百合を部屋に飾るなんてと思ってしまった。
「百合の花はきれいだけど、ひとり暮らしの部屋に飾るのはなあ」
このあいだ、お花屋さんで店主さんと話しながら、白百合を見てぽろっと言ったわたしがいた。その言葉を、何気ない言葉かもしれないんだけど、どこか引っかかって、家に帰っても考えていた。
じぶんで言っておいて、わたしはなにに引っかかっているんだ?
百合の花は、大ぶりだ。気品があって、ひとり暮らしには華やかすぎる気がする。
黄色い花粉も落ちてめんどくさそうだ。
香りも強いイメージがある。玄関に置くとかならいいかもしれないけど、食事もするワンルームには似つかわしくないのではないか。
いろいろ理由を並べ立てるじぶんがいた。
けど違う。
本心はこうだ。
百合は恐れ多くて、じぶんに似合わない気がする。
百合の名前を持つ友だちが、名前に引け目を感じていたのも、じぶんごとになるとわかる気がする。彼女には百合は似合っているんだけどね。
イメージ。イメージがすべてを決める。現実も変える。
誰も禁止にしていないのに、思い込みで百合を選択肢から排除していた。
そういうじぶんを、変えたいんだ。
百合のことを調べてみた。
百合にもいろんな種類がある。白だけでなく、黄色、ピンク、オレンジなど、さまざまだ。カタチも、八重咲きの百合は、よく見る百合よりかわいらしさが際立つ。
花が開きはじめたら、花粉の落ちる部分は取り除いてしまってもいいらしい。そんなにめんどうではなさそうだ。
しかも、夏の花なのでこの時期はもちがよく、長く楽しめるらしい。
香りがどうしても気になるようだったら、食事中だけ玄関に一時的に移せばいい。
なんだ、全然、大丈夫じゃん。
じぶんへの言い訳は、いつも鎧のようで、重くて頑丈だ。そのなかの柔らかくてみっともない本音に、正直でいたい。
次に花を買うときは、もしお店にあったら百合の花を飾ろう。
もしも百合を買って、失敗でもいい。いっぱい試して、いっぱい失敗もして「すき」を見つけたい。
ひとつ、考えのトンネルをくぐり抜けて、ちいさな新しいチャレンジを見つけた。しあわせってこうやって見つけていくのかなあ。ささやかなことが、うれしいんだよな。
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