遊悠 1

渋谷に昔東風戦の雀荘がありました。
店の名前は遊悠(後にFIRSTに変更)なくなった麻雀店などいくつもあるのですがこの店で働いた従業員から堀プロ鈴木たろうプロ村上プロ仲林プロ松ヶ瀬プロ個人店の雀荘とは思えないほどのMリーガーを輩出しております。

自分がこのお店がオープンする時から店が軌道に乗るまでの間、手伝いをしていたのでこの店の思い出を語ります。



ある日川野から電話がきました
「りょうさん渋谷に新しい雀荘ができるのですが面白い展開になりそうなんで話聞いてもらえませんか?」

金融時代の同僚の川野は求人誌で雀荘アルバイトを見つけて先週からオープン前の雀荘で働き始めたらしい。

店長と呼ばれる岩尾と会ってみると今までは恋人商法で英会話のCDを50万で売っていたのだが、歌舞伎町の遊学堂や遊家に遊びに行くうちに雀荘をやってみたくなったらしい。

店の名前の遊悠についてはその流行っている遊学堂をパクったものだった。

お客さんに遊学堂の系列店なんですか?と聞かれると岩尾はニッコリと
「直接は関係ないのですが」と答えていた、直接どころか全く関係ないんだが。

アルバイト求人誌で集められたメンバーは大学生の麻雀好きでルールはわかるが点数計算もおぼつかない面々。それは岩尾も同じだった。

つまりZOOと同じレベルのメンバーでマイルドとはいえ東風戦を来月オープンにむけての研修をしていた。

研修風景を見に行くとさかえ系列店のような「リーチ頑張ってください」
「3卓のお客様よりゲーム代をいただきました」

的な声出しの研修をずっとしていた。

とりあえず岩尾に遊学堂が流行っている理由とまず最低限オープンまでに皆がやれなければならない事をアドバイスした。
岩尾は素直に言葉を受け入れて頷きながらメモまで取っていた。
帰り際
「りょうさん、私をたすけると思って店を時々手伝ってくれませんか?」と言われた自分は川野の計画どうりに、研修内容を指導することになりました。

まず声出しよりも、確実にゲーム代をもらい忘れないようにする方法、近隣競合店であるジパングをサービス内容で負けないようにする方法を徹底しました。それぐらいアルバイトの質は悪かったです。

とりあえずゲストプロを呼ぶことを提案して、セット仲間であった村上プロと旧知のたろうプロを好条件で呼ぶことになりました。

たまたま岩尾がたろうファンだったために電話一本でたろうを呼ぶことにより、さらなる信頼を得ることになった。

とりあえず麻雀をまともに打てる従業員が必要だったので、プロになる前の堀を含む中野ふぁーろん 元メンバーを呼びました。

堀などはここから何年もこの岩尾家とは家族ぐるみの付き合いだし、結婚して、麻雀プロをやめて畳屋を継ぐ事を真剣に考えた協会プロの兄弟製造機こと水城さんと出会ったのもこのお店だった。

この店であった事件をいくつか書いていきます


開かずのロッカー

従業員には私物をいれるロッカーがありました、そのロッカーの1番左下に誰も使ってない、ロッカーがなぜかありました。
たまたま電気がついてない時にそのロッカーの隙間から光が漏れていたのです。

最初は気のせいと思っていたのですが、光が明らかに漏れてるのを再度確認しました。

ロッカーの予備の鍵の管理を任されていた自分は好奇心に負けてロッカーを開けてしまいました。

すると中には携帯電話が12台入っています、全部使える状態のものでした、ひょっとして雀荘は隠れ蓑でなんか犯罪組織の可能性も感じるぐらいの数です。

ガラケーの時代なのでそれぞれのメールを確認してみると大量の受信メールがそれぞれにありました。

他人名義の携帯のメールを見ることを躊躇する倫理観は自分にはありません。

メールを読んだらどう言った携帯かがわかる内容でした。

全ての携帯に毎日何通も

元気にしてる?
連絡だけでも待ってるよ
今日は寒いよね

みたいな一方通行のメールが届いています。

メールの頭まで遡ると、返事をしています。

今日もがんばろうね
来週ご飯楽しみだな
おやすみ

など普通の恋人どうしのやり取りがあり、ある日返事が来なくなった女性を心配して毎日メールを送ってきてるのでした。


遊悠の前身の恋人商法の遺物でした、恋人商法とは出会い系サイトで冴えない男性を呼び出し、彼氏を探してる女子社員とデートをさせて、やがて営業のノルマのために会社に説明だけ聞きに来てとお願いされます。
女の子からは絶対契約しちゃダメだよ、説明聞いてくれるだけでいいからかね、あなたしか頼める人いないからと話されています。  

ただ遊悠があった以前の事務所に男性が連れていかれると契約をするまでは男性は帰れません。

女の子も新婚旅行で海外行った時に英語話せる旦那は憧れるなどと言って、
月に一万円ぐらいで仕事もにも役に立つ英語教材を絶対買うべきだの状況に追い込まれます、
5時間監禁の後には学研クレジットの48回ローンの契約書と彼女ができたかと言う妄想を手に男性は帰路につきます。

クーリングオフが可能なら間は来週のデートの予定などのメールのやりとりは続きますが、その期間が過ぎると携帯はこのロッカー中でずっと寂しく保管されていました、男性の気持ちと一緒に暗いロッカーの中で





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