73edit

島びとの叡智を聞き書きする編集人。語り部の記録「よっしゃ、やらんかい」発行。 瀬戸内海…

73edit

島びとの叡智を聞き書きする編集人。語り部の記録「よっしゃ、やらんかい」発行。 瀬戸内海の豊島(てしま)事件、産業廃棄物不法投棄現場の現代史ツアーを不定期開催 / jibun-fuku広報 / ときどき学童

マガジン

  • こんぴら百段

    金比羅さんへ続く参道の100段目に、風変わりな土産物屋がある。 香川県産品のみやげものを集めた店は「サヌキノ了見(りょうけん)」という。

  • 神子ケ浜だより

    豊島の神子ケ浜(みこがはま)に長老の住まいがあります。日本の原風景が残る、いつまでもこのままで残しておきたい秘境です。長老のことを書きます。

最近の記事

さっきゃんがきたら、ひきずりこまれるんよ

学童の外遊び。 公園のブランコで「さっきゃんがきたら、ひきずりこまれるんよ」という。 えー! でたか?? 空想の年代 まだ質問しないで、その子が言うままに聞いている。 そうなの? それで?と相槌を打ちながら。 そのうち、新たな名称も登場してきたので、とうとう堪えきれずに聞いてみた。 さっきゃん? 「おんなのこ、ないふもってる こども。 さっきゃんはね、きさこっていうの」 「めぎーさん あし、きられる まあ、人形やけ、ふつうの大きさ。 ほうちょう 持ってる」 さっきゃんやめ

    • 梱包紙をもしょもしょ、ぎゅー

      新1年生がやってきた、学童。学校で緊張して、学童もまだ居心地が悪そう。 その子の近くで、わたしは手を動かしていました。 荷物に入っていた紙の梱包材、お描きするかもととっておいたけれど、なかなか減りません。 メモ用紙にでもしようかなと裁断し始めて、ふとくしゃくしゃにしてみたら、その子がよってきました。 どんな音がする? 紙を振ったり、弾いたり、くしゃくしゃにしながら音遊び。 そのうち、内緒話がそっと始まりました。 「あのなあ、きょうびっくりした。ニワトリが上にきた」 何色?

      • 大工さんが彫って差し出した民間仏

        みちのく いとしい仏たち@東京ステーションギャラリーを見てきました。 7 大工 右衛門四良(えもんしろう) 大工の右衛門四良が、荒削りにどんどん彫る。 完成したら奉納する、または個人の家に差し出した、と解説に書いてあったような。 仏師でも僧侶でもない大工が彫ったというのが、今回の展示で章立てになっている見どころです。 ご供養のために彫る 差し出す 「右衛門四良」は18世紀中期から後期にかけて活躍し1779年頃に没したと言われています。 そのころの東北(みちのく)は、気

        • 詩人のスケッチ

          さいたま市・別所沼公園内に建つ「ヒヤシンスハウス」を取り上げた、新美の巨人たち 2024-1-27 詩人のスケッチとモダニズム建築を、同線上に並列し、同義であるかのように取り上げる内容に疑問が沸きました。 ヒヤシンスハウスの紹介の次に取り上げられたカップマルタンの休暇小屋。 類似点を挙げれば極小ハウスではあるけれど、モダニズム建築と同義であるか、そこが気になるところです。 建築年代を見てみると、ル・コルビュジェの名声から、彼が先行したかのような印象を与えますが、設計・建設

        さっきゃんがきたら、ひきずりこまれるんよ

        マガジン

        • こんぴら百段
          8本
        • 神子ケ浜だより
          9本

        記事

          文字起こし モネの庭

          オランジュリー美術館で自然光が差し込む絵画を見て以来、モネの作品を追いかけています。 クリス智子さんのJ-WAVE「GOOD NEIGHBORS」、2023-10-4のゲストは北川村モネの庭の庭園管理責任者・川上裕さん。 おしゃべりの内容を文字起こししながら、だんだんある人と重なってきました。彫刻家の外尾悦郎さん。ガウディの意思を読み解きながら、サグラダ・ファミリアを作っている日本人です。外尾さんと川上さんの対談を聞いてみたくなります。 再現とはコピーではなく、思想を汲み

          文字起こし モネの庭

          豊島をめぐる4つのストーリー

          ガイドブックにはない豊島の記事。季刊誌「星のことば月のこども」に寄稿した4つのストーリーが、豊島で実を結びました。 島のおかあさん「さっちゃん」から始まる豊島の紹介記事は2022年の冬号が1回目。 豊島の郷土料理や創作菓子をふるまう島のおかあさん「さっちゃん」。 お父さんと二人暮らしなのに、食べたくなって作るさくら寿しは2升。たくさんできたご飯は弁当パックに詰めて、その日訪ねてきた人や知り合いにどんどんお裾分けしていきます。「食べ助けしてな」と言いながら。 2010年の

          豊島をめぐる4つのストーリー

          鑑賞者の視点が広がれば外縁は多層になるでしょう

          日曜美術館アートシーンで放送された「中園孔二 ソウルメイト」@猪熊弦一郎現代美術館。 ソウルメイトというタイトルは、中園の言葉を意訳しているのではないか。直筆の言葉があるなら、それを展示しているはず。 個人のレポートが「ソウルメイトという言葉をノートに書き残していた」 と認識するのは今後も増えていくでしょう。 展覧会の公式カタログ、評伝がともに発刊されて、脚色と加工がお墨付きにならないことを願います。 出典が繰り返し引用されていく中で正誤は曖昧になり、通説になっていくこと

          鑑賞者の視点が広がれば外縁は多層になるでしょう

          カタマランで男木島へ

          夏休みの学童は、お出かけヨットの日。 カタマランで男木島へ行きました。 「このヨット、なんていうの?」というお子様の素朴な質問に、キャプテンは「風向だよ」と答えます。カタマランには名前がありました、長年お世話になっているのに、ラストランの今季は特別な思いです。 お子様たちは「ねえねえ、来年はヨットがないの?」と聞いてきます。 そうなの、残念ね。 「じゃあ、次を企画しようよ」 「ヨットの次は鉄道! ことでんでこんぴらへいくの」 プラレールを150車体以上コレクションしているお

          カタマランで男木島へ

          讃岐民芸館

          特別名勝 栗林公園(香川県高松市)の中にある讃岐民芸館。コンパクトな空間に、質の良い展示です。 アート県・香川の足跡を見守り続ける空間 本文より「商工奨励館の隣には「讃岐民芸館」が設けられ」1965年創立 ↓ 2021/12/7 四国新聞 讃岐民芸館がリニューアル memo ◎讃岐民芸館 初代館長 和田邦坊 ↓ 香川大学博物館 特別展 「KUNIBO HISTORY―マルチクリエーター・和田邦坊の原点―」 令和5年1月19日(木)~ 3月18日(土)  https://

          讃岐民芸館

          夭逝を言わずに回顧展は成立しないだろうか

          プロフィールから検索をかけて、最後の衝撃的な一文が鑑賞へと後押ししたのは間違いない。猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA/香川県丸亀市)で開催中の「中園孔ニ展」。 大胆に画面を分割して、スピーディーに仕上げていく。 色を重ねて重ねて奥行きを出す、初期の猪熊弦一郎とは対照的に、筆の勢い、色のかすれが印象的な中園作品。 色を混ぜることなく、ホワイトもしくは地の色で区切りながら、多彩な画面分割を試みています。 にぎやか、鮮やかとは違う、静寂がありました。 それは作家が、この世にいな

          夭逝を言わずに回顧展は成立しないだろうか

          描きかけの途中で次々と新しい面へ

          1日を色へ没入して描いた5枚。 キャンパスボート4枚とA4用紙1枚、どれもが描きかけの途中で手を止めて新しい画材へ、異なる技法で色をのせていきました。 久しぶりのアートワークは、長く一緒に学ぶメンバーと一緒です。だから、合作も可能です。 円形に座り、目を閉じて手を伸ばし、指でアクリル絵の具を扱いながら、誰かの手に当たるギョッとする瞬間。アクリルが冷たくてぬるっとしていることを知り、指先の感覚に頼る1枚。 左手だけの1枚、指先の絵の具をプリンティングした1枚。その1枚にもっ

          描きかけの途中で次々と新しい面へ

          生誕100年 柚木沙弥郎展

          日本民藝館の「生誕100年 柚木沙弥郎展」は、1階の染物が圧巻でした。 パターンなのにどこまでも続く連続性があり、色の重なりがスタンプを途切れて見せることがありません。一つずつの模様は単純に見えても、大きさや向き、カタチの組み合わせで奥行きのあるデザインです。 単純から立ち上がる空間性に、圧倒されました。 3月末は、花冷えと初夏を思わせる陽気の間でした。受付は現金とそれ以外を人が対応していて、靴カバーのビニールを受け取って入ります。そのため、入り口の混雑から来館者が多くみえ

          生誕100年 柚木沙弥郎展

          静かに時限立法の期限を迎えた、豊島

          豊島(てしま/瀬戸内海)の産廃特措法が、2023年3月31日で期限を迎えました。 豊島事件と呼ばれる有害産業廃棄物不法投棄事件の処理に関する国の支援です。 https://www.env.go.jp/content/000047850.pdf 困難な処理事業は期限を延長しながら続けられ、処理費用の一部を国が負担してきた事業が期限を迎えたのです。 産廃特措法(特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法)について 改正→有効期限(平成25年3月31日)を平成35年

          静かに時限立法の期限を迎えた、豊島

          憤りが原動力、高齢者が入居できる施設

          金曜日のj-wave、ジョン・カビラさんが紹介したのは気仙沼まちなかプラットフォームのリーダー、堀内真介さん。 ご本人のトークに聞き逃せない言葉ありました。経営者として会社を立ち上げた理由です。 淡々と語る口調に、どれほどの思いを込めて今に至ったのか。想像するのは難しく、奥歯を噛み締めています。 タイムフリーでテキスト起こしをしたら、ちゃんと番組サイトにテキストがありました。 tunami https://www.youtube.com/watch?v=0E2Q7kr4L

          憤りが原動力、高齢者が入居できる施設

          現代アートを離島に展示する、都市に展示する

          直島の現代アートを、瀬戸内国際芸術祭と同義に扱ってはいけないなあと思うようになりました。常々、瀬戸内国際芸術祭は島を消費していると思っていることに変わりはありませんが、喜びや生きがいという側面からは島のお年寄りに、活力的な変化を確実にもたらしています。 豊島のおかあさんが道ゆく人に声をかけたり、尋ねてくる人をもてなしたり、数々のインタビューにも答え、豊島への思いを笑顔で表しています。単純に「島に活気が出た」という喜びが伝わってきます。 でも、それは総意ではありません。瀬戸

          現代アートを離島に展示する、都市に展示する

          第69回日本伝統工芸展(令和4年)

          日本伝統工芸展は、公民館の作品展のような展示で相当数ありました。クラシックな技法でデザインに凝った作品が目に付く中、きわみを尽くした作品がありました。 目線を下げると、緩やかな傾斜をつけた脚。一見するとセオリー通りなのに、際立つ木目の美しさ。 風を纏ったような木彫。タイトルは「プリズム」 憧れのアヤミさんに似ている、スタイリッシュな作品。 第69回日本伝統工芸展 (令和4年)

          第69回日本伝統工芸展(令和4年)