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ジャン=ポールディディエローラン著『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』



2017年に発行されたフランスの小説。

パリ郊外の断裁工場で働く青年ギレン。身近な誰かの人生を覗き見ているように日常の中の非日常を描いている。
そして、ささやかなドラマに喜びを感じ、悲しみを分かち合い、共に感情の軌跡を辿ってゆく。

個人的な日常を描いた静かでシュールな映画をみているような小説だと思った。読み進めて行くに従って、薄緑のフィルターがかかった映像すら目に浮かぶようになってしまった。

平穏な人生を送っていても、分岐点になるようなドラマは必ず訪れる。
壮大なスケールのドラマを語られても衝撃を受けて感動することはあっても、共感して親しみを覚える事はまずないだろう。
フランスと日本では多少違う部分はあるものの、容易に想像できるあり得そうな日常が描かれている。
その手を伸ばせば見えそうな世界だからこそ興味深い。まるで知ってる誰かの話を聞いてるような感覚にすらなってしまう。

ヨーロッパのマイナーな映画が好きな方にお勧めの小説。誰か日常に寄り添って、穏やかで爽やかな気持ちになれる作品。

『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む 』(ハーパーBOOKS 111) ジャン=ポール・ディディエローラン 

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