開かれなかった扉 (その2)

(前章より続く)「この音楽の未来はどうなっていったのか」と書いたけど、実はそのことを述べようとすると気が重くなる。「この音楽」に表されている可能性は、扉の向こう側に閉ざされてしまったように見えるからだ。しかも当人達によって。

オレの勝手な感想でしかないのだが、”新しいモノ“を創って発表していく過程で停滞したり後退したり倦怠したり放擲したりしてしまう、そんな辛い時期が創作者には必ず存ると認識している。

可能性に満ちた未完の創作物は、欠点を容易に看破されるし美点は婉曲して解釈されたり剽窃の対象にすらなったり、そのモノ自体も苦難な状況におかれてしまう。

それでも可能性が実現することの素晴らしさを信じて、ひとは創作し続けモノを残していくのだろう。出来れば一つだけではなく幾つもの可能性を花開かせて実を結ばせたい、とも。

その可能性の扉は、遠く離れた土地にもあるだろうし近所の路地にもあるだろうし自分の部屋にもどこにでもあるだろう。一つでも多くの扉を開きたい、けど……!

                 *

上掲の曲を初めて聞いた時、オレは冒頭二分間の目眩く和音進行に「うわぁ !」と喜びつつも、その直後から最後まで続く典型的な音の響きとの落差に正直愕然としたことを憶えている。(続く)

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