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透明の何者かがアパートに入ってきた話

強盗より怖くない"謎な存在"が家に入ってきたことがあった。

こう書くと、怖いのか怖くないのかわからないが、今回は、その時のエピソードを語る。


9年前くらい前、私は実家のすぐ近くの2Kの安アパートに住んでいた。

夜8時頃であった。

私が自室で母と電話をしている最中、何者かが、玄関からキッチンに侵入してきたことに気がついた。
律儀に玄関から入ってきたモノは、不思議なことに、存在感はありありと在るのに、そこには何も見えなかった。

透明なのだ。

しかし、圧倒的な存在感だけが、リアルにキッチンに居る。

まるで1人の人間がそこにいるかのような感じなので、私は「もしかして、もしかすると、光学迷彩を使ったスパイか?」と思った。

光学迷彩とは『攻殻機動隊』の熱光学迷彩や『メタルギアソリッド』のステルス迷彩でお馴染みの「物体を周りから見えないようにする技術」である。

実用化されているという話もあるし、買えるらしいので、巻末にリンクを貼った。

攻殻機動隊大好きな私は、この目に見えない透明存在は
①光学迷彩をまとったスパイ
②超強い霊的存在

どちらだろうか?と、真剣に考えた。
玄関のドアを開ける音は全くしないし、呼吸や衣類の擦れる音など物理的な音は全くしていない。

①光学迷彩スパイ と ②ハンパない霊的存在
どちらが怖いかというと、圧倒的に①だ。
生身の人間の方が、物理的に殺傷能力が高いからだ。

そういう思考なので、例えば、リングの貞子がテレビから出てきても、部屋の中で巨大なゴキブリがひょっこり出てきた時よりは慌てないかもしれない。
「なんか出てきたーーーっ!とりあえず、部屋出て、ドア閉めて逃げよう!三十六計逃げるに如かずじゃっ!」と判断し、実家に1週間くらい泊まって、再び自宅に戻った時に、いなければヨシ!

せっかく全力でテレビから出てきたのに、ただただ放置されてしまった無念の想いが残存しているかもしれないので、念の為、ホワイトセージを焚いて、伊勢土産の「おいせさん 浄め塩スプレー」を撒いて、それで終わりだろう。テレビは捨てるかもしれないが。

もし、まだ居たとしても、1週間もひたすら待っていたことに驚くかもしれない。「え?ずっと待ってたの?・・・待たせて、ごめん」と、対話してみようという気持ちになるかもしれない。

だが、ゴキブリの方はどうだ。
1週間後に帰ってきたら、増えている可能性が高い。
歩き回って、隅々まで汚されてしまっているだろう。
容赦ない。
格闘も命懸けだし、部屋は殺虫剤まみれ、消毒しまくりでヘトヘトだ。

やはり、物理的な存在の方が厄介だ。


さて、光学迷彩の話に戻ろう。

「スパイだとしても、貧乏フリーターなんて殺して、どうする気なんだよ」
様々な可能性を考慮した結果、②の方が正解だろうという結論に至った。


最強レベルの霊だと判断した私は、この間も母と電話していたが「ごめん、ヤバいやつが家にいてさ。やっつけるから、ちょっと待ってて」と電話をおいた。電話を切ってしまうと、繋がらなくなりそうな気がしたので切れない。
通話し放題コースバンザイ。


両手があいた私は、小学生の時に流行った"九字護身法"で、キッチンと部屋の境界に向かって、指で格子を描きながら

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」
と唱え、更に大日如来真言「オン・アビラウンケン」を唱えた後、レイキという宇宙の氣の最強シンボルを重ね、結界を張った。

そして「もう大丈夫!ヤバいやつが、部屋に入って来れないようにした」と、母との通話を再開して、少し待った。


3分くらいで、キッチンのそいつはフッと消えた。

九字は『孔雀王』かなんかで流行っていたので、よく真似してたな〜と言うと、年齢がわかってしまいそうだが、小学生の時に覚えたスキルが、こんな時に役に立つなんて。
しかもこの頃の私は修行もしていなかったのに、ちゃんと効いたのだ。すごーい。

再び電話で「おお、やった!ヤバいやつ、やっつけたあ!消えたー!」と母に報告した。

母は、リビングのヤバいやつが何なのかわからないまま「大丈夫?まあ、それなら、よかったね」と安心した。
まさか、こんなホラーな出来事が私の家で起きていたとは、思いもしなかったろう。

それにしても、存在感だけでMAX怖くて、結局何もしないで消えちゃうって、なんだったんだろうか?

怪事件はそれっきり起らなかったが、そのアパートは私が引っ越しした数年後、それほど古くないのに取り壊されてしまった。
駅からさほど遠くなく、入居者は絶えなかったのに。

まさか、あの透明なやつのせいでは・・・?



※楽しい読みもの


※光学迷彩は買えるらしい。
でも、これを盾にしても、不法侵入は出来ないから気をつけて。
https://www.gizmodo.jp/2022/03/real-working-invisibility-shield.html

不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。