設備、文化財まで一瞬で失う。

リスクを避けているようで新たなリスクを産んでいるだけ、という視点でこの『危ない地名』を取り上げている人は・・・・見たことが無い。

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やきうかと思ったゾ彡(゚)(゚)

まず今の取り上げ方もズレていると思う。

そうなるとみやけんのやったイーハトーブは

『文学的オノマトペ』であって地形を知り尽くした男にあるまじき地名破壊行為じゃないかと思うのだ。

地図に載せようとかそういうことをしたわけではないのだが、みやけんは作品の根底に自分の学んだ地形地理鉱物農業がありながら、あまりに作品の中の理想郷に逃げ込みすぎたのではないか?

それを羅須地人協会時代に現実とすり合わせようとしてみたが失敗、東北砕石工場技師は原点回帰だったのではないか?

と予想してみる。

かなりデカい言いがかり(;´∀`)

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みやけんをただただ冷徹に地名の側面だけから斬りつけてみる。

たぶんファンはじめ日本人は彼の見事な文章に引っ張られすぎてるんだと思う。

近年はみやけんの神格化を解きほぐすアプローチも増えてきた。

それに乗っかるカタチだ。

たぶん高瀬露が見たみやけんもそういう神格化で消えた奥底なのじゃないかとも思うし。


に続きます

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