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著作解説④TRICKYS 4巻/初版©スクウェア・エニックス/復刻版©小学館

さてさて本日はデビュー作TRICKYSの最終巻4巻です。作品紹介と解説を綴っていきます。

TRICKYS④

【出版社】
初版2003年/スクウェア・エニックス「ガンガンWING」連載
復刻版2010年/小学館(ジュディーコミックス)
【著者】
新井さち
【あらすじ】
「もう“殺し”はしない…」暗殺のエキスパートでありながら、現在は何でも屋「トリッキーズ」で活躍する一成(かずなり)・竜三(りゅうぞう)・零美(レミ)。その壮絶な過去がついに語られる…? 罪を背負いながら普通の生活を始めようとする3人と、特殊暗殺組織「TRUMP(トランプ)」の最後の戦いが始まる! 描きおろしエピソードも収録した、ドラスティック・クールアクション完結編。

TRICKYS④表紙イラスト。それぞれの巻にテーマカラーがあり、①青・②黄・③赤・④白となりました。

物語のラストに向かって展開していく一冊です。初めての漫画家としての作品、最終回に向かって作品を作っていく中、今もそうですが、どんな作品も(特に連載ものは)描き終えてしまうのが寂しい気持ちになりますね。

Lead. 16 レッド・ティアーズ


一成の兄、TRUMPでジョーカーを担う零也との確執

一成20歳の誕生日に竜三、零美、卯月の四人で桜を見に外出。組織の掟で卯月がこの日限りでTRUMPから除名(処刑)されることが決まっていた。その執行人が一成の実の兄、ジョーカー(零也)だった。
過去編最終話。主人公三人が組織を足抜けすることを決める事件が起こります。漫画を描くとき、私は感情移入して筆を執ってしまう方なのでこの回は哀しかったですね。

Lead. 17 スノー・ホワイト

強いおなごが好きです

現代の話に戻ります。いよいよ上納金完済日が近付きます。そんなさなかTRUMPではジョーカーに一成、竜三、零美へ処刑命令が下ります。上納金を収めさせるだけ納めさせ、組織情報が漏洩しないように結局「死」しかないと。ジョーカーは主のディーラーを裏切り謀反を起こし、TRUMPを壊滅させ、裕二と一成たちのアジトへ向かう。
前過去編三話が比較的シリアスだったので、明るい話にしながらも物語はいよいよ佳境へ向かいます。
読み返していて、そういえばジョーカーの年齢っていくつくらいに設定してたんだっけ??と。髭、青年~中年キャラは非常に描きやすかったなと。

Lead. 18 アベンジ

一成VS裕二、再び

アジトで二人とデッドマンを待っていた零美がジョーカーに襲撃され、ジョーカーの仕業だという事に気づいた竜三はTRUMPへ、一成は病院で零美の付き添いに。一成の元へはジョーカーと謀反を起こした裕二が襲撃にやってきた。謀反を起こしたと見せかけ裕二もジョーカーへ姉を殺されてしまった復讐を目論んでいた。
そういや裕二のスーツのピンストライプはトーンではなく手描きだったので大変だったなぁと。アシスタント時代に縞模様の着物をたくさん描いたことが役立ったなという事を思い出しました。
ここでも一成は自暴自棄になっている裕二にあきらめずにやり直せと言ってますね。私の諦めの悪いマインドは良くも悪くもこの頃から変わらないんだな、自分の軸になってるんだなとも感じました。

Lead. 19 ロスト・マインド

兄弟対決

謀反を起こしたジョーカーは、ディーラーに代わって新しく組織を作ろうと三人に持ち掛けますが、「もう殺しはしない」三人から拒絶されます。一成は兄の暴走を止めようとしますが…。
色々思うところありますが、この頃描いていた作品を今振り返り、改めて深掘りできそうなテーマだなと感じました。それぞれの「正義」「価値観」「環境」「周りにいる人間」によって大きく人生が変わるんだなと。
とても小さく些細な分かれ道だったものが、進んでいくにつれどんどん乖離していくものなんだなと。
あの時あの選択をしていたら、というタイムパラドックスを扱った作品って割と好きなのですが、今後そんな話を創ってみるのもいいかなと思いました。

Lead. 20 クロース・トゥー・ユー

兄弟対決後、重傷を負った一成が目を覚まし記憶喪失となる

兄との対決のあと、重傷を負った一成は一年間目を覚まさなかった。竜三と零美が見守る中、やっと目を覚ますが二人の事、TRUMPの事をすっかり忘れてしまっていた。一成は暗殺組織にいたことを思い出せず、その事実に向き合えず二人と仲たがいしてしまうが…。
いよいよ最終回です。全20話だから、1年と8カ月、連載準備期間を含めると約2年間描き続けてきた連載も一区切り。担当さんの計らいで、最後3ページをカラーにしていただくという演出をさせていただきました。
最後結末はどうなったか、気になられた方はぜひお手に取っていただけましたら嬉しいです。

印象的だったセリフがあって、零美の
「とてもつらくて悲しい思い出は、忘れたほうがいいと思いますか?」
という部分。
これは、忘れていった方が良い事もたくさんあると思います。だけど、完全に頭の中から消去することはできないと思うんですよね。あまりにショックな事って防衛本能で記憶から薄れていくこともありますし、逆もあると思います。どう折り合いをつけて心に納めていくか、が大事だと思いますし、その経験が人を強くも優しくもするんだと、今の自分はそう感じました。

TRICKYS④まとめ

TRICKYS最終巻までお付き合いくださりありがとうございました。
作品の解説をしながら振り返ることで、自分でもどんなことを描いていたのか忘れていることも多かったので、なんだか不思議な体験ができたような気分でした。
改めて、デビュー作で連載を持たせていただき、最終話まで走り抜けさせていただけた事、当時お世話になった方々へ感謝です。
作画やストーリー構成など未熟な部分はありますが、それでもものすごい情熱が感じられました。
デビュー作から感じたことは、やっぱり今も変わらず大切にしている「失敗や挫折を感じたときに、そこからどう立ち上がるか」という事かなと。漫画家としての原点、これからも大切にしていきたいと思います。

次回は、少年漫画からボーイズラブジャンルへ転向しての初コミック「おとなりにノラ猫」です。

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