【Review】UEFACL(2018-19)GroupC_MatchDay6 リヴァプールVS.ナポリ「内容は圧倒、結果はギリ」

 2018年のJリーグも終わり(鹿島は次レアル戦頑張って!)、フロンターレレビューもひと段落。FIゼミに入ってたことを思い出し、今回はジェラード好きで贔屓しているリヴァプールがお題ということで初の海外進出です。
 とはいえ今季のリヴァプールは開幕4試合こそ見ていたものの、その後の無敗行進を全く追ってません。さらにナポリはサッリ時代は何度か観ましたが、アンチェロッティになってからは初なので、ボリスタ(2018年10月号)の記事(pp.72-75)でかるーーーく予習だけしました。サポーターなので全体通してリヴァプール視点なのはご容赦ください。

目次
・最終節の状況おさらい
・負担が大きかったハムシク
・やっぱりすごいフィルミーノ
・縁の下どころじゃないミルナー
・実は薄氷を踏むような勝利だった
・小ネタを少々

最終節の状況おさらい

 第5節終了時の順位表が上図で、リヴァプールが決勝トーナメントに進出するには1-0もしくは2点差以上の勝利が条件と、ホームアドバンテージを考えれば十分可能だが、とにかく失点は避けたい。逆にナポリはそれらを阻止さえすればよく、たとえば1点さえ奪ってしまえば相手に3点の十字架を背負わせることができるという状況。順位決定方式はルヴァンやW杯とは異なるので以下を参照ください。

勝ち点は勝利=3、引き分け=1、敗戦=0。勝ち点が多い順に順位を決める。勝ち点が同じ場合は、当該チーム同士の勝ち点 → 当該チーム間の得失点差 → 当該チーム間の総得点 → 当該チーム間のアウェーゴール数 → 得失点差 → 総得点 → アウェーゴール数 → 勝利数 → アウェー勝利数 → 懲戒ポイント → クラブ係数の順で決定される。
(引用元:Sportsnavi「UEFAチャンピオンズリーグ順位表」<https://soccer.yahoo.co.jp/ws/uefa/standings/41>)

負担が大きかったハムシク

 スタメンはこちら。予習からナポリは4-3-3だと思いましたが、実際はほぼ4-4-2っぽい動き方。ボール保持非保持かかわらず、中盤が左からルイス-ハムシク-アラン-カジェホンの並びで試合を進めます。下の図はUEFA公式資料内の選手ポジションですが、ハムシク(17)とアラン(5)がダブルボランチになってますね。
 注目はカジェホン(7)で、サイドかつ前目にポジションをとっていることがわかります。試合中も気になりましたが、カジェホンは中央にほとんど関与せず、ビルドアップなどボランチのサポートは全面的にマクシモビッチ(19)に任せてました。これは左サイドのファビアン(8)も同様でした。

(出典:UEFA「MD6_2025137_Liverpool_Napoli_UCL_TacticalLineups_FullTime
」<https://www.uefa.com/newsfiles/ucl/2019/2025137_tl.pdf>)

 こうした配置はボール保持によって相手を押し込めて入れば効果的なのですが、一旦受けに回ってしまうと恒常的に中央の数的不利が生まれてしまいます。そのためダブルボランチ、特にハムシクが終始てんやわんやしており、終わってみれば両チームトップの12.45kmを走っています。後半ははっきりと4-4-2にしてサイドハーフを中央寄りにプレーさせたアンチェロッティですが、前半から出来てればハムシクの負担も軽減でき、もう少し有利に進められたのではとも。

やっぱりすごいフィルミーノ
 リヴァプールOBのキャラガーが「オフ・ザ・ボールの動きにかけてはフィルミーノがプレミアでトップ」と評価していますが、この試合でもそれを示してくれました。リヴァプールの狙いの一つに右サイドのサラーがより優位に勝負できる状況を作るというのがあり、そのために左から右へのサイドチャンジを意識していたと思います。前半7分のカウンターでは一度左に振って、ミルナーからサラーにクロスを供給することで、サラーにフリーを与えています(トラップミスに終わったが)。
 左から右を一つの攻撃パターンに据えていたリヴァプールでしたが、ここでナポリCBのクリバリが立ちふさがります。サラーはポジションを動かしながら、最終的にはクリバリとルイの間を狙い続けます。ナポリもそこはわかっていたはずですが、選んだ戦術は「クリバリ頼み」、彼の個人能力に依存して守備を設計してました。実際ゴールシーン以外はクリバリがサラーを抑えてましたね、あの巨体でスピードありすぎ。。。
 サラーも一人じゃ無理だなと思ってたところに登場するのがフィルミーノ。ナポリとしてはクリバリVS.サラーの一騎打ちなら問題ないと踏んでたところに、フィルミーノが加勢した形になります。フィルミーノはナポリCBとボランチの間に位置しつつ、中盤にボールを受けに落ちるので、ナポリは誰がマークに行くか戸惑います。そしてこの試合で狙っていたのはクリバリで、フィルミーノはあえてクリバリの視界に入るようにボールを受けようとします。そうすることでクリバリは対応するしかなく、サラーへの警戒が弱まります。こうした思惑が一番上手く行ったのがゴールシーンだと思いますので、フィルミーノの動きを意識して観てみてください(以下動画)。

 まあクリバリとの一対一の前にルイがサラーをマークしているはずですが簡単に内側に進入されていて、だから失点後クリバリはルイにブチ切れてますね。ただ初めからルイがサラー抑えきれてないのは明らかだったので、この辺りは戦術ミスかなと。前回対戦がどうだったかにもよりますが。
 ということでサラーの影にフィルミーノありでした。リヴァプールは3トップが有機的に動いていて、誰の視点でプレーを切り取っても説明できるので面白いですね。多分マネを中心に観ても同じように説明できるはず。

縁の下どころじゃないミルナー
 そんなフィルミーノ以上にいなくなったら困るのがミルナー。縁の下の力持ちどころか、リヴァプールの土台そのものです。3トップが流動的に動くので、決まった立ち位置のない3人の中盤は適宜ポジショニングを判断する必要があります。そしておそらくそのエリアごとに決まった役割をこなしているのだと思います。したがってミルナーに限らず中盤の選手は中央に陣取っていれば良いわけではなく、時にはSBのように大外を駆け上がり、時にはゴール前に飛び込むなどなど。そのためチーム走行距離トップ3はヘンダーソン、ミルナー、ワイナルドゥムとなってます。
 その中でもミルナーは84分に交代なのに12.16km(ヘンダーソンはフル出場で12.43km)を記録しているのが衝撃です。フィルミーノ同様、状況を考えてポジショニングできるのはもちろん、それがたとえ大変でも労を惜しまず動けるのが彼の最大の特徴であり、リヴァプールが良くも悪くも依存している点です。誰よりも走り回り、プレスキックも担当するミルナーこそ今のリヴァプールになくてはならない存在でしょう。

実は薄氷を踏むような勝利だった
 終始リヴァプール優位に展開した試合で、ナポリは思うようにボール保持できませんでした。しかし結果を見ると1-0というわけで、薄氷の勝利でした。リヴァプールはこの試合少なくとも1点は必要で、だからこそ序盤からガンガン圧力をかけ、速い攻撃を展開していました。多少強引でもアーリークロスを入れていたのも、早くに先制したいという思惑からでしょうし、結果的に成功します。
 後半も変わらず攻め立てます。予想以上にナポリからボールを回収できたせいもあるでしょう。ただリヴァプールは戦略的に2点目の意味は弱かったはずです。最初に確認した通り、リヴァプールは「1-0もしくは2点差以上の勝利が条件」でした。なのでもし1失点してしまえば2点目は必要ありません。なので先制した時点で1-0のまま終わらせるのか、それとも3点以上取って安全圏に逃げるのかどちらかの戦略しかありません。しかし終盤まで攻め続けたにもかかわらず、結果的に追加点を得られなかったことは結果論では褒められますが、危険な試合の進め方だったといえるでしょう。
 この辺りは昨年からも思っているチームの課題で、もう少しヘンダーソンがコントロール、もしくはFW陣が気を抜かずに仕留めてほしいなと。じゃないとまた大事な試合で勝てないっすよクロップさん。

小ネタを少々
 というわけで1-0でリヴァプールが勝利、そしてなんとかグループステージ突破を決めました。ナポリはたった1敗なのに敗退だなんて辛すぎる。リーグ戦って総得点が重視されるから手堅いチームにはちょいと苦しいルールですね。
 あとは印象的だったことを二つだけ。一つはナポリサポが失点直後に号泣したこと。まだ前半途中で敗退が決まったわけじゃないのに。目の前の試合に全身全霊を注いでいるからこその涙なんだなあと思う反面、順位決定のルール知ってる?1点取るだけで君たち大丈夫なんだよ?むしろリヴァプールはまだ安心できないんだよ?って思ってしまった。
 もう一つがクロップが前半終了直後にダッシュしてたこと。もうプロの世界だとハーフタイム15分は短いだと感じました。同時にきっとロッカールームにはすでに前半の状況をまとめたチームスタッフが待機してて、クロップが話聞いて後半の方針を決断してると思うと、いちいちハーフタイムコメントに監督の時間を割くJリーグとのスピード感の違いに唖然としますね。

いつもありがとうございます。サポート頂いた資金は書籍代に充て、購入した書籍は書評で紹介させていただきます。