エピソードA-2:父とお金にまつわるエトセトラ 其の二。

地元の子供は皆が家から最も近い公立に高校まで行って、多くは就職する。実家は農家だったので、地元の農協とは強固なコネがあった。私が高3の夏に、父が言った。

「Aコープのレジ、4月から頼んでやったから」

もちろん事前に相談なんてないが、地元ではよくある話だ。自分が緑色のエプロンをつけてレジを打つ姿は容易に想像できた。ところが私はなぜか学校の勉強がそこそこできた。で某国立大学を受けたら合格した。家から通える大学ではない(正確には、家から通える大学はない)ので、行くなら一人暮らしだ。そうなると母ひとりの収入では賄えない。ついに母は父に言った。

「あんた、ここで金出さへんかったら、人間としてクズやで」

このひと言が田舎のご長男様のプライドを大きく傷つけたらしい。晴れて私は、台所風呂トイレ共同の4畳半の貸し間で大学生活を始めた。しかし、コトは早くも翌年の2月に起こったのだ。

其の三 につづく。

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