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【メギド72】「東方編」は「桃太郎」であり『西遊記』でもある【考察】

本noteは、メギド72「東方編」をミルトンの『失楽園』との類似から読み解く考察を扱った前noteの続きとなります。

本noteでは、メギド72「東方編」が前回指摘したミルトンの『失楽園』だけではなく、「桃太郎」や『西遊記』といった物語も題材にしていることを指摘します。

前noteで扱わなかった理由は単純で、一度で扱うには情報量が多すぎると考えたからです。ただ、メギド72「東方編」全体をよりディープに考察するヒントになるだろうし、とても面白い内容なのでぜひ読んでもらえればと思います。

以降メギド72「東方編」全体のネタバレを含みます。ご了承ください。

「東方編」は「桃太郎」?

前noteの中で、メギド72「東方編」とミルトンの『失楽園』の構造的な類似と、その類似のもたらす効果について説明するために、既存の物語の構造を利用して物語を描く方法をお伝えしましたが、その説明の中で、私が題材として「桃太郎」を選んだのには1つ理由があります。

それはメギド72「東方編」全体が「桃太郎」と類似した構造を持っているからです。

えっ……?メギド72「東方編」全体が「桃太郎」……?

カガセオ(ツルギ)

確かにツルギくんの見た目や、

アジトTVより引用

カガセオ(ツルギ)と同時ピックアップされたSSRオーブの「獣士キビタロ」は従士と獣士がかかってるし、犬と猿と雉を足した見た目だし、悪魔特効は鬼退治に由来するんだろうし、名前もきび団子と桃太郎を合わせたものだけど……、メギド72「東方編」全体が……?

実は、こうした細々とした要素的な部分ではなく、物語全体の構造にこそ、「桃太郎」とメギド72「東方編」の類似はあるのですが、その事を直接的に説明するより、『西遊記』とメギド72「東方編」が類似している事を指摘した方がわかりやすいと思うので、そちらから先にやっていきたいと思います。

『西遊記』と「東方編」

「桃太郎」とメギド72「東方編」の構造的な類似を指摘するために、まずは、メギド72「東方編」に登場する人物たちの名前の元ネタからみていきたいと思います。

・ニョイ「フレッシュ
 →ニョイ+Fresh(フレッシュ)/新鮮(しんせん
 =如意真仙(にょいしんせん)

・ゴルドホンとシルバホン
 →Gold horn(ゴールドホーン)とSilver horn(シルバーホーン)
 =金角大王/銀角大王

タイガーセンポ
 →/Tiger+せんぽ
 =虎先鋒(こせんぽう)

如意真仙、金角大王、銀角大王、虎先鋒と、マニアックな(?)名前が並んでいますが、彼らの名前は『西遊記』から取られています

また、モレクは直接的には『西遊記』に由来しませんが、旧約聖書「列王記上」で

「そしてソロモンはモアブの神である憎むべき者ケモシのために、またアンモンの人々の神である憎むべき者モレクのためにエルサレムの東の山に高き所を築いた。」

列王紀上 11章7節より引用

とあるように聖書でのソロモン王に関連する存在で、その姿は牛の像であったとされています。

この牛の像に対して、子供を含む様々な貢物を捧げて燃やしていた……と伝えられています。

生け贄を捧げる為のモレク像

仮に「東方編」が『西遊記』を元ネタとしているならば、モレクは牛からの連想で「牛魔王」がデザインの元にあると考えられます

えっ……、中身がバナルマ(子供)なのって……

そもそも『西遊記』とは、三蔵法師が、孫悟空、猪八戒、沙悟浄といった面々をお供に引き連れて、中国から天竺(インド)へ向かい、その道中に妖怪などに由来する様々な苦難を乗り越えて、仏教の経典を持って帰る物語です。

一方でメギド72「東方編」は、ソロモンやツルギくんが、様々な面々を仲間として一緒に行動して、様々な苦難を乗り越えて、ヴァイガルドからメギドラルへ向かい、そして戻ってくる物語です。

大きくみた場合、どちらの物語も「仲間を連れて」「旅から戻ってくる」物語と言えなくないはずです。

(完全に余談ですが、メギド72のア・バオア・クーが「ネメアー」モデルなのは、『西遊記』内で「牛魔王」が乗る獣である避水金晶獣(タテガミが獅子)が元ネタだからだと思われます。
また、モレクタワーは実験棟であると同時に、ア・バオア・クーの物語の中で重要になる勝利の塔に由来するはずです。解除コードがNIRVANA(涅槃)であった事も、『西遊記』との類似、と言えるかもしれません)

逆になんでお前はネメアー(の獅子)なの?!

「桃太郎」と『西遊記』そして『失楽園』

仮に、メギド72「東方編」が『西遊記』と似ている物語だった場合、「桃太郎」と『西遊記』が似ている物語であれば、メギド72「東方編」と「桃太郎」は似ている、と言えるはずです。

ですので、ここでは「桃太郎」と『西遊記』について、物語の構造の類似について考えたいと思います。

まず「桃太郎」は「川から流れてきた」桃によってもたらされた子供が、「三匹の仲間」と「舟に乗って」鬼ヶ島「へ向かい」、「鬼退治」を経て、宝物を「持ち帰る」物語です。

一方で『西遊記』は「川から流れてきた子供」(三蔵法師)が、「三人の仲間」と「妖怪退治」をしながら、「舟に乗って」天竺「へ向かい」、経典を「持ち帰る」物語です。

このように、出自と「川から流れてくる」ことが関連していたり、仲間(お供)の数が「3」であること、目的地へ向かう最後の手段が「舟」であること、「妖怪(鬼)を退治」すること、大切なモノを「持ち帰る」物語であることなど、物語の構造に関して、両者には類似が見られます

ということで、メギド72「東方編」と『西遊記』に類似が見られ、また、『西遊記』と「桃太郎」に類似が見られることから、メギド72「東方編」と「桃太郎」は類似が見られる、と言えなくもないはずです。

また、今回はざっとだけ紹介しますが、「桃太郎」と『失楽園』、「西遊記」と『失楽園』(『復楽園』)に関しても、それぞれ共通点があると考えられます。

例えば「桃太郎」と『失楽園』(『復楽園』)は、

  • 「奇妙な出自」(マリアがキリストを「処女懐胎」したことと、桃太郎が「桃によって生まれる」こと)

  • 「3」という数字が重要な役割を果たす(「荒野の誘惑」での「3回の試み」と、家来となる「3匹」の動物)

  • 「男女が別々に作業をしていた時に登場する果実が重要な役割を果たす」(イブが一人になった際に悪魔に誘惑されたことと、おじいさんとおばあさんがそれぞれ山と川に分かれて仕事をすること)

  • 「鬼(悪魔)を倒す」

といった点で類似の構造を持っています。(この話題はポケモンSVと失楽園の類似を考えるnoteを参考にすると、分かりやすくなると思われます。)

また「西遊記」と『失楽園』は

  • 孫悟空や猪八戒たちは「天界で罪を犯し、追放されている」

  • 「閻魔帖から名前を消した(生命の書から名前が消える)」

  • 「罪が赦される方法を扱った」

といった点で類似を見つける事が可能です。

さらに「西遊記」は「大唐西域記」などを元にした創作であり、ミルトンの『失楽園』とメタ的な構造に共通点を持つと言えそうです。

(そもそもの普段の『メギド72』のストーリー自体が、出自に謎を抱えたソロモン王が、仲間と共にメギドラル=鬼ヶ島へ向かい、メギド=鬼退治する物語と考えるも可能です)

感想

ということで、今回は雑多な情報をnoteにまとめてみました。

結果、どういうこと?!って言われると難しいのですが……。

メギド72「東方編」全体は、

  • 「これまでのメギド72のテキスト」

  • ミルトンの『失楽園』(『復楽園』)

  • 「桃太郎」

  • 『西遊記』

の全てを上手く利用して描かれている……のだと僕は考えています。

前回は『失楽園』に絞ったため、その役割についての考察をのせましたが、今回は複雑な関係にあり、それぞれが相互に作用していると思われるので、あくまで紹介に留めました。

一応、「桃太郎」や『西遊記』はオリエンタルな作品なので、『メギド72』の世界にはあまりない、オリエンタルな雰囲気を持ち込むのに役立っている……くらいのことは言えるかもしれませんが、より深く踏むことで、面白い発見が出来る……ような気がするのですが、今回は僕の考えについては扱わずに終わりたいと思っています。

「ニョイフレッシュが如意真仙で、モレクが牛魔王」……くらいの話は、かなり多くの場所でみましたが、そこから一歩進めて『西遊記』と「桃太郎」まで踏み込んだものは見なかったので、一応は書いた意味があるのかな……?と思ったのですが、楽しんでいただけたでしょうか?

今後も、様々な作品について動画・noteを公開していきたいと考えているので、興味をもっていただけた場合、Xアカウントやnoteのアカウントをフォローして僕の活動を追いかけてもらえたら嬉しいです!!!

それではまた、別のところでお会いしましょう
コンゴトモヨロシク……

参考文献

メギド72
 「東方編のテキストとして参考にしました。

ミルトン『失楽園』
 日本語訳されたテキストとして平井正穂訳(岩波文庫)を参考にしました。
 また、英語テキストとしてダートマス大学「ミルトン読書室」を参考にしました。
 book1訳注の「モレク」の項目についても参考にしています。

昔話「桃太郎」(日本昔ばなし アニメ絵本5)
 桃太郎のお話について参考にしました。

『西遊記』岩波文庫
 西遊記の物語ついて参考にしました。

・口語訳聖書
 日本語の聖書として1955年訳口語訳聖書を参考にしました。
 今回は列王記上やレビ記にある「モレク」に関する記述を参考にしています。

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