【Review】2019年J1第22節 川崎フロンターレVS.名古屋グランパス「弱くなった自らと向き合えるか」

はじめに

 2019年J1第22節の川崎フロンターレは、0-3で名古屋グランパスに負けました。昨季7敗に対してまだ3敗目だからまだセーフということはなく、勝点3を逃した(引き分けor負け)のが昨季13で今季はすでに12試合なので、もう勝点を落とせなくなってきました。
 名古屋は11戦ぶりの勝利と思わせない出来で、前回対戦よりもチームの形が整理されたように見えました。たしかに終盤に追いつかれがちな理由はわかってしまいましたが。
 ただそれ以上に川崎の悪いところがたっぷりと出てしまいました。名古屋は川崎のMAXを引き出してくれる相手だと思っているので、少し残念でした。ちなみに谷口の退場は前回対戦後のコメントを忠実に実行した結果なのかも…。

ふだんクールな谷口彰悟は「差を見せつけられなくて残念。次、アウェーでやるときは、ボコボコにしてやりますよ(笑)」と冗談めかした口調で、本音をのぞかせた。
(引用元:飯尾篤史「誤審騒動で埋もれるのが惜しすぎる。川崎vs.名古屋はJ史上屈指の名勝負。」NumberWeb<https://number.bunshun.jp/articles/-/839376>)

受け手と出し手を絞れなかった川崎

 川崎は普段の守備の勝ちどころ、奪いどころのCBで勝ちきれなかったことが敗因の一つになりました。思い返せば広島戦ではドウグラスヴィエイラに、松本戦の阪野からボールを奪いきれず攻撃の起点を許していました。谷口とジェジエウの勤続疲労もありますが、この試合ではチームとして彼らに有利な状況を作れませんでした。
 名古屋は主にシミッチとネットがパスの出し手、シャビエルとジョーが受け手として中央に位置しています。これら2人の出し手と2人の受け手の複数パターンで川崎は翻弄されました前回対戦ではシミッチと米本のコンビに対して米本にボールを持たせることでパスを限定しました。しかし同じような作戦はネット相手には無謀なため、2人共を警戒せざるを得ません。そのため以前ほどパスを限定できませんでした。
 加えてやはりジョーとシャビエルが上手く、特にシャビエルは好調でした。常に後手を踏まされている谷口を見るのは久々でした。谷口が綺麗にパスカットするシーンはなかったと思います。普段通り先手を打てないことが焦りに繋がり、普段は見せないパスミスや退場に繋がってしまったように思います。
 名古屋はジョーとシャビエルの位置で起点を作れるため、そこでの優位を維持したままサイドに展開することができました。川崎は横に大きく揺さぶられてしまい、ジョーとシャビエルにプレーするスペースを与えてしまいました。
 少し意外だったのがジョーの静けさで、以前よりも一層チームへの献身性が上がっていました。得点がなかったのは物足りなかったですが、上述のようなポストプレーに加えて、2点目のように相手守備を引き付ける動きはさすがでした。これで得点が増えるようになれば、名古屋の完全復活なのかもしれません。

裏を使えなかった

 川崎は2失点後から少し落ち着きを取り戻してボールを保持します。しかし効果的に攻撃できず、たとえば阿部や脇坂といった間で受ける選手に良い形でボールを届けることが出来ません。この原因としては名古屋の高い最終ラインを下げられず、彼らの受けるスペースを作れなかったことが挙げられます。
 最終ラインを下げられなかったのは裏へのアタックが少なく、かつ質が低かったからです。何度か小林へのスルーパスがありましたが、パスが逸れたり、ふんわりパスで相手に追いつかれたりと、相手最終ラインを脅かすまでには至りません。
 また少なかった理由としては、普段その役割を果たしている家長が不在だったことがあります。実はスプリント回数が多く、大体がダイアゴナルランによる最終ラインとの駆け引きです。これによって相手最終ラインを下げることができます。
この試合の二列目は右から脇坂、中村、阿部と裏に抜けるよりも間で受けるのを得意とする選手です。1トップと家長の託していた役割を小林1人に背負わせてしまったため、彼らを活かす場を整えることができませんでした。
 名古屋を相手陣地に押し込むことができませんでした。せこさんが述べた通り、こうした展開だと山村の能力を活かしきれません。抽象的ですが、山村は相手の矢印が後ろ向きになっている時に輝きます。一方で今日のように前向きの矢印で向かってこられると上手く躱せないため、パワーを発揮できませんでした。
 脇坂も同様に押し込む展開で活きると感じました。名古屋戦では脇坂が何度も相手の守備に引っ掛かるシーンがありました。ゾーンで構えられている状況だと、ボールを受ける位置どりで相手を飛び込ませないことができます。しかしこの試合ではミドルゾーンでの攻防が多く、ボールホルダーに対して激しく当たってこられる状況では輝きにくいように見えました。前半だけで交代になったのは、おそらく激しいエリアにおいてボールを保持できなかったからでしょう。

パスへのこだわりがなくなってきている

 登里が述べているように、自分たちで流れを手放した試合になりました。普段なら通っていたパスが通らずに何度もボールを渡してしまったことが最大の敗因だと思います。たしかに大島の急な欠場がチームに与えた影響も小さくありませんでした。

登里「ボールを奪ったあとのちょっとしたパスのずれもあって奪い返され、そこから相手に勢いに乗せてしまった。自分たちから相手のペースに飲まれて行ってしまったところがある。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2019 明治安田生命J1リーグ 第22節 vs.名古屋グランパス」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/22.html>)

 とはいえ各選手のパスへのこだわりの低下が最近の不調の根本的な原因ではないでしょうか。こだわりの低下は質の低下に現れ、その結果パスを受ける選手の選択肢を削ぐプレーが増えていると思います。具体的にはスピードとどちらの足に出すかの部分です。
 パススピードが単に遅いと言うのではなく、スピードの判断がまちまちに見えます。たとえばサイドを変える時は速い方が相手を揺さぶれて効果的なことが多いです。一方で落としの時は前方向に走る味方に逆向きの速いパスだと厳しいことが多いです。名古屋ジョーの味方に選択肢を与える落としはお手本でしょう。多くの場面で適切なスピードコントロールができていませんでした。
 もう一つのどちらの足に出すのかとは、味方のどちらの足にボールを届けた方が良いのかの判断です。パスにメッセージが込められている時は、パススピードと同様にこの判断が適切です。普段の中村はそのさじ加減が上手く、ガンガン攻めさせるのか、落ち着いて回させるのかをパスだけで味方に伝えることができます。しかしこの試合ではその緻密さはなく、味方が困る方の足、たとえば敵に近い方だったり走る向きとは逆だったりに出すことが多かったため、プレーに連続性が生まれにくかったです。
 さてここで挙げたパスの質については、技術のあるなしもありますが、それ以上に意識し続けられるかどうかに依存する部分が大きいと思います。はじめに「質」ではなくパスへの「こだわり」としたのもそのためです。名古屋の風間監督が自信に言及することが多いのも、パスへのこだわりを捨てずに戦い続けることがパスの質を高めてくれると考えているからでしょう。
 いまの川崎がこだわりを持ち続けられるかというと、難しくなってきているように思います。チェルシー戦でパスの質の高さを見せつけられ、改めてパスにこだわることを反省したにもかかわらず、以降3試合でパスの質が上がっていないことは、チームが向き合わなければいけない課題でしょう。原因がどこかはわかりません。全員がこだわりを持てていないように個人的には見えますが、もしかしたら技術が落ちているだけかもしれません。どちらにせよその原因が不明なまま「自分たちのサッカー」に戻ろうとしても迷うだけです。名古屋のパスと比較して、自分たちの現在地を見直す必要があるように思います。

おわりに

 負けたため残り12節で首位との勝ち点差が9に広がりました。そろそろデッドラインが近そうです。優勝を目指すには立て直す時間は限られています。
 今季中の技術への回帰はおそらく難しく、そうであればその事実に対してチームが割り切れるかが重要になります。そしてパスに頼らずも、相手を見てサッカーができるかがポイントになると思います。これまではボールを保持しながら相手を見てサッカーをしてきましたが、ボールを保持しなくとも相手を見て相手の嫌なプレーを選択できるかどうか。イメージとしては今季アウェイ神戸戦や昨季のホーム鹿島戦でしょうか。
 その意味でこれからのキーマンには阿部を挙げたいです。今節はパスミスが多く精彩を欠いていたので、次こそは。そんなことよりも次節のCBはどうなるんでしょうかね…。

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文系大学院で浮世から離れて文化とは何かを考える日々、に戻りたいと思う毎日。川崎フロンターレサポです。サッカーを文化に。 twitter:@frontale_foot6

2019_川崎フロンターレ

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