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運命のピアス

多くのアクセサリーを捨てられたのは、運命のピアスに出合ったからだ。

1月のある日、ハワイのホノルルで、ダウンタウンをうろうろしながら写真を撮っていたとき。そのお店を見つけた。

「GINGER13」

店内には、天然石を使ったアクセサリー。ピアスもネックレスも、オーナーでジュエリーアーティストの、シンディ・ヨコヤマさんがつくったものだと本人が教えてくれた。グラマーで黒目黒髪のシンディさん。パキっとした赤のリップが似合っていた。

私は英語はほぼできないけれど、ガラスケースの前で話して、いろんなことを教えてもらう。
「この石はなんて名前?」
「どんな石なの?」
「これ、すてき!」
そんなことをジェスチャーをまじえてカタコトの英語で聞くと、なめらかでやさしい英語が返ってくる。

個性的で、それぞれの石の良さが伝わってくるアクセサリーがいっぱいあって、悩んでしまった。そう、もう買うことは決めているのだ。問題なのは、どのこを連れて帰るか。

お店のなかをゆっくり一巡して、いちばん心がときめいたピアスに決めた。

ラブラドライトという、一見地味な石。だけど、ふしぎな色のきらめきが、角度を変えると石のなかで泳ぐ。

しずかにひかえめな石もあるけれど、わたしの選んだピアスの石はどの角度でもひかりが泳ぐ石だった。

「これはとても特別な石よ」

英語でシンディさんが、ちいさく囁く。
それはわたしにもわかっていた。
この石は、特別だ。間違いなく。

むかしから、ラブラドライトがすきだった。けれど、ここまで惹かれた石もない。

「アシンメトリーにつくっているの。対になるピアスにも、ラブラドライトとムーンストーンを使っているわ」

シンディさんが指をさして教えてくれる。ムーンストーンは、6月の誕生石。6月生まれのわたしには、運命としか思えなかった。買いものをするときの、欲しくて仕方ないひとの症状のひとつ「こじつけ」なのかもしれないけど、たしかにわたしはそう思った。

すべてのアクセサリーはシンディさんの手づくりした一点もの。しかも、お店はハワイ。ここで買わねば、わたしはずっと後悔することになる。

「これ、買います」
「いいものを選んだわね。
 ラブラドライトは、MAGIC STONEなのよ」

ちから強く、シンディさんは笑顔でうなずいた。
わたしはうれしかった。

日本に帰ってきてから、風の強い日や、クライアントを訪問するとき以外は、よくこのピアスをつけている。
集めていたほかのピアスは、その多くを捨てた。ついでにネックレスも捨てた。きちんと選び直したものだけが、いまはケースにきれいに収まっている。

いままでアクセサリーは、「武装するためのもの」だと思っていた節が、わたしにはあった。なにか外敵から身を守る鎧のようなものなのだと。
でも、このピアスを買ったとき、ちがうと気づいた。

アクセサリーは、
パワーを増幅してくれるもの。
わたしらしくいることを助けてくれるもの。

これからずっと、一生大切にしていきたいなと思う。
よろしくね、わたしの運命のピアスさん。

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