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アセクシャルの違和感との出会い

どうやら、恋をすることと、カラダのどうこうは、ひどく近しいところにあるようだった。

それに気がついたのは、高校3年の頃。
当時私は、高校2年の秋に付き合い始めた彼氏がいた。何度か友達として遊びに行って、告白されて、付き合った。友達として楽しかったから、別に付き合うのになんの問題もないのだろうと思っていた。

彼と付き合いだして、周りがザワザワし始めた。
正直、彼は校内で評判が良くなかったようだ。まぁ確かに変わり者だった。
そのためか、周りにいろいろ心配された。
「まぁ、なづめがいいならいいんじゃない?」
この言葉は当時よく聞いた。

多分、当時の私は、彼氏というものは友達で良いのだろうと思っていたのだろう。
告白という段階を踏んで、互いが互いを承認した、特別な友達。多くの場合、異性ではあるけれど。
だから、彼と付き合うことになんの不思議も感じていなかった。
何回か遊びに行った。楽しかったと思う。それで良いのだと。

一応付き合っているのだからと、恋人らしいことはしてみた。
違和感はないわけではなかった。「気持ちがないのになんで恋人をしているんだろう」いう違和感は、でも名目上恋人だしなくらい適当な気持ちの裏にちらちら見えている程度だった。自覚するのはもっとかなり後だ。

高校3年になって別れて、それがまた噂となって広まって、
「あぁ、よかったね」とか、「恋は盲目っていうから」とか、なぜか励まされたり安心された。
まるで洗脳でもされていたかのような反応だった。ひどい時は「弱み握られてたの?」と聞かれた。
そりゃ確かに別れた理由はちょっとまぁ酷かったけれど、そこまで言われてしまうなんて、当時の彼はもっとこいつらを怒っていい。

別れたという話を聞いて安心していた彼女たちの心配ごとの半分はカラダのことだったようだった。
何かされやしなかったのかとか、ひどい経験をしたんじゃないかとか。
不思議だったのは、「した」こと前提だったから。
恋人同士がそういうことをするらしいということは高校2年ごろに知ったので、まぁそういうこともあるのだなくらいには思っていた。けれど彼女たちがいうには、それは付き合っていれば「当然」のようなのだ。

結果として、してみようとはしたので言い返しはできないのだが、「しない」選択肢は私たちにはなかったのだろうか。
付き合う=そういう行為をするということが当たり前のように出来上がっていることが、私には不思議だった。


大学生になって、周りの色恋を見聞きして、付き合うこととカラダを許すことはほぼ同義らしいということに気づく。
これはでも、高校の経験から分かっているつもりだった。
ただ、恋人になると発生する確定イベントだとは未だ思っていなかったのだろう。大学生になって周りと自分の認識の違いを叩きつけられる。
なるほど、コイビトは友達じゃダメだった。

そうなってくるともう訳が分からなくなる。
好きだからそういうことをしたいのか、
それともそういうことがしたいから好きなのか。
マッチングアプリの広告は女の子が緩慢な動きで上着を脱ぐ動画になっていたりする。
それは、「恋人が欲しい」という消費者のニーズに合った動画なのだろうか。
結局セフレが欲しいのとコイビトが欲しいのは変わらない心理なのか。
まぁ男女によっても違うのかもしれないが。

本当になんでも気兼ねなく話せる友人がいるなら是非突っ込んで聞きたい部分ではあるのだが、こんなこと一体誰に聞けばいいのか。


大学生になって、ひとり、仲のいい異性ができた。趣味の話ができて、遊びにも行った。そして、やはり告白された。

多分私が望んでいる関係と、彼が望んでいる関係は違う。
だから断った。何度も断った。
遊びには行くのになぜダメなのかと、相談した友達に聞かれた。
でも、どうやらコイビトになると、仲の良い友達でいてはいけないらしい。
コイビトと友達が違うなら付き合うべきじゃないと思ったのだ。
結局そこから臆病になって、誰とも付き合えそうにない状態が続いている。


就活が終わって少しして、アセクシャルと自認した。
ようやく、この違和感の正体を捕まえることができた。

それでもまだ色々と不安とか、疑問は浮かび続けている。
この件に関して、分からないことを分からないと聞けるほど子供でもなくなってしまったことも大きいだろう。

正直に言えば恋人は欲しい。
将来一人になるのはやはり怖い。
っていうか、一般的な名称で言うのであれば、とても仲の良い友達でいい。特別と互いに認識し合った友達がいれば。
ただ、「一般」でない以上、望みは薄い。
おそらく多くのアセクシャルが、似た寂しさややるせなさを感じて生活をしているのだと思う。

私の感じているこの違和感は、アセクシャルである限り抱えていくしかないのだろう。

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