[日記] 超青春

九州での実習が終わった。

二か月間というのは丁度よくて、これより短いと大して思い入れもなく終わる。しかし三か月以上の期間となると、私の化けの皮が剥がれていつも通り嫌われるだろう。

この二か月は、私の中で一生忘れない二か月と思う。
メンタル面の乱高下で周囲に不幸を振り撒いてしまったのはさっさと忘れたい。どんなヘラ案件があったのかは職場の人よりも私の記事を読んでくれている君たちの方が詳しいと思うよ。

今日、お世話になった人に挨拶に回った。嫌われもせず、かといって無関心でもない「丁度いい別れ」は青春を感じた。青春コンプを自覚しているからこそ、こういう出来事で感傷的になれる才能がある。

他にも、私が自覚している才能の一つに「年上と仲良くなれる」というのがある。家柄の関係上、その術は身に着けてきた。だからより別れが辛い。
同年代は知らん。仲良く出来たことねーや。

実習先は製造職だからか高卒の人が多い。
だけど見下すとかは全く思ってなくて、むしろ早く社会に出たことを尊敬してすらいる。
持論だけど高卒の人っておもしろい人が多いように感じる。
大卒になっちゃうと同じような服装で同じような趣味で同じような話題しかできない人が多い。少なくとも私の周りは。これは同期に向けた悪口です
私は変わった人(誉め言葉)が好きなので。

いろんな人に挨拶をして、十人十色の反応が返ってきた。一般的な見送りのセリフを吐く人も少なくなかったが、それはそれとしてちゃんと受け止めた。
以下、面白かった反応と青春を感じた要素を書き留めます。




「最後だから言うけどさ、お前みたいなやつを他にも知ってるんだよ。どうしようもなく無気力で根暗な奴。でもさ、そういう奴って頭の回転が速いから出世するんだよ。腹立つよな。あいつらに使われると思うと。お前もその一人ってこった。せいぜい出世してくれ。」

最初に挨拶に伺った人からこのようなことを言われた。「憎まれ口風の激励」は大好きだ。自分で自分のダメなところを知っているからこそ、寄せ書きにありがちなお世辞は嫌いだから、この憎まれ口風は素直に嬉しかった。
青春ぽいよね!



「ふ~ん。ところでさ、お前、痩せた?」

このパターン最高~~~!!!
いつもの世間話をするパターンね。こういう人は余命が明日でも「普段通り過ごす」って言うタイプ。
これは邪推だけど、「痩せた?」というのは実習最終日だからこその話題だと思う。この実習の成果を見た目で示している。
これ以上痩せてどうするんだという思いはありますが・・・。



「また死にそうになったら連絡してくれ。すぐ都会行くわ。観光ついでにな!」

この人はメンタルが怪しくなった時に一番お世話になった人だ。
いろいろな物事の決定権を担っている人で、だからこそ私に対して最大限の配慮してくれた。同期と同じ部屋にならないようにしてくれたり、社内診察の手配をしてくれたり。

実習で一番感謝している人。
だから、挨拶では最大限の感謝を伝えたつもりだったんだけど、こうやって軽く返されるとまた甘えたくなってしまう。もっと困った顔で送り出してほしかった。
うん。頼りすぎたな。よくない。でも頼っていいと言われたし・・・。



「これからも頑張ってください。」

現場で一番偉い人に挨拶に行くとこれだけの反応が返ってきた。
たったこれだけ。だけど、権力を感じる言葉だ。昂然たる様子ってこのようなことをいうんだろうな。
偉大なる母性を感じる。ラスボスやん・・・。



「やっとか。お前が居なくなってせいせいするよ。そうだ、十年後、どっちが金持ちになっているか勝負しようぜ。いまから予定いれとくぞ。まあ、頑張ってくれや。」

こいつ・・・。
こいつとの会話は一番青春していると感じている。

配属されたばかりの時に喧嘩をした。お互いがお互いのことを嫌いな性格だと認識し、イラつくと言われた。といってもお互い大人なので少しの言い合いだけど。
こいつとは現場で一緒になる機会がそれなりに多く、お互い苦手意識を持っていたのだけど、少しずつ打ち解けていった。

口うるさいこいつと口下手な私。性格が真反対だから普段の私ならばこのような奴はシャットアウトするのだけどどこかで親近感親近感を感じた。
どうやらお互い嫌われ者だったらしい。思ったことをすぐ口に出す性格だから。喧嘩の理由もそれ。一方で私が嫌われた理由は根暗だからだ。
理由は正反対なのにどこかでシンパシーを感じたのはそういうことなのかもしれない。
最後の方は、嫌われ者同士で温泉に行ったりドライブをしたりするようになっていた。私が喋らなくとも一人で会話を続けてくれるから居心地が良かった。
「丁度いい奴」ってこういうのを言うんだろうな。ここに残ったらこいつとは友達になれそうな気がする。




会社を出ると酷い光景だった。強風に煽られ真横から雨が降っている。
台風が近づいている。早く帰らないと電車が止まってしまう。
偶然方向が一緒だった二人と一緒に帰った。

横から降ってくる。傘が役に立たない。タクシーを呼ぼうにも電話がつながらない。繋がったとしても「空いていない」で一蹴されそうな気がして、早々に諦めた。

傘もささず雨の中を3人で全力で走った。二人は大変な顔をしているが、私は心の中で「こういうことがしたかった!」と思っていた。
だって青春みたいじゃん?

駅に着くと、お互いがお互いのひどくなっている顔を笑いあった。化粧は落ち、前髪は縮れてしまっている。
ひとしきり笑った後、3人のうち女性の服が透けていたからすこしドキッとした。邪な気持ちを抱いた気持ちをを恥ずことにしたが、同時に ああ,思春期ってこういうのだよな。 とノスタルジーにも浸っていた。

田舎の駅でただでさえ人が少ないうえに、台風の影響で便数が減少している。
だから、頼りない雨どいの下に置かれている汚れたベンチに腰掛け、電車を待っていた。
時間はたっぷりある。
実習最終日だからこそ、これからのことを話し合った。

私は出世するらしい。最初に挨拶へ行った人のことを思い出していた。
そうか、ここに来てよかったな。


帰宅して片づけを行っているときふと目頭が熱くなった。青春ってこういうのだよな。と思っていた。

実習初日は、
「田舎に居たくない、仕事キツイ、早く帰りたい。あばばばば~~~~」
と弱音しか吐かなかったのに、なぜか寂しくなってきた。
初夏の田舎で経験したこと。少しは成長できたかな。まさかここまで新鮮な気持ちになれるとは思わなかったよ。

今日の晩御飯は実習中よく通っていた大衆食堂へ行くことにした。
下町の、おばあちゃんが細々と経営しているご想像のような食堂で、常連客が大多数を占めている。
常連のおじちゃんが、目元が赤くなっている私を見て話しかけてきてくれた。

「兄ちゃん、辛いことでもあったんか?」
「いや、嬉しいことです・・・。」

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