【Review】2018年J1第34節 川崎フロンターレVS.ジュビロ磐田「ミッション成功したかに見えた磐田」

 2018年J1第34節の川崎フロンターレは、2-1でジュビロ磐田に勝利しました。

ミッション成功したかに見えた磐田
 磐田は難しいミッションを抱えて挑んた試合でした。残留のためには負けなければよく、0-0引き分けでも御の字でしたが、最多得点の川崎相手に0-0で終えることは相当困難です。だから磐田としてはどこかで一点は取らなければならないと考えていたと思います。そんな思惑の中で78分の大久保の先制弾は貴重で、残り12分+ロスタイムを1失点まで許容できる状況になった時点で磐田としてはミッション完了だったと思います。そのため大久保に替えてムサエフを投入して逃げ切りを狙いました。
 ところがムサエフ投入、いや大久保の交代後から磐田の守備が少し陰りを見せ始めます。実は前半から大久保は川崎最終ラインに地味ながらプレッシャーをかけていました。磐田は前半から川又大久保が2トップ気味で守備をしていましたが、その際に大久保は少し引いた位置で川崎のビルドアップを誘導しようとしていました。そのため磐田はある程度川崎の攻撃の矢印を予測しながら守備をできました。しかし大久保交代後は川又がその役を担うこともできず、川崎は中央とサイドを自由に使い分けることができます。特に中村、守田はいろんな選択肢を持ってプレーができていました。こうして磐田は守備での主導権を手放し、ひたすら殴られ続けることを選びます。
 その後83分、大久保のゴールのわずか5分後に奈良のヘディングで追いつかれた磐田ですが、すでに大久保を替えてしまったため攻勢に出ることもできず、ただ殴られ続けることを選択するしかありませんでした。去年であれば守り続けられたと思います。90分までは守り、櫻内を入れて試合を締めようとします。それでも振り回され続けた磐田は、ラストワンプレーで失点を喫します。あのシーンは登里がボールを持った時に中央もサイドもどちらも選択できる状況でした。そのため磐田最終ラインはどちらもケアしなければならず、結果的に家長へのアプローチが遅れ、PA内進入を許し、オウンゴールに繋がりました。
 こうして磐田は大久保の得点で困難なミッションをクリアしかけましたが、皮肉にも大久保の交替によって失敗に終わります。全体を通して、中村俊輔が狙われていることや、4バックの弱点であるCBとSBの間のケアなど、対処すべきところに後手後手になっていた印象で、最後の2失点は必然だったかなと思います。

懐かしい大久保
 再び別のユニフォームをまとって等々力に凱旋した大久保でしたが、相変わらずのプレーで懐かしさを感じました。得点感覚は未だ健在で、ゴールシーンはまさに大久保!という動きでした。エウシーニョの警戒をくぐり抜けて飛び込むタイミング、走るスピードとボールスピードを見極めてミートする技術は脱帽です。特にゴール前で走りながらのシュートは、50分に川崎の長谷川が中村のクロスをふかしていたように非常に難しいプレーですが、あれを難なく決めることができるのはさすが大久保です。
 ただ一方でなんでもできてしまうがゆえの苦悩も見えました。得点王を取っていた時期はすたライカーに専念していましたが、今年川崎にいた頃の大久保は中村憲剛の代わりとしてトップ下を多く担っていました。大久保は出し手としても能力を発揮するのですが、その時に葛藤があるように見えます。本人としては状況に応じて使い分けているのでしょうが、チームメイトからすると「今何がしたいのか」がわかりにくく、そのため大久保は浮いてしまい、そこで葛藤が生まれているのでしょう。この試合でも周囲との連携が良かったとは言いがたく、プレーオフに向けてどう改善するかは気になるところです。

奈良と谷口の成長
 この試合、というか今季最も成長を感じることの一つが奈良と谷口の攻撃参加です。たしかに今日の試合で奈良に決定機につながるミスがあったものの、それ以外は攻撃に厚みを持たせていました。ポイントは二つで、一つは最終ラインがどういう位置関係でもビルドアップできるようになったことです。これまでは守田ないし他のボランチが2CBの中央に入らなければ上手くいかなかったビルドアップが、どういう位置関係でも成立するようになりました。そのためビルドアップの出口の作り方が多様になり、攻撃に幅が生まれました。
 もう一つがロングパスへの意識です。これまで川崎のCBはほとんどのパスが隣のポジションに届けるパスでしたが、一つ飛ばしたパスが増えました。たとえば奈良から裏に抜ける知念へのパスや、谷口から逆サイド裏に走る阿部やエウシーニョへのパスです。これらのパスはここ2試合で特に多いですが、実は今シーズンずっとトライしてきたことでした。それがようやく実を結び始めています。今日の奈良の決定機を献上したミスも、チームとして狙っていた川崎の左サイドの中村俊輔の裏を見ていたことが原因です。まだ道半ばですが、着々と川崎の攻撃の幅を広げるために、奈良と谷口のチャレンジは続けられています。

感謝
 試合を通して普段以上にミスが散見、名手中村憲剛もパスミスするなど内容が良かったとは言えない試合でしたが、最後まで諦めずに自分たちのサッカーを貫き続けた結果が逆転勝ちへと繋がりました。これで川崎フロンターレのシーズンは終わり、優勝パレード後は完全オフに入ります。

 同時にこのnoteで続けていた2018年川崎フロンターレのプレビューおよびレビューも終了です。私事ですが今年は修論提出もあってひたすら文章執筆してました。途中そのせいでお休みしたことはいまでも後悔してますが、これは来年の糧にしたいと思います。
 一年の総括はまた後日しますが、これまで見てくださった方々に感謝いたします。本当にありがとうございました。そしてこれからも色々と更新していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。


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