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こうして僕は虐められるようになった。【第1話続き:兄とおばあちゃん2】

おばあちゃんに包丁を突き付けたその日以来、自分は自分を好きになれなくなった。この出来事が成人した今でも自分の内面をじわじわと蝕み、今までの自分を好きになる行動を一つ一つ丁寧に帳消しとしていった。当のおばちゃんは、あの日の事は忘れたかのようにいつも変わらず優しく接してくれた。どこまでも優しく聖人。絶対天国に行ってる。そして自分は、、

兄はおばあちゃんの事を「セミ」と呼んでいた。

セミは捕まえようとするとおしっこをひっかけて飛んでいく。
おばあちゃん(90歳)は相当足腰が弱っており、お尻の筋肉もないためか立ち上がって移動するときにおならをする。そこから兄はおばあちゃんを「セミ」と呼ぶようになった。
ある日セミの死体を発見した兄は、「あ、セミ死んでるwwwwww」と大声で爆笑し、「うちのセミは90歳まで生きてるのに、もう死んでるww」と不快な冗談を言った。兄が冗談を言うと笑わなければならなかった。不快に思った自分だが笑わなければならなかったため苦笑いをしたところ「なに、その顔」とつまらなそうな顔をして顔面にフルスイングのパンチが飛んできた。そのあと、砂場の土を食えと命令されやむなく口に入れた。
こんなに理不尽な命令にも条件反射的に聞き従うように完全調教されていた自分だが、一度切れてやり返したことがあった。

小学6年生のクリスマスの日のことである。兄は中三。
兄は体が子供の頃から大きく、食欲も旺盛で下二人のお菓子も搾取していたため、まるまると太っていた。
クリスマスのケーキといえば子供のころを思い出していただきたいが、格別においしかったのではないだろうか。食卓に並ぶ食事も、うちは毎年ケンタッキーを用意してポテトやジュースなど子供の食欲を掻き立てるラインナップとなっていた。毎年この食事を自分は楽しみにしていた。その楽しみにしていたクリスマス前日。私は兄から無慈悲な命令を受けた。

小学6年生 12/24
いつものようにお菓子を独占した兄
兄「お菓子あげる」(顔面に思いっきり、食べかけのグミを投げてくる)
僕「え、うん」
嬉しくてしょうがなかった。普段独占しているのに食べさせてもらえた。正直グミを食べられる以上に、兄が優しくなったのかなと期待し、

うれしかった。

兄「これと明日のケーキ交換ね。」

泣いた。小6にもなって情けないかもしれないがケーキ一つで涙が止まらなかった。

兄「ケーキごときで何泣いてんのwwwwwキモwwwwwwwww」
続く

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